特進クラスのふざけかた

やすを。

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6話 「なんでも」の代償

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 「ねえ、本当にやるの?」

 「もちろん。何でもするって言ったじゃん。やっぱり嘘とは言わせないよ?」

 「わ、分かってるよ……。でもさ、やっぱり恥ずかしい……。」

 彩白は照れたように顔を真っ赤にしていた。顔が整っているのもあって、より可愛くなっていた。

 彼女はカーテン越しに、衣擦れの音が聞こえた。僕は心を弾ませながらカーテンが開くのを待っていた。

 あー、ネタバレしとくとね。僕は彼女を連れて服を買いに来たんだ。正直な話さ、何でもいいって言われた時結構決めるの困るんだよな。

 もちろん僕の服を買いに来たわけでもないし、彼女の服を購入するわけでもない。じゃあ何のために来たのか。

 「着替え終わったよ~。」

 「やっぱ似合うな。スタイルいいから、より可愛く見えるね。」

 「そ、そうかな。褒めてくれるのは嬉しいんだけど、褒められ慣れてないから、過ごし方が分からない……。」

 「そうなのか? 魅力いっぱいあるのに、見る目ないのかな……?」

 「違うよ。そんなことを恥ずかしがらずに言える、キー君が特殊なんだって。」

 「特殊って、僕は思ったことしか言ってないから。」

 僕はそう言って、どこか変な態度の彩白に違和感を抱いていた。

 僕は姉の服を買いに来ていた。もうすぐ誕生日で、服が欲しいと言っていたから買おうと決めていたのだが、いかんせんお洒落も分からないし、好みも何となくしか分からなかったから、今日彼女に付き合ってもらってプレゼント選びをする運びになった。

 服を着てもらったのは、姉と服のサイズがほぼ一緒だから参考になるかなと思って頼んだのだ。流石に姉のスリーサイズなんか知る訳もないし、教えてくれるはずもないだろうから、そこは保証できない。

 「ありがとね、付き合ってくれて。」

 「本当だよ。恥ずかしかったんだから、なんか奢ってもらわないと。」

 「奢りたいのは山々なんだけどね、やっぱ今回はさ『何でもやる』って言ったから、彩白が。」

 「いや~、本当に言わなきゃよかった……。」

 そう彼女は冗談ぽく言っていた。

 「まあ、後日何かしら埋め合わせはするよ。流石に結構な時間付き合わせちゃったからさ。」

 「ほう? 何でもいいのですかな、輝波殿?」

 「もちろんですとも。私めができる範囲であれば、仰せのままにいたしましょう。」

 「そうか。では今週末、駅前集合にいたそう。一日中私の勉強に付き合っていただく。」

 流石特進クラスの上位者だな。テスト2週間前って事もあるけど、そういう自主的な部分はやはり見習うべきだよな。いつもあんだけボケてるくせに、勉強になると人が変わるんだよね。

 「何この言い方……。本気でやばいな。」

 「ね。私たち、どんな見え方してるんだろうね。」

 「『私たち』というか、『私』なんだけどさ。重度のオタクに見られてたんじゃない?」

 「凄いよキー君は……。私にツッコませようとするなんてさ。」

 「ば、バレた……?」

 「慣れない事しないの! 私さツッコミなんかした事ないんだから、そんな事させちゃいけない!」

 「はい、すいません……」

 僕はそう言った。彩白は得意げに、「よろしい」とご機嫌な声色で言った。

 その後僕らは各々の帰路につき、姉の誕生日だった今日のうちにちゃんと買った誕プレを渡した。反応としては、感謝の言葉と「彩白ちゃんに会わせて。」との事。

「僕への感謝は?」と聞くと、投げやりにありがとうと言った。内容に関しては、彩白のことをベタ褒めしていた。僕も彼女のセンスには恐れ入る。

そして少しの幸福感を抱きながら、ベッドに入るのだった。

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