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番外編 とある国のお話・前
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※読者様のご要望から生まれたテイマー番外編です。
※前後編ですが、後編には精神的拷問の話が少々出てきます。苦手な方は自衛して下さい。(とは言え、多分コメディです)
とある大陸の西の端に位置する、風光明媚なとある国。
それがトアール王国である。(ふざけているように思うだろうが、正式名称だ)
国土の西側の街には真っ青な海が広がっており、荒波に削られた不思議な形の岩壁と、美味しい魚介類が有名。海側の主な産業は観光である。
一方、山側では、石油、石炭、魔石などの天然資源が豊富に産出され、その資源を欲した周辺国に狙われる事もしばしば。
だが、トアール国民達は武術を極めた民族であり、何度攻め込んでもあっという間に返り討ちにされるので、近年では『あの国を狙うのは愚かな行為だ』と周辺国も漸く気付いた。
そんな猛者達の頂点に立つ人物が、トアール国王である。
御歳六十二才。
還暦を過ぎても未だに現役。
「王子達の誰かが、実戦形式の手合わせで私を倒したら玉座を譲る」
そう宣言してから早三十年。当初の計画ではもうとっくに退位しているはずだったのだが……。
残念ながら、まだまだその兆候は見られない。
因みに王子達が弱い訳では無い。
国王が強過ぎるのだ。(ちょっとした化け物かもしれない)
トアール国には巨大な後宮がある。
「英雄色を好むというからなぁ」
「トアール国王は、さぞかしあっちの方もお強いのだろう」
「同じ男としては、羨ましい事だ」
などと、何も知らない周辺国の人々は噂をしている。
トアール国王はそっちの方も現役ではあるが、その性欲は人並み程度だ。
実際、国王のお渡りがあるのは、正妃と第一側妃のみ。
その他の側妃とは、初夜も閨を共にしていない。
所謂、白い結婚だ。
では何故、莫大な維持費を使ってまで巨大な後宮を保有しているのか?
その答えのヒントは、トアール国が抱える深刻な問題にある。
トアール国は、女児の出生率が異様に低いのだ。
その男女比は、平民で6:4位。貴族で8:2位。
平民は然程問題無い。戦闘民族なので、成人するまでの男子の死亡率も加味すると、結局はほぼ同率になるからだ。
問題なのは、貴族の方なのである。
原因は定かでは無い。
専門家達は「遺伝子に何らかの異常があるのでは?」と言うが、真相は不明。
色々と調査をしているが、納得のいく答えはまだ見つかっていない。
そこで一計を案じた国王が作ったのが、巨大な後宮である。
そこには他国から集められた大勢の王侯貴族の美しい娘達が側妃として暮らしている。
もうお分かりだろう。
トアール国王は他国から側妃を娶り、ほとぼりが冷めた頃に臣下に下賜しているのだ。
とは言え、「大勢いる側妃の一人にどうぞ」と快く差し出される娘なんて、何らかの問題を抱えているに決まっている。
だが、トアール国王は全く気にしない。
問題児ならば躾直せばいいだけの話だから。
寧ろ、問題児であればある程、相手国に恩を売ることが出来るので好都合かもしれない。
そうして、各国からトアール国へドナドナ風に移送された側妃達は、後宮へと収監…じゃなく、入内させられる。
トアール国の後宮では、現在十数人の囚じ…いや、側妃が、更生に努力しながら暮らしているのだが、最大収容人数は四十名ほどだ。
刑務所の様な説明になってしまったのは、不可抗力である。
他意は無い。
そんな風に問題児を集めている内に、『トアール国王は悪女を躾け直す変わった趣味がある』などと、まことしやかに囁かれる様になるが、何も不都合は無いし面倒なので特に訂正はしない。
『女児が生まれにくい』という弱みとも言える事情を他国に知られる位だったら、『好色な王は調教が済んだ側妃には興味が無くなり、臣下に下賜している』とでも思われた方が都合が良いのだ。
「か弱いご令嬢を躾けるのなんて造作もないだろ?」
後宮を作った当初、野生動物や魔獣を調教するのが得意なトアール国王は、何でも無い事の様に側近に言った。
「魔獣とご令嬢を一緒にしないで下さい。
勝手が全く違いますよ」
側近は呆れた顔で国王に意見した。
そりゃあ、一般的には魔獣の調教と比べたら、ご令嬢の躾の方がよっぽど簡単なのだろうけれど、トアール国王の場合はその限りでは無い。
実際、最初の頃はご令嬢達の調きょ…教育に四苦八苦した。
優秀な講師達を雇い入れたのは良いが、まず教育を受ける気にさせるのが難しいのだ。
野生動物や魔獣であれば、従わせるのは国王にとって朝飯前だ。
ちょっと殺気を放つだけで良いのだから。
自然界に住む者は、自分よりも強い生き物に逆らったりしない。
それは野生の本能だ。(逆らう=死)
だが、温室育ちのご令嬢は、奴等ほど鋭敏に殺気を感じ取る能力を持ち合わせていないので、同じ手は全く通じない。
殺気を放つだけでは、「やだ、このお爺ちゃん、ちょっと怖~いw」くらいにしか思われないのだ。
では、奴隷の様に鞭を打って従わせるのはどうか?
彼女達は側妃であり、ゆくゆくは貴族の夫人として下賜する予定の女性である。
身体に傷を負わせる訳にはいかない。
そこで用いられたのが、精神的拷問と呼ばれる手法だ。
※前後編ですが、後編には精神的拷問の話が少々出てきます。苦手な方は自衛して下さい。(とは言え、多分コメディです)
とある大陸の西の端に位置する、風光明媚なとある国。
それがトアール王国である。(ふざけているように思うだろうが、正式名称だ)
国土の西側の街には真っ青な海が広がっており、荒波に削られた不思議な形の岩壁と、美味しい魚介類が有名。海側の主な産業は観光である。
一方、山側では、石油、石炭、魔石などの天然資源が豊富に産出され、その資源を欲した周辺国に狙われる事もしばしば。
だが、トアール国民達は武術を極めた民族であり、何度攻め込んでもあっという間に返り討ちにされるので、近年では『あの国を狙うのは愚かな行為だ』と周辺国も漸く気付いた。
そんな猛者達の頂点に立つ人物が、トアール国王である。
御歳六十二才。
還暦を過ぎても未だに現役。
「王子達の誰かが、実戦形式の手合わせで私を倒したら玉座を譲る」
そう宣言してから早三十年。当初の計画ではもうとっくに退位しているはずだったのだが……。
残念ながら、まだまだその兆候は見られない。
因みに王子達が弱い訳では無い。
国王が強過ぎるのだ。(ちょっとした化け物かもしれない)
トアール国には巨大な後宮がある。
「英雄色を好むというからなぁ」
「トアール国王は、さぞかしあっちの方もお強いのだろう」
「同じ男としては、羨ましい事だ」
などと、何も知らない周辺国の人々は噂をしている。
トアール国王はそっちの方も現役ではあるが、その性欲は人並み程度だ。
実際、国王のお渡りがあるのは、正妃と第一側妃のみ。
その他の側妃とは、初夜も閨を共にしていない。
所謂、白い結婚だ。
では何故、莫大な維持費を使ってまで巨大な後宮を保有しているのか?
その答えのヒントは、トアール国が抱える深刻な問題にある。
トアール国は、女児の出生率が異様に低いのだ。
その男女比は、平民で6:4位。貴族で8:2位。
平民は然程問題無い。戦闘民族なので、成人するまでの男子の死亡率も加味すると、結局はほぼ同率になるからだ。
問題なのは、貴族の方なのである。
原因は定かでは無い。
専門家達は「遺伝子に何らかの異常があるのでは?」と言うが、真相は不明。
色々と調査をしているが、納得のいく答えはまだ見つかっていない。
そこで一計を案じた国王が作ったのが、巨大な後宮である。
そこには他国から集められた大勢の王侯貴族の美しい娘達が側妃として暮らしている。
もうお分かりだろう。
トアール国王は他国から側妃を娶り、ほとぼりが冷めた頃に臣下に下賜しているのだ。
とは言え、「大勢いる側妃の一人にどうぞ」と快く差し出される娘なんて、何らかの問題を抱えているに決まっている。
だが、トアール国王は全く気にしない。
問題児ならば躾直せばいいだけの話だから。
寧ろ、問題児であればある程、相手国に恩を売ることが出来るので好都合かもしれない。
そうして、各国からトアール国へドナドナ風に移送された側妃達は、後宮へと収監…じゃなく、入内させられる。
トアール国の後宮では、現在十数人の囚じ…いや、側妃が、更生に努力しながら暮らしているのだが、最大収容人数は四十名ほどだ。
刑務所の様な説明になってしまったのは、不可抗力である。
他意は無い。
そんな風に問題児を集めている内に、『トアール国王は悪女を躾け直す変わった趣味がある』などと、まことしやかに囁かれる様になるが、何も不都合は無いし面倒なので特に訂正はしない。
『女児が生まれにくい』という弱みとも言える事情を他国に知られる位だったら、『好色な王は調教が済んだ側妃には興味が無くなり、臣下に下賜している』とでも思われた方が都合が良いのだ。
「か弱いご令嬢を躾けるのなんて造作もないだろ?」
後宮を作った当初、野生動物や魔獣を調教するのが得意なトアール国王は、何でも無い事の様に側近に言った。
「魔獣とご令嬢を一緒にしないで下さい。
勝手が全く違いますよ」
側近は呆れた顔で国王に意見した。
そりゃあ、一般的には魔獣の調教と比べたら、ご令嬢の躾の方がよっぽど簡単なのだろうけれど、トアール国王の場合はその限りでは無い。
実際、最初の頃はご令嬢達の調きょ…教育に四苦八苦した。
優秀な講師達を雇い入れたのは良いが、まず教育を受ける気にさせるのが難しいのだ。
野生動物や魔獣であれば、従わせるのは国王にとって朝飯前だ。
ちょっと殺気を放つだけで良いのだから。
自然界に住む者は、自分よりも強い生き物に逆らったりしない。
それは野生の本能だ。(逆らう=死)
だが、温室育ちのご令嬢は、奴等ほど鋭敏に殺気を感じ取る能力を持ち合わせていないので、同じ手は全く通じない。
殺気を放つだけでは、「やだ、このお爺ちゃん、ちょっと怖~いw」くらいにしか思われないのだ。
では、奴隷の様に鞭を打って従わせるのはどうか?
彼女達は側妃であり、ゆくゆくは貴族の夫人として下賜する予定の女性である。
身体に傷を負わせる訳にはいかない。
そこで用いられたのが、精神的拷問と呼ばれる手法だ。
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