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22 深夜の逢瀬
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「メリッサ、会いたかった」
リチャード様は、私をそっと抱き寄せ、髪を撫でた。
じんわりと彼の体温が伝わってきて、鼓動が速くなるのを感じながら、私も彼の背中に手を回す。
「私もです。
でも、私がメッセージに気付かなかったら、どうするつもりだったのですか?」
「その時は、俺が少し待ちぼうけを食うだけだよ。
それに、メリッサなら、俺の瞳の色のリボンは捨てないだろうと思った」
「随分な自信ですね」
その通りなのが少し悔しくて、憮然とした表情になってしまう。
リチャード様は私を揶揄う様に笑っていたが、すぐに深妙な面持ちになる。
「・・・メリッサ、すまなかったね。
俺が夜会に誘ったせいで、嫌な目に遭っているだろう。
君を悪く言う奴等を牽制したかったんだが、完全に裏目に出たな。
これではサミュエルの事を責められない」
「リチャード様のせいではありません」
私の新たな噂が出回ったのは修羅場を目撃されたせいだが、あの場にサミュエル様と聖女が現れるとは予想出来なかったのだから、仕方が無い。
「なかなか会いにも来られなくて、悪かった」
「いいえ。大丈夫です」
「なんだ。寂しかったのは俺だけなのか」
拗ねたように言われ、胸の奥が擽ったくなる。
「・・・・・・本当は・・・とても、寂しかったです」
頬を染めてそう言った瞬間、彼の瞳に熱が篭もり、抱きしめる力が強くなった。
「あー・・・、早く堂々と一緒に居られるようになりたい。
今、色々根回しをしている所なんだ。
もう少しだけ、我慢して欲しい」
「・・・・・・私達、一緒に居られるようになるのでしょうか?」
「当たり前だろう?
会えない間はずっとその為に動いていたんだ。
だから、別れる事なんて考えないで」
「わかりました」
彼が私との未来を諦めないでくれた事が嬉しいが、同時に、何も出来ない自分がもどかしい。
「・・・そう言えば、ソフィーも何か企んでいるらしいよ。
詳細は教えてくれなかったが、〝メルの為になる事〟だって。
悪いようにはしないからって言ってた」
「ソフィー様が・・・・・・?」
カフェで彼女が言った言葉を思い出す。
本当に助けられてばかりだ。
「俺も必ず父上を説得するから、そうしたら・・・・・・
俺と、結婚してくれる?」
真剣な瞳に見つめられて、心臓の音が大きくなる。
素直な気持ちを答えても、良いのだろうか?
「・・・・・・はい。
私も、ずっとリチャード様のお側に居たいです。」
「あぁ、良かった。緊張した。
よし、絶対に許可を取って見せる!」
彼は甘やかな微笑みを浮かべると、私の額に軽くキスを落として、再びギュッとハグをした。
「名残惜しいけど、そろそろ帰さないとね。
折角信用してくれた君の兄君を、裏切る訳にはいかないから」
切ない表情でそう呟き、私を邸内に送り出す。
たった5分の再会だったが、顔を見て少し触れられただけで、とても満たされた気分になった。
見逃してくれたお兄様に改めて感謝しながら、私は自室のベッドへと戻った。
それから暫くは、あまり外出せずに過ごした。
余計な噂が耳に入るのが面倒になったので。
じっと待つだけの毎日に焦燥感が募るが、下手に動いたら逆効果な気がする。
リチャード様からは、相変わらず頻繁に贈り物が届く。
特に花束は、前に貰った物が枯れそうになると、入れ替わる様に次の花束が届くので、私の部屋には常に彼からの花が飾られている。
〝この花を見る度に、俺を思い出して欲しい〟
何度目かに貰った花束のカードにそう書いてあったのだが、彼の思惑通り、毎日彼を思い出してしまっている。
まんまと踊らされているみたいで、ちょっとだけ不本意だ。
そんなある日、私は久し振りにお父様の執務室に呼ばれた。
「スタンリー家が、サミュエル様の魔力欠乏症について、公式に発表したよ。
今、社交界はその話題で持ちきりだ」
「えっっ!?」
「サミュエル様の魔力欠乏症の原因が判明したんだ。
どうやら事件性があったみたいでね。
裁判前に公表する必要があったようだ。
サミュエル様の症状が完治し、再発の可能性もない為、隠し立てする理由もあまりない。
それと共に、メリッサとの婚約が魔力提供を目的にした〝契約〟であった事も併せて発表された」
「公表して頂けるとは・・・思っていませんでした」
実は、最初の公爵家での会談で、魔力欠乏症が完治した後に婚約を解消する事になった場合、今回の婚約に関する全ての事実を公表するとの約束をしていた。
婚約解消をすれば、私はどうしても傷物扱いになってしまう。
その悪いイメージを、少しでも抑える為にと考えた取り決めだった。
しかし今回の場合は、症状の完治よりも婚約解消の方が先だった為、その時点で公表する事は不可能だった。
だから、その条文を守らなくても契約違反には当たらない。
私が不利益を被った分を上乗せされた慰謝料も、既に受け取っており、こちらも納得済みだったのだから、今更公表して貰えるとは思っても見なかったのだ。
態々公表しても、公爵家にメリットがある訳ではないのだし、寧ろ批判を受ける可能性さえある。
公爵家の力を持ってすれば、ある程度の情報操作は出来るのかも知れないが・・・。
『ソフィーも何か企んでいるらしい』
リチャード様の言葉が頭をよぎった。
リチャード様は、私をそっと抱き寄せ、髪を撫でた。
じんわりと彼の体温が伝わってきて、鼓動が速くなるのを感じながら、私も彼の背中に手を回す。
「私もです。
でも、私がメッセージに気付かなかったら、どうするつもりだったのですか?」
「その時は、俺が少し待ちぼうけを食うだけだよ。
それに、メリッサなら、俺の瞳の色のリボンは捨てないだろうと思った」
「随分な自信ですね」
その通りなのが少し悔しくて、憮然とした表情になってしまう。
リチャード様は私を揶揄う様に笑っていたが、すぐに深妙な面持ちになる。
「・・・メリッサ、すまなかったね。
俺が夜会に誘ったせいで、嫌な目に遭っているだろう。
君を悪く言う奴等を牽制したかったんだが、完全に裏目に出たな。
これではサミュエルの事を責められない」
「リチャード様のせいではありません」
私の新たな噂が出回ったのは修羅場を目撃されたせいだが、あの場にサミュエル様と聖女が現れるとは予想出来なかったのだから、仕方が無い。
「なかなか会いにも来られなくて、悪かった」
「いいえ。大丈夫です」
「なんだ。寂しかったのは俺だけなのか」
拗ねたように言われ、胸の奥が擽ったくなる。
「・・・・・・本当は・・・とても、寂しかったです」
頬を染めてそう言った瞬間、彼の瞳に熱が篭もり、抱きしめる力が強くなった。
「あー・・・、早く堂々と一緒に居られるようになりたい。
今、色々根回しをしている所なんだ。
もう少しだけ、我慢して欲しい」
「・・・・・・私達、一緒に居られるようになるのでしょうか?」
「当たり前だろう?
会えない間はずっとその為に動いていたんだ。
だから、別れる事なんて考えないで」
「わかりました」
彼が私との未来を諦めないでくれた事が嬉しいが、同時に、何も出来ない自分がもどかしい。
「・・・そう言えば、ソフィーも何か企んでいるらしいよ。
詳細は教えてくれなかったが、〝メルの為になる事〟だって。
悪いようにはしないからって言ってた」
「ソフィー様が・・・・・・?」
カフェで彼女が言った言葉を思い出す。
本当に助けられてばかりだ。
「俺も必ず父上を説得するから、そうしたら・・・・・・
俺と、結婚してくれる?」
真剣な瞳に見つめられて、心臓の音が大きくなる。
素直な気持ちを答えても、良いのだろうか?
「・・・・・・はい。
私も、ずっとリチャード様のお側に居たいです。」
「あぁ、良かった。緊張した。
よし、絶対に許可を取って見せる!」
彼は甘やかな微笑みを浮かべると、私の額に軽くキスを落として、再びギュッとハグをした。
「名残惜しいけど、そろそろ帰さないとね。
折角信用してくれた君の兄君を、裏切る訳にはいかないから」
切ない表情でそう呟き、私を邸内に送り出す。
たった5分の再会だったが、顔を見て少し触れられただけで、とても満たされた気分になった。
見逃してくれたお兄様に改めて感謝しながら、私は自室のベッドへと戻った。
それから暫くは、あまり外出せずに過ごした。
余計な噂が耳に入るのが面倒になったので。
じっと待つだけの毎日に焦燥感が募るが、下手に動いたら逆効果な気がする。
リチャード様からは、相変わらず頻繁に贈り物が届く。
特に花束は、前に貰った物が枯れそうになると、入れ替わる様に次の花束が届くので、私の部屋には常に彼からの花が飾られている。
〝この花を見る度に、俺を思い出して欲しい〟
何度目かに貰った花束のカードにそう書いてあったのだが、彼の思惑通り、毎日彼を思い出してしまっている。
まんまと踊らされているみたいで、ちょっとだけ不本意だ。
そんなある日、私は久し振りにお父様の執務室に呼ばれた。
「スタンリー家が、サミュエル様の魔力欠乏症について、公式に発表したよ。
今、社交界はその話題で持ちきりだ」
「えっっ!?」
「サミュエル様の魔力欠乏症の原因が判明したんだ。
どうやら事件性があったみたいでね。
裁判前に公表する必要があったようだ。
サミュエル様の症状が完治し、再発の可能性もない為、隠し立てする理由もあまりない。
それと共に、メリッサとの婚約が魔力提供を目的にした〝契約〟であった事も併せて発表された」
「公表して頂けるとは・・・思っていませんでした」
実は、最初の公爵家での会談で、魔力欠乏症が完治した後に婚約を解消する事になった場合、今回の婚約に関する全ての事実を公表するとの約束をしていた。
婚約解消をすれば、私はどうしても傷物扱いになってしまう。
その悪いイメージを、少しでも抑える為にと考えた取り決めだった。
しかし今回の場合は、症状の完治よりも婚約解消の方が先だった為、その時点で公表する事は不可能だった。
だから、その条文を守らなくても契約違反には当たらない。
私が不利益を被った分を上乗せされた慰謝料も、既に受け取っており、こちらも納得済みだったのだから、今更公表して貰えるとは思っても見なかったのだ。
態々公表しても、公爵家にメリットがある訳ではないのだし、寧ろ批判を受ける可能性さえある。
公爵家の力を持ってすれば、ある程度の情報操作は出来るのかも知れないが・・・。
『ソフィーも何か企んでいるらしい』
リチャード様の言葉が頭をよぎった。
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