特進クラスのふざけかた

やすを。

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31話 文化祭ガチ夫婦(仮)

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 「何で、許したの?」

 「あんな下から来られちゃ、責めるにも責めれないよ。」

 「はーん……? 君にも人の心があったとはね……。」

 「何だその、疑わしいものを見る目は……。」

 まったく、僕のことを何だと思ってるんだよ、彩白は。僕だって、一人の人間だっつーのに。

 何であそこまでされた人にあんな事を言ったのか、それは僕にも分からなかった。

 多分同情の念があったほだと思う。これからの事を考えると、少し不憫に感じた。

 僕らが1番の被害者で、迷惑は計り知れないほどかけられたにも関わらず、そこで手を緩めてしまった。

 「優しいね、君は。」

 「甘いだけだよ。そこで一歩出ない僕は、計画を完遂出来なかった、無責任な首謀者だ。」

 ここまで色んな人の期待を背負って、復讐の為に証拠を集めて。自分の計画が成功するように、奔走した。

 でも、最後に情けをかけた。多分やり用は他にもあった。警察の介入にまで話を発展させる事だって可能なはず。

 「優しいよ。私だったら、滅多打ちにしちゃうもん!」

 「元気に言う事じゃないよ、それ……。」

 「だってムカついたんだもん! 私達が何であんな事されなきゃいけないのか分かんないし!」

 生徒や保護者、先生に一般人まで様々な人が行き来する廊下。僕らはシフト終わりに徘徊していた。

 その中で、彩白はそいつらの愚痴を吐き出していた。

 「あー、スッキリした……!」

 「なあ、何でコイツがヒロインなんだ?」

 「どうしたの、唐突に。」

 「だって、こんな品のないヒロイン嫌だ!!」

 「なにを!? 君にだって品の欠片もないじゃん!!」

 僕らは少しの間廊下に立ち止まり、無駄に睨み合っていた。醜ったらありゃしない……。

 「……5番勝負でケリをつけようじゃない!!」

 「……おう、良いぞ!! 負けた方は、夕食後奢りね!」

 「……男に二言はないね?」

 「ああ、無いとも!!」

 「やってやろうじゃない。……見えるよ、キー君が夕飯を奢る未来が……。」

 「……ふっふっ……ハハハハ……!」

 「何笑ってるのよ……。」

 「寝言は寝ていって欲しいね!」

 「何を!?」

 「僕が負けるなんて、万に一つもあり得ないんだよ!!」

 「……言うじゃない。でも果たしてそれが、終わった時にも言えるかな?」

 「……そっくりそのままお返ししよう。ああ、そこに跪く彩白が目に浮かぶ……。」

 そんな不毛な話がこの後も続いた。そして、ある時に彩白は気づいた。

 「……ねえ、これいつまで続けるの?」

 「……僕も早くやめたい……」

 「……早く行こう……」

 「……だな……」

 随分前から死にたくなってたよ。周りからの視線は痛いし、何やってんだろってずっと疑問だったし。

 でも、ここで引き下がったら男として終わり。続けるしか無かったんだよ!!

 まあ、肝の据わった男なら、キッパリ止めるだろうけどね。そこは僕の弱いとこだ。

 それから、肩がぶつかるかどうかの距離感で、僕らは横並びに歩いていた。

 「ここよ!! 勝負事ならここが一番だと思うのよ。」

 「縁日か……」

 「あれ、もしかして自信ないのかな?」

 そう、煽りながら彩白は言った。

 「おいおい、誰がそんな事言ったんだよ! 彩白が可哀想にならないかどうか考えてたんだ!」

 「ふーん……。負け犬の遠吠えにならないと良いね……!」

 「そっちこそな!!」

 このノリ疲れるんだけど……。声張らなきゃいけないし、ずっと喧嘩腰でいなきゃいけないから。

 「最初は、的当てからね。」

 「ああ。つうか懐かしいな。」

 昔、近所の神社の夏祭りでやったきりだな。

 先行は彩白。10球の中で何点分の的に当てられるのか。

 「まあ、この位が妥当かな。」

 そう言って得点を見ると、MAXの8割の点数を叩き出していた。聞いた話だと、最高点数らしい。

 「……彩白が運動神経良いの忘れてた……。」

 「さあ、キー君の番だよ?」

 得意げな顔してやがる……。見とけよ、彩白!!

 そして、僕はセットポディションに付き、投球を開始した。

 「……クッソ、7割かよー!!」

 「ふふーん! これで私が1勝だね……!」

 やばい今月ピンチなのに、奢りは流石にマズイ。

 しかし、運営する生徒たちの反応はこうだった。

 「コイツらバケモンだぞ。二人とも最高点数ランキング1位と2位。」

 「やべーよ。流石、特進クラス。俺らとはステージが違うな。」

 そんな言葉のやりとりがあった事を、僕らは知らないのだった。
 

 
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