特進クラスのふざけかた

やすを。

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25話 夜のいい雰囲気

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 昼食を食べ終えて、また各々の時間が始まった。

 正直彩白の料理のレベルに驚愕した。綺麗に包まれたケチャップライスは、口に運んだ瞬間に綺麗なハーモニーを奏でていた。

 「凄いな!!」

 「ふふーん……。私の手にかかればこんなもんよ!!」

 そう得意げな顔になっていた。それでも、僕がその後にツッコまなかったのは、左手にある絆創膏を見たからだった。

 「ご馳走様ー!」

 「うわー、綺麗に食べたね。米一粒も残ってない。」

 「美味しかったからね。残すのも勿体無いし。」

 「ふーん……、たまには良いことするじゃん!!」

 「何で上から……?」

 まあ楽しそうだし、いっか。見てて嬉しくなってくるしさ。

 僕はそう考えながら、洗い物をしていた。元々その約束で、彩白は一足先に部屋に戻っていた。

 午後の時間も、お互いが好きなように使っていた。僕はこの時間に漫画を読み、彩白は決めた分の勉強をこなしていた。

 無理に話すことはしない。思いつきで話しかけて、すぐに終わる事もあれば、長続きする事だってザラにあった。

 多分居心地がいいのだろう。僕はこの雰囲気が好きだった。変に気を使う事なく、黙っていても気まずくならない。

 もしかして、最強女子なんじゃないかと思いさえした。

 「先風呂入ってよ。」

 「あーうん。じゃあ先もらうね!」

 彩白はそう言ってお風呂場に向かった。夕食を済ませ、2時間くらい経った頃、そろそら風呂に入ろうということになった。

 「ちゃんと温まってこいよー!」

 「言われなくてもそうするよー!」

 僕は苦笑した。

 少し経った頃、静寂に包まれた家の中で、シャワーの音が響いた。男たるもの、反応しないはずがなかった。

 男って、こういう時に不利だよな……。反応があからさまに体に出るんだもん。隠そうと思っても、意識して余計に悪化するんだよ。

 そして、無意識に彼女のあれやこれやを想像する自分がいた。気づくたびに頭を振って、我に返るようにしていた。

 頼むから早く上がってきてくれ……。そうだ!! 違うことしていればいいんだ!

 僕はノイズキャンセリングの機能が凄いイヤホンを取り出して、両耳につける。そして、音楽をかけベッドの上で惚けていた。

 しかし何の効力もなかった。確かに音が聞こえなくなり、体の反応も薄れた。でも、妄想がより酷くなってしまった。

 僕はすぐにイヤホンを外し、ケースにしまってベッドに潜り込んだ。

 悶々とするまま数十分、ようやく階段から足音が聞こえた。

 「お風呂いいよ~。いや~最高だね!!」

 「……あっ、はい。」

 「あれ、もしかして私がお風呂入ってるって考えて、興奮しちゃった?」

 「……うん。」

 僕はそう小さく言った。そして彩白は大笑いした。

 「あんた……、顔真っ赤にして、可愛いね……!」

 そうお腹を抱えながら、転がり回っていた。

 「……すぐに入ってきます!!」

 僕は逃げ出すように、下着とバスタオルを持って下に降りた。

 「ごゆっくり~……。あー、面白いわ……!」

 その声を聞き流して、僕はお風呂に入った。色々思い出して、恥ずかしくなりながらも、湯船で疲れを癒していた。

 「彩白はここで寝て。」

 「えっ、じゃあキー君はどこで寝るの?」

 「ソファで寝るよ。流石に男女一緒で寝るのは、色々まずいでしょ。」

 「別にいいんじゃない? だってキー君私のこと襲う勇気なさそうだし。」

 「……無いし、やらないよ。」

 「なら、一緒の部屋でいいんじゃない?」

 「そうは言っても、ベッド一個しか無いし、無理じゃないか?」

 「一緒のベッドで寝ればいいよ!」

 「えっと……それガチで言ってる?」

 「もちろん。ほら、早く入って! 電気消すよー!」

 何でノリノリなんだよ。つうか、僕に信頼おきすぎじゃないか? どうすんだよ、襲わないが嘘だったら。

 「おやすみー!」

 「おやすみ……。」

 僕らは背中を向けて寝た。少し距離をとり体が触れないように気を遣った。

 寝れない……!! もう布団に入って1時間くらいかな。背中から寝息が聞こえるし、羨ましいよ。

 悶々としている中で、僕は冴えた目に睡魔が襲ってくる事を願って、待っていた。

 「ねえ、キー君。」

 「あれ、寝てたんじゃなかったのか?」

 「今起きた。」

 「なんかごめん。」

 「別に謝ることないよ。それよりさ、もっと近くに行っていいかな?」

 「い、良いよ。」

 僕は彩白にそう言った。

 「じゃあ失礼して。」

 「……っ!!!」

 僕は背中に何か柔らかな感触がした。

 「何してるの?」

 「抱きついてる。あの時の心地よさが忘れられなくてさ。こっちの方が寝れそうだから。」

 僕の腹筋あたりに、彩白の両手がある。そして背中に顔と柔らかい部分がついていた。

 僕はこの時に覚悟した。『あー、徹夜だなこれ』と。

 だって彩白が離してくれそうな気配がないもん。少し顔見ると、気持ち良さそうに寝てるしさ。

 僕は、その体勢のまま日が昇ったのを確認したのだった。

 

 

 






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