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まさかの告白を受けた後、ウィルと別れて自室へと戻った私は、寝支度を整えてサッサとベッドに潜り込んだ。
しかし、静まり返った寝室で瞼を閉じれば、先程の彼の甘やかな言葉の数々や、幸せそうな微笑みを、鮮明に思い出してしまう。
───ゔ~っっ……ダメだっ! 全然眠れないっっ!!
そうして夜更かしするハメになった私は、翌朝少しだけ寝坊してしまった。
寝不足の目を擦りながら向かったダイニングルームでは、既にウィルが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいて、私が姿を見せると蕩ける様な笑みを浮かべた。
「おはよう、フェリシア」
「おはようございます、コー…、じゃなくて、…ウィル」
まだ慣れない愛称呼びは、どうしても少し照れてしまう。
「惜しいな」
「?」
「……敬語」
「そうだった。おはよう、ウィル」
言い直した私に、彼はとても満足そうに頷く。
「……」
壁際に控えていたロバートの口元が、笑いを堪えているかの様にグニャリと歪んだ。
それを視界の端に捉えたウィルが、微かに顔を顰める。
「……ロバート、うるさい」
「まだ何も申し上げておりませんよ。幻聴ですか?旦那様」
「顔がうるさい」
ウィルは苦々しい表情だが、不思議と少し嬉しそうにも見える。
「フッ……良かったですね、旦那様。
フェリシア様に愛称で呼んで頂けて」
ロバートは軽く吹き出しながら、ウィルに祝福の言葉を掛けた。
「うふふっ。甘酸っぱいですわねぇ」
「青春時代を思い出します」
「旦那様はもう三十路ではないですか。
とっくにオッサンですわ。
『青春』と言うには、だいぶ遅過ぎます」
「それもそうでしたね」
「「ふふふふ……」」
取り繕うのを諦めたロバートは、ミアと二人でニヤニヤと笑いながらウィルを揶揄い始めた。
二人とも、強面のウィルに鋭く睨まれても全く動じず涼しい顔で、どこ吹く風といった雰囲気だ。
「あぁ、もう、二人とも本っっ当にうるさい!!」
その日はウィルにギュッと手を繋がれて、職場である救護室へと出勤した。
密着する手の平から彼の体温が伝わって来て、胸がドキドキする。
手汗、大丈夫だろうか?
「終業時間には、また迎えに来るから」
「ええ、ウィル。また後で」
そう言って別れた私達を、マリリンさんが口をあんぐりと開けた驚愕の表情で見ていた。
「嘘っっ!いつから?」
マリリンさんがミアの肩をガシッと掴んで問いただす。
「昨夜からです」
「あ゛~、マジか~~っっ!!」
話が見えずに首を傾げる私に、ミアが説明してくれた。
どうやら、辺境伯邸の使用人や国境警備団の皆さんは、私がいつウィルを名前で呼ぶようになるか賭けをしていたらしいのだ。
「あーあ、負けちゃったぁ。
ウィルフレッド様は意外とヘタレだから、絶対に結婚式より後になると思ったんだけどなぁ……。
しかも、いきなり愛称呼びだよっ?信じられない!!」
残念そうに呟きながらも、マリリンさんはニコニコと笑っている。
「ええ、私も負けましたわ。
旦那様、ヘタレの割には頑張りましたね」
ミアも賭けてたのっ!?
しかも、皆さんウィルの事をヘタレだと思っているらしい。
主への敬意は何処行った?
まあ、ここの人達は初めからこんな感じだったけどね。
「でも、本当に良かったわよね。
領主夫妻が幸せそうだと、私達もひと安心だわ。
皆んな半分は本気で二人の仲を心配して、ヤキモキしながら見守っていたのよ。
まあ、もう半分は、単純に面白がっていただけなんだけどね~」
マリリンさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて、パチリとウインクをした。
しかし、静まり返った寝室で瞼を閉じれば、先程の彼の甘やかな言葉の数々や、幸せそうな微笑みを、鮮明に思い出してしまう。
───ゔ~っっ……ダメだっ! 全然眠れないっっ!!
そうして夜更かしするハメになった私は、翌朝少しだけ寝坊してしまった。
寝不足の目を擦りながら向かったダイニングルームでは、既にウィルが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいて、私が姿を見せると蕩ける様な笑みを浮かべた。
「おはよう、フェリシア」
「おはようございます、コー…、じゃなくて、…ウィル」
まだ慣れない愛称呼びは、どうしても少し照れてしまう。
「惜しいな」
「?」
「……敬語」
「そうだった。おはよう、ウィル」
言い直した私に、彼はとても満足そうに頷く。
「……」
壁際に控えていたロバートの口元が、笑いを堪えているかの様にグニャリと歪んだ。
それを視界の端に捉えたウィルが、微かに顔を顰める。
「……ロバート、うるさい」
「まだ何も申し上げておりませんよ。幻聴ですか?旦那様」
「顔がうるさい」
ウィルは苦々しい表情だが、不思議と少し嬉しそうにも見える。
「フッ……良かったですね、旦那様。
フェリシア様に愛称で呼んで頂けて」
ロバートは軽く吹き出しながら、ウィルに祝福の言葉を掛けた。
「うふふっ。甘酸っぱいですわねぇ」
「青春時代を思い出します」
「旦那様はもう三十路ではないですか。
とっくにオッサンですわ。
『青春』と言うには、だいぶ遅過ぎます」
「それもそうでしたね」
「「ふふふふ……」」
取り繕うのを諦めたロバートは、ミアと二人でニヤニヤと笑いながらウィルを揶揄い始めた。
二人とも、強面のウィルに鋭く睨まれても全く動じず涼しい顔で、どこ吹く風といった雰囲気だ。
「あぁ、もう、二人とも本っっ当にうるさい!!」
その日はウィルにギュッと手を繋がれて、職場である救護室へと出勤した。
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手汗、大丈夫だろうか?
「終業時間には、また迎えに来るから」
「ええ、ウィル。また後で」
そう言って別れた私達を、マリリンさんが口をあんぐりと開けた驚愕の表情で見ていた。
「嘘っっ!いつから?」
マリリンさんがミアの肩をガシッと掴んで問いただす。
「昨夜からです」
「あ゛~、マジか~~っっ!!」
話が見えずに首を傾げる私に、ミアが説明してくれた。
どうやら、辺境伯邸の使用人や国境警備団の皆さんは、私がいつウィルを名前で呼ぶようになるか賭けをしていたらしいのだ。
「あーあ、負けちゃったぁ。
ウィルフレッド様は意外とヘタレだから、絶対に結婚式より後になると思ったんだけどなぁ……。
しかも、いきなり愛称呼びだよっ?信じられない!!」
残念そうに呟きながらも、マリリンさんはニコニコと笑っている。
「ええ、私も負けましたわ。
旦那様、ヘタレの割には頑張りましたね」
ミアも賭けてたのっ!?
しかも、皆さんウィルの事をヘタレだと思っているらしい。
主への敬意は何処行った?
まあ、ここの人達は初めからこんな感じだったけどね。
「でも、本当に良かったわよね。
領主夫妻が幸せそうだと、私達もひと安心だわ。
皆んな半分は本気で二人の仲を心配して、ヤキモキしながら見守っていたのよ。
まあ、もう半分は、単純に面白がっていただけなんだけどね~」
マリリンさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて、パチリとウインクをした。
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