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24話 僕の家庭力
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「今日さ、親が帰ってこないから早めに帰ってな。」
僕は漫画に没頭する彩白にそう告げた。今日から二日間、両親は旅行に行っている。
なぜ息子を置いていったのか。別に毒親とか、仲が悪い訳でもない。単純に僕が「言ってこい!」と勧めたのだ。
昔から僕と姉との子育てで、行きたがっていた二人での旅行を断念していた。でも、末っ子の僕はもう17歳。一人で留守番くらいできる。
……何ていい息子なんだ!! こんな親想いの息子がどこにいるんだよ!!
「えー、じゃあ泊まってくよ。キー君の両親がいないのならいいよね。」
「なに言ってんだよ! つうか、お前のお母さんが許さないでしょ。」
「これがね、うちの両親は親戚の集まりでいないのよ! 代わりにお婆ちゃんが面倒見に来てくれてるの。」
そう、こっちを振り返りながら悪い顔をしていた。「何て女だ」そう思った。
追い出したら、後日両親からガミガミ言われそうだし。一晩泊めても親は笑顔で「良かったね。」って言うだろうしさ。
まあ、良いのかな。ただ、僕の理性が保つかどうか、それが1番の懸念事項だけど……。
「昼何食べたい?」
僕は簡潔に彩白に聞いた。
「えっ、キー君料理できるの?」
「ボチボチかな。人並み以下くらい。」
「料理中に、実験に失敗した博士みたいに黒焦げになってそう……。」
そう彩白は笑っていた。
あの、爆発して顔とか髪の毛が黒くなるやつだろ? よくコメディ系のやつである、あれ。
「何て酷いことを……。僕に料理の才能がないって言いたいの?」
「そうね。君にはやらせたくない! だから私が作ります!」
「はえ? どうしたの、いきなり。」
「いやー、キー君にやってもらうの怖いから、私がやろうかと。」
おいおい、お前に人の心はないのか!!
「彩白さんや、僕の心を傷つけすぎじゃありませんかね……?」
「まあ、事実だし。それにさ、最近助けてもらってばっかだったから恩返しって事で。」
「ん? 僕なんかしたっけ?」
「旅行行った時に何かと助けてくれたじゃん!! あれの恩返ししたいなって。」
「別に恩なんか返さなくて良いよ。当然の事をしただけだから。」
というか、今の今まで忘れていたなんて、口が裂けても言えない……。
「良いの! 私がそうしないと気が済まないから!」
そう言って彩白は僕のベッドから起き上がると、下に降りていった。
「彩白ー! 買い出し行かないと食材ないよー!」
「分かった、じゃあ買いに行こー!」
そう言って僕らは近くのスーパーに向かって歩き出した。
なんだろうこうしてると同棲したカップルのように感じる。
流石に言葉にするのは憚られたが、道中での楽しい雰囲気はそれを連想させるだけの力があるように感じた。
「昼何にする?」
「逆に彩白は何作れるの?」
「まあ、大抵のものは一通り作れるよ!」
「何その料理スキルの高さ……。花嫁修行も万全って感じだな……。」
「お母さんに仕込まれてさ。幼稚園の時から包丁持たされてたから。」
彩白ママすごいな。5、6歳の子供に刃物を持たせるって、相当厳しいんだろうね。
「……なら、オムライスは作れますかね。彩白氏は……。」
「……任せておくんなさい。絶品に仕上げて見せましょう……。」
「それは頼もしいですな~、彩白氏は!」
「カッカッカッ! 大船に乗ったつもりでいなさいな!」
そんなふざけ合いを挟みつつ、食材をカゴに詰めていく。
「ねえ、オムライスに納豆とか入れる?」
「入れるかー!! 早く戻してきなさい!」
「じゃあ、これは?」
今度は何だ? えっと…………炊き込みご飯の素、うん……。
「要らんよ!! つうかさ、入れて見たら美味しそうな気もして、ツッコミずらいんだよ……。」
「あっ、確かにね……。そこは反省しないと……。」
どんなとこ反省してんだよ……。
「いいから、早く買い物終わらせるぞ。」
「えー、折角ボケる良い機会だったのに……!」
やめてくれ、僕の体力が無くなるから。
そんなボケとツッコミの攻防もあって、僕らは家路に着いた。
その間も、絶え間なく笑いが起こっていたのだった。
僕は漫画に没頭する彩白にそう告げた。今日から二日間、両親は旅行に行っている。
なぜ息子を置いていったのか。別に毒親とか、仲が悪い訳でもない。単純に僕が「言ってこい!」と勧めたのだ。
昔から僕と姉との子育てで、行きたがっていた二人での旅行を断念していた。でも、末っ子の僕はもう17歳。一人で留守番くらいできる。
……何ていい息子なんだ!! こんな親想いの息子がどこにいるんだよ!!
「えー、じゃあ泊まってくよ。キー君の両親がいないのならいいよね。」
「なに言ってんだよ! つうか、お前のお母さんが許さないでしょ。」
「これがね、うちの両親は親戚の集まりでいないのよ! 代わりにお婆ちゃんが面倒見に来てくれてるの。」
そう、こっちを振り返りながら悪い顔をしていた。「何て女だ」そう思った。
追い出したら、後日両親からガミガミ言われそうだし。一晩泊めても親は笑顔で「良かったね。」って言うだろうしさ。
まあ、良いのかな。ただ、僕の理性が保つかどうか、それが1番の懸念事項だけど……。
「昼何食べたい?」
僕は簡潔に彩白に聞いた。
「えっ、キー君料理できるの?」
「ボチボチかな。人並み以下くらい。」
「料理中に、実験に失敗した博士みたいに黒焦げになってそう……。」
そう彩白は笑っていた。
あの、爆発して顔とか髪の毛が黒くなるやつだろ? よくコメディ系のやつである、あれ。
「何て酷いことを……。僕に料理の才能がないって言いたいの?」
「そうね。君にはやらせたくない! だから私が作ります!」
「はえ? どうしたの、いきなり。」
「いやー、キー君にやってもらうの怖いから、私がやろうかと。」
おいおい、お前に人の心はないのか!!
「彩白さんや、僕の心を傷つけすぎじゃありませんかね……?」
「まあ、事実だし。それにさ、最近助けてもらってばっかだったから恩返しって事で。」
「ん? 僕なんかしたっけ?」
「旅行行った時に何かと助けてくれたじゃん!! あれの恩返ししたいなって。」
「別に恩なんか返さなくて良いよ。当然の事をしただけだから。」
というか、今の今まで忘れていたなんて、口が裂けても言えない……。
「良いの! 私がそうしないと気が済まないから!」
そう言って彩白は僕のベッドから起き上がると、下に降りていった。
「彩白ー! 買い出し行かないと食材ないよー!」
「分かった、じゃあ買いに行こー!」
そう言って僕らは近くのスーパーに向かって歩き出した。
なんだろうこうしてると同棲したカップルのように感じる。
流石に言葉にするのは憚られたが、道中での楽しい雰囲気はそれを連想させるだけの力があるように感じた。
「昼何にする?」
「逆に彩白は何作れるの?」
「まあ、大抵のものは一通り作れるよ!」
「何その料理スキルの高さ……。花嫁修行も万全って感じだな……。」
「お母さんに仕込まれてさ。幼稚園の時から包丁持たされてたから。」
彩白ママすごいな。5、6歳の子供に刃物を持たせるって、相当厳しいんだろうね。
「……なら、オムライスは作れますかね。彩白氏は……。」
「……任せておくんなさい。絶品に仕上げて見せましょう……。」
「それは頼もしいですな~、彩白氏は!」
「カッカッカッ! 大船に乗ったつもりでいなさいな!」
そんなふざけ合いを挟みつつ、食材をカゴに詰めていく。
「ねえ、オムライスに納豆とか入れる?」
「入れるかー!! 早く戻してきなさい!」
「じゃあ、これは?」
今度は何だ? えっと…………炊き込みご飯の素、うん……。
「要らんよ!! つうかさ、入れて見たら美味しそうな気もして、ツッコミずらいんだよ……。」
「あっ、確かにね……。そこは反省しないと……。」
どんなとこ反省してんだよ……。
「いいから、早く買い物終わらせるぞ。」
「えー、折角ボケる良い機会だったのに……!」
やめてくれ、僕の体力が無くなるから。
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