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9話 女っ気のない僕が
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シャワーの音にこんなにもドキドキさせられた事は無かった。
というのも、今僕の家のお風呂場には、彩白が入っているのだ。
まったく、こんな展開を考える作者ってエロガキか何かなのか?
まあ、何でもいいけど、とりあえず僕は自室に戻って理性を保つために頑張ってます。
「あんた、彩白ちゃん出たわよー。風邪引く前に入って頂戴ねー!」
「うん、分かった。」
僕は濡れた制服のまま一階に降り、風呂場に向かう。
「お風呂ありがとう~。さっぱりしたよ。」
「それは良かった。僕が上がるまで適当にくつろいでて。」
「うん。」
やっぱり、彼女のテンションは低いままだった。昨日彼女だったら一ボケ入れてくるとこだ。
僕はずぶ濡れの制服を脱ぎ、洗濯カゴにぶち込んで、お風呂場に入った。
浴槽に入って一息付いていた時に、ふとこれまでの経緯を思い出していた。
バスに乗った僕らは、いつもとは違う空気感の中で、雑談を交わした。彼女はとても気を遣っていたのがよく分かった。
30分ほどバスに乗り、降車すると雨脚が一層強くなっていることに気がついた。
「雨が落ち着くまでうち寄ってったら?」
「いいの? 迷惑じゃない?」
「次会った時に、風邪引いたって聞くよりマシ。」
「じゃあ、お邪魔するよ。」
そう彩白は即決した。
「誘った僕が言うのも何だけど、警戒しないのか?」
「だってキー君、私を襲う勇気ないでしょ?」
「うん、ない!」
「元気に言われても困るよ……?」
男として情けないのか、かっこいいのか、分からないけど、流石に襲う気にはなれないな。
そんなやり取りをして、僕は自宅に彩白を連れて帰り、風呂に入らせた。
その時の母さんの反応と言ったら、もう凄かったな。
「あんたが女の子を家に連れてくるなんて……。もしかして夢でも見てるのかしら。」
「息子にそんなこと言って、母さんは何も思わないのか……?」
「だって本当のことじゃない! あんたに女っ気一才ないもの。」
「本当のことでもショックだよ……。つうか、そんな話は後でしよう。とりあえず、彩白をお風呂に入らせて。」
「そうね。彩白ちゃん、お風呂沸いてるから先に入っちゃって。」
「えっ先、キー君入りなよ。私はその後でいいから。」
「そんなん大丈夫だから。ほら、早く風呂場に行く。母さん、彩白連れてって。」
「ええ、分かったわ。」
そうして、彩白はお風呂に入り今に至るという訳だ。僕は髪を洗いながら、そんな事を回想していた。
「彩白は?」
僕がリビングに行くと、そこに彩白の姿はなく、母さんが昼食の準備をしていた。
「あれ、二階に上がってったわよ。」
「ふーん……ん? 何用で?」
おいおい、もしかしてあれをやってる訳じゃあるまいな。
漫画好きのアイツなら十分あり得る話だな。
僕は嫌な予感がして、急足で階段を登った。
「彩白、何やってんだよ。」
「……うわっ!! びっくりした。」
「お前、人の部屋引っ掻き回して何してんの?」
「いやあ、お宝本探ししてたんだけどさ、何も見つからないんだよね。」
「そんなことせんでええ! ほら早く下降りるぞ!」
「え~……、折角楽しくなってきたのに……。」
「こっちは何ひとつ楽しくないんだけど……。」
僕は意固地な人と変貌を遂げた彩白を、なんとか一階に引きずり下ろして、席に着かせた。
「輝波、あのさ母さん今から買い出し行ってくるから、留守番よろしくね。あっ、そういうことするなら、自分の部屋でお願いね。」
「やらないから!! ほら、早く買い出し行ってきて!」
「ふふっ。どうだか……。」
そう言って母さんは玄関から出て行った。
「愉快なお母さんだね。」
「そうか? 疲れるぞ、あれが続くと。」
まあ、楽しいのはいいことだけど、流石にいつもだと疲れるんだよな。
それから数瞬開いて、おもむろに彩白が口を開いた。
「さっきは本当にごめんね。あと、お風呂ありがとう。」
「もういいって。過ぎた事は忘れよう。」
「ううん、忘れない。」
ん? どうしたんだろう? 少し様子がおかしいような気がするんだけど。
「私さ、昔から面倒臭い性格してて。分かると思うけど、調子乗りやすいタイプでさ……。何度人を傷つけてきた事か分からないよ。」
「うん、なんとなく分かる気がする……。」
漫画の事もそうだし、日に日にボケの内容もディスりが増えたり、キツくなったりしていた。
でも、それに関しては気にしていなかったのも、また事実だった。
「だよね……。うちお母さんが厳しくて、漫画読ませてくれないんだよね。だから外でしか読めないの。」
「じゃあ、何で漫画持ってるの?」
「真斗から借りたの。お母さんにバレないように学校に置きっぱにしてるけど、家で呼んでるのバレたら、没収されて捨てられちゃうから。」
「凄いなそれは……。」
「うん。だからキー君の部屋にあった漫画の量を見て、羨ましくて仕方なかったの。」
「なるほどな。エロ本の話は嘘だったんだ。」
「半分本当、半分嘘って感じかな。」
何だそれ……。でも、なんとなく彼女の性格が見えてきた気がするよ。
「別に僕はいくらいじられても、ボケられてもツッコむし、怒らないから。」
「キー君……」
「漫画もいつでも読みに来てもいいよ。」
「本当に? いつ来てもいいの?」
「別に僕が困る事は無いからな。交換条件と言ったらなんだけど、勉強教えてくれたら嬉しい。」
彩白の顔が一気に輝いたように見えた。
「後さ、調子に乗っちゃうって言ってだけど、それもさその時にちゃんと反省して直すように心がければいいんじゃない? 誰だってそういう時はあるからさ。」
「キー君って意外と優しいんだね。」
「意外とは余計だっつーの!」
僕がそう言うと彩白はぎこちなく笑った。それは今日初めての笑顔だったのかもしれない。
「まあ、だからさそんなに気にする事ないから。」
「そんな事、初めて言われたよ。気にしなくていいって。私、今まで気にして生きてきたのに、何か否定された気分だね。」
「あっ、なんかごめん。」
「別にいいんだけど。ただ、珍しいこと言う人もいるんだなと思ってさ。」
僕らは昼食を頬張りながら、少し重たい話をしていた。ただ、その後から彩白のテンションも徐々に戻って行った。
その後、彩白の制服が乾いたのを確認して着替えた後、彩白を家まで送って行った。
少し良い事をした気分を持ちながら、彩白のボケを捌くのだった。
というのも、今僕の家のお風呂場には、彩白が入っているのだ。
まったく、こんな展開を考える作者ってエロガキか何かなのか?
まあ、何でもいいけど、とりあえず僕は自室に戻って理性を保つために頑張ってます。
「あんた、彩白ちゃん出たわよー。風邪引く前に入って頂戴ねー!」
「うん、分かった。」
僕は濡れた制服のまま一階に降り、風呂場に向かう。
「お風呂ありがとう~。さっぱりしたよ。」
「それは良かった。僕が上がるまで適当にくつろいでて。」
「うん。」
やっぱり、彼女のテンションは低いままだった。昨日彼女だったら一ボケ入れてくるとこだ。
僕はずぶ濡れの制服を脱ぎ、洗濯カゴにぶち込んで、お風呂場に入った。
浴槽に入って一息付いていた時に、ふとこれまでの経緯を思い出していた。
バスに乗った僕らは、いつもとは違う空気感の中で、雑談を交わした。彼女はとても気を遣っていたのがよく分かった。
30分ほどバスに乗り、降車すると雨脚が一層強くなっていることに気がついた。
「雨が落ち着くまでうち寄ってったら?」
「いいの? 迷惑じゃない?」
「次会った時に、風邪引いたって聞くよりマシ。」
「じゃあ、お邪魔するよ。」
そう彩白は即決した。
「誘った僕が言うのも何だけど、警戒しないのか?」
「だってキー君、私を襲う勇気ないでしょ?」
「うん、ない!」
「元気に言われても困るよ……?」
男として情けないのか、かっこいいのか、分からないけど、流石に襲う気にはなれないな。
そんなやり取りをして、僕は自宅に彩白を連れて帰り、風呂に入らせた。
その時の母さんの反応と言ったら、もう凄かったな。
「あんたが女の子を家に連れてくるなんて……。もしかして夢でも見てるのかしら。」
「息子にそんなこと言って、母さんは何も思わないのか……?」
「だって本当のことじゃない! あんたに女っ気一才ないもの。」
「本当のことでもショックだよ……。つうか、そんな話は後でしよう。とりあえず、彩白をお風呂に入らせて。」
「そうね。彩白ちゃん、お風呂沸いてるから先に入っちゃって。」
「えっ先、キー君入りなよ。私はその後でいいから。」
「そんなん大丈夫だから。ほら、早く風呂場に行く。母さん、彩白連れてって。」
「ええ、分かったわ。」
そうして、彩白はお風呂に入り今に至るという訳だ。僕は髪を洗いながら、そんな事を回想していた。
「彩白は?」
僕がリビングに行くと、そこに彩白の姿はなく、母さんが昼食の準備をしていた。
「あれ、二階に上がってったわよ。」
「ふーん……ん? 何用で?」
おいおい、もしかしてあれをやってる訳じゃあるまいな。
漫画好きのアイツなら十分あり得る話だな。
僕は嫌な予感がして、急足で階段を登った。
「彩白、何やってんだよ。」
「……うわっ!! びっくりした。」
「お前、人の部屋引っ掻き回して何してんの?」
「いやあ、お宝本探ししてたんだけどさ、何も見つからないんだよね。」
「そんなことせんでええ! ほら早く下降りるぞ!」
「え~……、折角楽しくなってきたのに……。」
「こっちは何ひとつ楽しくないんだけど……。」
僕は意固地な人と変貌を遂げた彩白を、なんとか一階に引きずり下ろして、席に着かせた。
「輝波、あのさ母さん今から買い出し行ってくるから、留守番よろしくね。あっ、そういうことするなら、自分の部屋でお願いね。」
「やらないから!! ほら、早く買い出し行ってきて!」
「ふふっ。どうだか……。」
そう言って母さんは玄関から出て行った。
「愉快なお母さんだね。」
「そうか? 疲れるぞ、あれが続くと。」
まあ、楽しいのはいいことだけど、流石にいつもだと疲れるんだよな。
それから数瞬開いて、おもむろに彩白が口を開いた。
「さっきは本当にごめんね。あと、お風呂ありがとう。」
「もういいって。過ぎた事は忘れよう。」
「ううん、忘れない。」
ん? どうしたんだろう? 少し様子がおかしいような気がするんだけど。
「私さ、昔から面倒臭い性格してて。分かると思うけど、調子乗りやすいタイプでさ……。何度人を傷つけてきた事か分からないよ。」
「うん、なんとなく分かる気がする……。」
漫画の事もそうだし、日に日にボケの内容もディスりが増えたり、キツくなったりしていた。
でも、それに関しては気にしていなかったのも、また事実だった。
「だよね……。うちお母さんが厳しくて、漫画読ませてくれないんだよね。だから外でしか読めないの。」
「じゃあ、何で漫画持ってるの?」
「真斗から借りたの。お母さんにバレないように学校に置きっぱにしてるけど、家で呼んでるのバレたら、没収されて捨てられちゃうから。」
「凄いなそれは……。」
「うん。だからキー君の部屋にあった漫画の量を見て、羨ましくて仕方なかったの。」
「なるほどな。エロ本の話は嘘だったんだ。」
「半分本当、半分嘘って感じかな。」
何だそれ……。でも、なんとなく彼女の性格が見えてきた気がするよ。
「別に僕はいくらいじられても、ボケられてもツッコむし、怒らないから。」
「キー君……」
「漫画もいつでも読みに来てもいいよ。」
「本当に? いつ来てもいいの?」
「別に僕が困る事は無いからな。交換条件と言ったらなんだけど、勉強教えてくれたら嬉しい。」
彩白の顔が一気に輝いたように見えた。
「後さ、調子に乗っちゃうって言ってだけど、それもさその時にちゃんと反省して直すように心がければいいんじゃない? 誰だってそういう時はあるからさ。」
「キー君って意外と優しいんだね。」
「意外とは余計だっつーの!」
僕がそう言うと彩白はぎこちなく笑った。それは今日初めての笑顔だったのかもしれない。
「まあ、だからさそんなに気にする事ないから。」
「そんな事、初めて言われたよ。気にしなくていいって。私、今まで気にして生きてきたのに、何か否定された気分だね。」
「あっ、なんかごめん。」
「別にいいんだけど。ただ、珍しいこと言う人もいるんだなと思ってさ。」
僕らは昼食を頬張りながら、少し重たい話をしていた。ただ、その後から彩白のテンションも徐々に戻って行った。
その後、彩白の制服が乾いたのを確認して着替えた後、彩白を家まで送って行った。
少し良い事をした気分を持ちながら、彩白のボケを捌くのだった。
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