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10 田舎の暮らし
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「もうすぐ結婚という、こんなタイミングで、こんな事になってしまうなんて・・・・・・。
もう・・・貴女にはどうお詫びすれば良いか」
「お気になさらないで下さい。
最初から、サミュエル様の症状が完治した場合は、婚約を解消する可能性があったのですから、問題ありません」
そう。
魔力の器の修復方法が見つかれば、私はお払い箱になるのだろうと思っていた。
最初から、婚姻前に症状が完治した場合には、婚約を検討し直すという約束だったから。
流石にこんな形で婚約解消になるとは思っていなかったが・・・。
息子の為に涙目になりながら、必死で頭を下げる公爵夫妻を、これ以上責める事なんて出来るだろうか。
何より、責めたところで、事態が好転する訳でも無いのだ。
対外的には、婚約破棄ではなく、穏便に解消したという形を取ったが、スタンリー公爵家からハミルトン子爵家には、目ん玉飛び出そうなくらいの額の慰謝料が支払われた。
そんなに受け取れないと思ったが、
「慰謝料と言うよりも、今まで協力してくれた対価だと思って欲しい」
と言われれば、素直に受け取らざるを得ない。
これから公爵夫妻は、息子のしでかした事の後始末に奔走するのだろう。
ご両親にこんな心労をかけるなよ、とサミュエル様に対しては余計に怒りが湧いたけれど。
彼はもう少し思慮深い人間かと思っていたが、恋が人を愚かにすると言うのは、どうやら本当だったらしい。
サミュエル様は使節団の帰国と共に、隣国へと渡ってしまった。
私とサミュエル様、そして隣国の聖女による恋愛劇は、すぐに面白おかしく噂される事だろう。
社交の席で、ない事ない事言われるのは勘弁して欲しい。
そうなる前に、私は子爵家の田舎の領地に引き篭もる事にした。
空が青いわー・・・・・・
風が心地いいし、空気が澄んでいるし、遠くで小鳥の囀りや小川のせせらぎが聞こえる。
田舎暮らし、悪くない!!
領地の中でも一番自然豊かな場所にある小さな別荘に、最少人数の使用人を引き連れて生活をしている私は、テラスでのんびりお茶を飲んでいた。
手元のカップから漂うカモミールの良い香りに、さらに心が癒される。
毎日必死で気付かなかったが、サミュエル様を支える生活は、私にとってもかなりのストレスだったみたい。
そりゃそうだよね。
3時間毎に起こされて魔力提供させられるわ、いつでもサミュエル様の容体が悪くならないように気を使うわ、サミュエル様のファンから厭味を言われるわ・・・・・・。
いや、ホントにあんまり良い事なかったな。
離れてみて初めて気が付いたわ。
あんまり考えない様にしてたしね。
今、別荘の中は戦場のように、使用人達がてんやわんやで動いている。
明日、ソフィー様がこちらにやって来ると先触れが届いたせいだ。
客人など滅多に来ないこの場所に、侯爵令嬢がやってくるのだから、そりゃあ皆んな慌てるよね。
ソフィー様は、突然王都からいなくなった私を心配してくれたらしい。
やはり持つべき物は友達だ。
実は先日、ウェイクリング様からも花束が届いた。
私の体調などを気遣ってくれる内容のお手紙が添えられていて、とても嬉しかった。
婚約を報告した時に感じた不穏な空気は、やはり勘違いだったかもしれない。
「お嬢様、明日のお茶菓子はこちらの内容でよろしいですか?」
侍女が私に確認を求めた。
「大丈夫・・・あ、いえ、ソフィー様はチョコレートがお好きだから、追加で用意してちょうだい。
天気が良かったら、お庭にお席を用意してね」
指示を出しながら、メモを返す。
私だけのんびりしていて、申し訳ない気もするが、私がいても邪魔なだけだろう。
確認くらいしか出来ることはないのだから。
もう暫くは、皆んなの邪魔をしないように、大人しくお茶でも飲んでいよう。
明日ソフィー様に会えるの楽しみだな・・・・・・。
もう・・・貴女にはどうお詫びすれば良いか」
「お気になさらないで下さい。
最初から、サミュエル様の症状が完治した場合は、婚約を解消する可能性があったのですから、問題ありません」
そう。
魔力の器の修復方法が見つかれば、私はお払い箱になるのだろうと思っていた。
最初から、婚姻前に症状が完治した場合には、婚約を検討し直すという約束だったから。
流石にこんな形で婚約解消になるとは思っていなかったが・・・。
息子の為に涙目になりながら、必死で頭を下げる公爵夫妻を、これ以上責める事なんて出来るだろうか。
何より、責めたところで、事態が好転する訳でも無いのだ。
対外的には、婚約破棄ではなく、穏便に解消したという形を取ったが、スタンリー公爵家からハミルトン子爵家には、目ん玉飛び出そうなくらいの額の慰謝料が支払われた。
そんなに受け取れないと思ったが、
「慰謝料と言うよりも、今まで協力してくれた対価だと思って欲しい」
と言われれば、素直に受け取らざるを得ない。
これから公爵夫妻は、息子のしでかした事の後始末に奔走するのだろう。
ご両親にこんな心労をかけるなよ、とサミュエル様に対しては余計に怒りが湧いたけれど。
彼はもう少し思慮深い人間かと思っていたが、恋が人を愚かにすると言うのは、どうやら本当だったらしい。
サミュエル様は使節団の帰国と共に、隣国へと渡ってしまった。
私とサミュエル様、そして隣国の聖女による恋愛劇は、すぐに面白おかしく噂される事だろう。
社交の席で、ない事ない事言われるのは勘弁して欲しい。
そうなる前に、私は子爵家の田舎の領地に引き篭もる事にした。
空が青いわー・・・・・・
風が心地いいし、空気が澄んでいるし、遠くで小鳥の囀りや小川のせせらぎが聞こえる。
田舎暮らし、悪くない!!
領地の中でも一番自然豊かな場所にある小さな別荘に、最少人数の使用人を引き連れて生活をしている私は、テラスでのんびりお茶を飲んでいた。
手元のカップから漂うカモミールの良い香りに、さらに心が癒される。
毎日必死で気付かなかったが、サミュエル様を支える生活は、私にとってもかなりのストレスだったみたい。
そりゃそうだよね。
3時間毎に起こされて魔力提供させられるわ、いつでもサミュエル様の容体が悪くならないように気を使うわ、サミュエル様のファンから厭味を言われるわ・・・・・・。
いや、ホントにあんまり良い事なかったな。
離れてみて初めて気が付いたわ。
あんまり考えない様にしてたしね。
今、別荘の中は戦場のように、使用人達がてんやわんやで動いている。
明日、ソフィー様がこちらにやって来ると先触れが届いたせいだ。
客人など滅多に来ないこの場所に、侯爵令嬢がやってくるのだから、そりゃあ皆んな慌てるよね。
ソフィー様は、突然王都からいなくなった私を心配してくれたらしい。
やはり持つべき物は友達だ。
実は先日、ウェイクリング様からも花束が届いた。
私の体調などを気遣ってくれる内容のお手紙が添えられていて、とても嬉しかった。
婚約を報告した時に感じた不穏な空気は、やはり勘違いだったかもしれない。
「お嬢様、明日のお茶菓子はこちらの内容でよろしいですか?」
侍女が私に確認を求めた。
「大丈夫・・・あ、いえ、ソフィー様はチョコレートがお好きだから、追加で用意してちょうだい。
天気が良かったら、お庭にお席を用意してね」
指示を出しながら、メモを返す。
私だけのんびりしていて、申し訳ない気もするが、私がいても邪魔なだけだろう。
確認くらいしか出来ることはないのだから。
もう暫くは、皆んなの邪魔をしないように、大人しくお茶でも飲んでいよう。
明日ソフィー様に会えるの楽しみだな・・・・・・。
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