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53 帰還
色々あった新婚旅行から帰宅した私達を待っていたのは、疲弊した様子のロバートやマリリンさん達だった。
やはりひと月以上の超長期休暇は、少々無理があったみたいで……、なんだかとても申し訳ない。
「今後の為にも、誰かが長期休暇を取っても他の人間が簡単にサポート出来る様な体制を、早急に整えるぞ!」
と、何故か意気込んでいるウィル。
「そんなシステムは簡単には出来ないと思うのだけど……」
「多分フェリシア様とまた旅行に行きたいと思っていらっしゃるのですよ。
そして、旦那様は有言実行の人なので、近い将来そのシステムはきっと確立されます。
まあ、休暇が取りやすくなるのは誰にとっても嬉しい事ですけどね」
私の疑問に、ミアが呆れた様に笑いながら答えた。
確かにウィルならば実現してしまいそうな気もするけれど、その為にただでさえ忙しい彼に余計な仕事が増えて、無理をするんじゃ無いかと思うと、少しだけ心配。
「最近痛みはどう?」
「ここ一、二ヶ月は、全く痛んでいない」
夜になって、ウィルに傷薬を塗りながら、治り具合を確認する。
見た目はかなり良くなって来て、今では薄っすらと白い跡が残っているだけだ。
傷を負ってから時間が経過し過ぎていた為、効果が出るか微妙だったけど、思った以上に効いたみたいで良かった。
「じゃあ、そろそろ薬は塗らなくて良いかもね」
「それは困る」
拗ねた様にそう言ったウィルに、お茶を準備してくれていたミアが苦笑する。
「旦那様とフェリシア様の結婚式はもうすぐなのですから、もう治療を口実にスキンシップを求めなくても良いのでは?」
「え?口実だったの?」
「余計な事をバラすなよ」
ウィルは少し頬を赤らめて、ミアを睨んだ。
いつもの様にハーブティーを飲みながら、少しの時間会話を楽しみ、自室に戻ろうとした私をウィルが呼び止める。
「おやすみ、フェリシア。愛してるよ」
そう囁いて、頬におやすみのキスをしてくれた。
温かなベッドに潜り込んだ私は、フワフワした気持ちのまま穏やかな眠りに落ちていった。
翌日からは私もウィルも、休暇中に山積みになった仕事を片付ける日々が続き、忙しく過ごしている内に、あっと言う間に季節が巡って……。
とうとう私達の結婚式まで一ヶ月を切った。
「ねぇ、ミア。髪の後ろ乱れてない?ドレスは本当にこれで大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、フェリシア様はいつも通りになさっていれば問題ありません。
さあ、少し落ち着きましょう?」
朝からソワソワしっぱなしの私の肩を、ミアが優しく掴んで、ソファーへ座る様に誘導する。
彼女が淹れてくれた紅茶を飲んで、落ち着きを取り戻そうと努力していると、ロバートが私を呼びに来た。
「ご到着なさいました」
慌てて玄関ホールへと向かい、ウィルの隣に並ぶ。
胸を抑えながらフゥッと大きく息を吐き出すと、ウィルが微かに笑った。
「そんなに緊張しなくても」
「しますよ!第一印象が大事なんだから」
玄関の扉が開いて入って来たご夫婦に、集まっていた使用人一同が深々と礼をする。
「「「お帰りなさいませ、大旦那様、大奥様」」」
私も淑女の礼を取ろうとスカートを摘み上げたのだが───、
腰を落とそうとした瞬間、夫人にガバッと抱きつかれてしまった。
「貴方がフェリシアちゃんねー!!会いたかったわー!
私の事はお義母様って呼んでね。
ウィルフレッドったら、一生結婚出来ないんじゃないかと心配してたけど、素敵な子を捕まえたじゃないのぉ!グッジョブよ!」
ウインクしながら笑顔で親指を立てるお義母様に、ウィルも真面目な顔で親指を立てて答えた。
テンションが高い。
ウィルのお母様とは思えないキャラクターだが、その美しい青の瞳だけは彼にとても似ている。
「初めまして、フェリシアと申します。よろしくお願致します」
「うむ…」
放して貰えないので仕方無く、お義母様に抱きつかれたままお二人に自己紹介をすると、前辺境伯様は厳めしいお顔で頷いた。
「大丈夫よー。あの人、怒ってるわけじゃないの。
ただ、フェリシアちゃんみたいな若くて可愛い子に慣れてないだけなのよ」
お義母様の言葉に、前辺境伯様は深く頷く。
「……義父と…呼んで欲しい」
低い声でボソッとそう言ったお義父様のお顔は、無表情のままだけれど、心なしか朱が差していて……。
顔合わせの時のウィルの表情を思い出して、『ああ親子だな』って思った。
───────────────────
ここまでウィル&フェリシアを見守って頂きまして、有難うございます!
いよいよ次回で本編が完結となります。
是非、最後までお付き合いください。
宜しくお願い致しますm(_ _)m
やはりひと月以上の超長期休暇は、少々無理があったみたいで……、なんだかとても申し訳ない。
「今後の為にも、誰かが長期休暇を取っても他の人間が簡単にサポート出来る様な体制を、早急に整えるぞ!」
と、何故か意気込んでいるウィル。
「そんなシステムは簡単には出来ないと思うのだけど……」
「多分フェリシア様とまた旅行に行きたいと思っていらっしゃるのですよ。
そして、旦那様は有言実行の人なので、近い将来そのシステムはきっと確立されます。
まあ、休暇が取りやすくなるのは誰にとっても嬉しい事ですけどね」
私の疑問に、ミアが呆れた様に笑いながら答えた。
確かにウィルならば実現してしまいそうな気もするけれど、その為にただでさえ忙しい彼に余計な仕事が増えて、無理をするんじゃ無いかと思うと、少しだけ心配。
「最近痛みはどう?」
「ここ一、二ヶ月は、全く痛んでいない」
夜になって、ウィルに傷薬を塗りながら、治り具合を確認する。
見た目はかなり良くなって来て、今では薄っすらと白い跡が残っているだけだ。
傷を負ってから時間が経過し過ぎていた為、効果が出るか微妙だったけど、思った以上に効いたみたいで良かった。
「じゃあ、そろそろ薬は塗らなくて良いかもね」
「それは困る」
拗ねた様にそう言ったウィルに、お茶を準備してくれていたミアが苦笑する。
「旦那様とフェリシア様の結婚式はもうすぐなのですから、もう治療を口実にスキンシップを求めなくても良いのでは?」
「え?口実だったの?」
「余計な事をバラすなよ」
ウィルは少し頬を赤らめて、ミアを睨んだ。
いつもの様にハーブティーを飲みながら、少しの時間会話を楽しみ、自室に戻ろうとした私をウィルが呼び止める。
「おやすみ、フェリシア。愛してるよ」
そう囁いて、頬におやすみのキスをしてくれた。
温かなベッドに潜り込んだ私は、フワフワした気持ちのまま穏やかな眠りに落ちていった。
翌日からは私もウィルも、休暇中に山積みになった仕事を片付ける日々が続き、忙しく過ごしている内に、あっと言う間に季節が巡って……。
とうとう私達の結婚式まで一ヶ月を切った。
「ねぇ、ミア。髪の後ろ乱れてない?ドレスは本当にこれで大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、フェリシア様はいつも通りになさっていれば問題ありません。
さあ、少し落ち着きましょう?」
朝からソワソワしっぱなしの私の肩を、ミアが優しく掴んで、ソファーへ座る様に誘導する。
彼女が淹れてくれた紅茶を飲んで、落ち着きを取り戻そうと努力していると、ロバートが私を呼びに来た。
「ご到着なさいました」
慌てて玄関ホールへと向かい、ウィルの隣に並ぶ。
胸を抑えながらフゥッと大きく息を吐き出すと、ウィルが微かに笑った。
「そんなに緊張しなくても」
「しますよ!第一印象が大事なんだから」
玄関の扉が開いて入って来たご夫婦に、集まっていた使用人一同が深々と礼をする。
「「「お帰りなさいませ、大旦那様、大奥様」」」
私も淑女の礼を取ろうとスカートを摘み上げたのだが───、
腰を落とそうとした瞬間、夫人にガバッと抱きつかれてしまった。
「貴方がフェリシアちゃんねー!!会いたかったわー!
私の事はお義母様って呼んでね。
ウィルフレッドったら、一生結婚出来ないんじゃないかと心配してたけど、素敵な子を捕まえたじゃないのぉ!グッジョブよ!」
ウインクしながら笑顔で親指を立てるお義母様に、ウィルも真面目な顔で親指を立てて答えた。
テンションが高い。
ウィルのお母様とは思えないキャラクターだが、その美しい青の瞳だけは彼にとても似ている。
「初めまして、フェリシアと申します。よろしくお願致します」
「うむ…」
放して貰えないので仕方無く、お義母様に抱きつかれたままお二人に自己紹介をすると、前辺境伯様は厳めしいお顔で頷いた。
「大丈夫よー。あの人、怒ってるわけじゃないの。
ただ、フェリシアちゃんみたいな若くて可愛い子に慣れてないだけなのよ」
お義母様の言葉に、前辺境伯様は深く頷く。
「……義父と…呼んで欲しい」
低い声でボソッとそう言ったお義父様のお顔は、無表情のままだけれど、心なしか朱が差していて……。
顔合わせの時のウィルの表情を思い出して、『ああ親子だな』って思った。
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ここまでウィル&フェリシアを見守って頂きまして、有難うございます!
いよいよ次回で本編が完結となります。
是非、最後までお付き合いください。
宜しくお願い致しますm(_ _)m
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