特進クラスのふざけかた

やすを。

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19話 夜の青春

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 昼食を食べ、ゲームや勉強、鬼ごっこを経て、夜がやってきた。

 あらかじめ温泉に男女別で入った後、夕食を全員で平らげて、今回の旅行の幹事である真斗から次の工程が告げられた。

 「次は肝試し行きまーす!!」

 「えっ。今年もやるの、あれ……」

 いきなりのテンションの下がり具合にキョどりながらも、僕は話を聞いていた。

 「そんなに怖いの?」

 「うん……。歩いて10分くらいの樹海に一人で入って、30分くらい歩いて出てくる。みたいな流れなのよ。」

 「しかも、その奥では幾度となく自殺が行われていたらしい……。幽霊の目撃情報が後を絶たないそうなんだ……」

 「えっ、それ本当……?」

 「ああ、全て事実さ……。何を隠そう、この俺でさえ目視したことあるんだからな!!」

 なんか嫌になってきたんだけど……。そんなところにこれから行かなきゃいけないのか……。

 「おい、嘘が過ぎるぞ! 幽霊なんか出たことないって去年言ってたじゃねえかよ!!」

 「拓人お前、何でバラしちゃうんだよ! 輝波の反応見たかったのに、楽しみ奪うなって。」

 「お前さ、何考えてんだよ……。本気で肝試し断念しようか迷ったじゃないか。」

 
 「いやー、ついさはじめての人をいじめてみたくなっちゃって。」

 真斗は悪びれるどころか、少しにこやかにそう言った。

 まあ、それが真斗らしさだし、それがなくなったら真斗じゃないもんな。

 その後、少し説明を挟んで、いざ現場に向かおう。となった時に、突然紫音に呼ばれた。

 「どうした?」

 「どうした? じゃないよ! アンタのせいで、彩白の元気がないじゃないの!」

 「えっ!? 僕、なんかしたっけ!?」

 僕も薄々どころか、ずっと変だと思っていた。違和感を忘れようと努力したけど、結局できず、心の中に留まっている。

 「そっか……、あんた目隠ししてたから分からないのね……。」

 「目隠し? ああ、スイカ割りの時か……。」

 そういえば、最後の方に彩白と話したけど、その時にはもう変だったからな……。

 「あんた、あの時柔らかいモノを触らなかった?」

 「あっ、そういえば触ったけど……えっ、まさかそれって……」

 ようやく点と点が繋がった気がした。

 「そうよ!! 彩白の胸だったのよ!!」

 「嘘、だろ……。」

 そりゃ気まずくなる訳だ……。好きでもない男子に突然胸を揉まれたら、嫌な気持ちになるのも明白だ。

 「早くあの子に謝りなさい!!」

 「そんなこと分かってるよ! もう行っちゃったか?」

 「ええ、結構前に。だから、肝試しの間に言いなさい!」

 これは相当マズイ事になってな……。いくら不可抗力とはいえ、流石にそこの分別はつけないと……。

 「というか、あんた触った時に気づかなかった訳?」

 「気づくわけないじゃんか!! この陰キャ童貞が、胸の感触なんか知る訳ないじゃん!!」

 「めっちゃキレるじゃない……。」

 とにかく早く謝罪の言葉を伝えないと、気まずいままで終わるのは、僕の本望じゃない。

 僕は、早足で紫音と共に現場に向かったのだった。


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