特進クラスのふざけかた

やすを。

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8話 とある休日

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 期末テストが終わり、夏休み前の休み期間。私立高校特有のそれは、僕らにとって丁度良い休憩の期間になるだろう。そう思っていた。

 「なあ、彩白さんや。」

 「どうしたんだい、キー君。」

 「朝早くないかい?」

 午前8時。僕らは普段授業を受ける教室で、いつも通り参考書を開き、問題に取り組んでいた。

 「何言ってんのさ、君は。こういう時にやるかやらないかで、他の受験生と差をつけるんじゃないか?」

 「いやね、その理論は凄い分かるんだけどさ……」

 僕はそう言いながら、視線を彼女の手元に落とした。

 「何漫画読んでんねん!!」

 「うわ、関西弁。関西人に嫌われるよ~。」

 「そんなんどうでもいいわ! こんな早朝に人呼びつけといて。彩白さんや、何しとんじゃ!」

 僕は勢いよくそう言うと、彩白は漫画を置き宥めるように言った。

 「キー君、落ち着きなさいな。眠くてイライラしてるんだよ。いつもならそんなに怒らないから。」

 「まあ、そうかも……。」

 「でしょ? キー君が落ち着いたらやろう。」

 そうか、一旦落ち着いて考え直してみよう。もしかしたら僕が悪いかもしれないからな。

 「昨日の夜に明日7時半の始発で学校行くよー!」というラインが届いて、

 バスの中では寝ようと思っても寝かしてくれず、

 学校に着いて合流してからずっとこの調子…………うん、僕悪くない!!!

 「えっ、何で荷物まとめてるの?」

 「流石に時間の無駄すぎるから。」

 「時間の無駄って、キー君私といる時間無駄って言ったね?」

 「別に彼女じゃないし、勉強家でも出来るし。正直ここにいるの無駄かなって。」

 「あれ? ちょっと怒ってる?」

 ちょっと? はらわた煮えくり返ってるわ!!

 「別に。ただ今日の彩白、ちょっと僕のこと馬鹿にしてるんじゃないかなって。何をしてもいい訳じゃないんだよ?」

 頑張って平静を保って話してるよね? 結構頑張ってない、僕。

 「……それはごめん。ちゃんとやるよ。だから帰らないで。」

 「んじゃあ、まず今日持ってきた漫画をここに全部出せ。」

 少し語気を強めに言った。

 彩白は僕の言葉に反応して、カバンの中から漫画を一冊ずつ取り出した。

 「君さ、本当に何のために僕を呼んだの?」

 「話し相手が欲しかったんです……。」

 「だったらここじゃなくて、近くのファミレスとかコーヒーショップとかで良かったじゃん!」

 「金欠なんです……。」

 彩白は申し訳なさそうに、そう言いながらも漫画を机の上に並べていた。

 「20冊も持ってきたのか……。勉強道具は?」

 「ロッカーの中に全部入ってます……。」

 「それを早く持ってきなさい。」

 「はい……。」

 「持ってきたな。それじゃ始めようか。」

 「はい……。」

 気まずさを滲ませる彩白に、僕は何をすればいいのか分からなくなっていた。

 無言で、気まずくて、集中できなくて。時々くる質問も申し訳なさそうだった。

 「ごめんな、言い過ぎたみたい。」

 「ううん。よくよく考えてみると、私もやってる事ヤバいなって分かった。だから謝らないでよ。」

 その自覚があるだけ良かったよ。こうして謝ってるけど、あんまり納得はいってないからな。

 でも、シュンとした彩白って、やっぱ違和感すごいんだよね。いつもあんなんだから、静かな彩白って、レアだよな。

 「私こそごめん。とりあえず昼までやってそれから帰ろ。」

 「そうだな。このままやってもあんまり身につかないだろうし。」


「うん。」

 やっぱり少し空気が重い。テンションの低い彩白が初めてで過ごし方が分からない。

 それから12時台のバスの時間まで、ひたすら黙って勉強した。

 僕は謝罪の言葉を伝えたこともあって、比較的気楽に勉強できた気がした。

 そして重たい空気そのままで、教室を後にし梅雨明け前の雨の中を歩いていくのだった。

 

 


 
 





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