特進クラスのふざけかた

やすを。

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33話 ベタってやつ?

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 「とうちゃーく!!」

 「テンション高いな……。どうしたんだよ。」

 「いや……キー君と遊びに来れるのが、なんか嬉しくてさ!」

 「何だそれ。別に一緒に遊びに行った事あるじゃん。特別な事ないよ。」

 「ううん、違うよ?」

 「えっ、何が違うんだよ。」

 僕がそう言うと、小声で何かを言っているようだった。

 「ねえ、聞こえなかったんだけど!!」

 「良いよ、聞こえなくて。それよりさ、早く乗ろうよ!!」

 「なあ、教えてくれよー!」

 まったくそれくらい教えてくれればいいのに……。何で隠すんだよ……!

 「……んで、これからどうするんだ?」

 「……なあ、キー君。」

 彩白は声色を変えて、髪を掻き上げると言葉を続けた。

 「……遊園地に来たらまず何に乗るのかな?」

 「……やっぱ、コーヒーカップとか?」

 僕はそう言うと、彩白は『チィチィチィ!』と右手の人差し指を揺らして、こう言った。

 「……違うよキー君……やっぱり初めはジェットコースターでしょ!!」

 「……何でそんなカッコつけて言う必要性があるんだよ……」

 彩白は笑いながら、1番の名物に連れて行った。

 「ま、待って……まずはさ、肩慣らしで違うとこ行こうよ……。」

 「えっ、もしかしてさ……」

 彩白は少し嘲笑うようにして、僕にこう言った。

 「……絶叫系、嫌いなの?」

 「えっ、そ、そんな事無い……事もない……。」

 「やっぱね……よし!! じゃあ絶対乗ろう!!」

 「……何でそうなんだよーー!!」

 僕の声はその場にいた人全員の耳に届いていたようだった。皆んなの視線が僕に集まる。

 は、恥ずかしいな……。とりあえず穴があったら入りたい……。

 「何でもいいから、早くこの場を離れよう……。」

 「よし、じゃあ決まりね~!!」

 「お、おう…………」

 そして僕らは逃げるようにしてその場から去った。

 それから彩白の言っていた、最恐の絶叫アトラクションに1時間並び、乗車した。

 そして乗った後の約4分間の記憶が、全て飛んでいった。吐き気も伴い、その時間が地獄と化していた。

 「ごめん、キー君。そこまで苦手だとは思ってなかった!」

 「……彩白……今話しかけないで……朝食べたやつが出そう……」

 少し気を抜いたら、胃の内容物が全部出るな……。どうしようか、とりあえずトイレ行こうかな……。

 「……ごめん、ちょっとの間ここにいてもらってもいいか?」

 僕がそう言って立ちあがろうとすると、隣の女子が僕の服の裾を掴んで。

 「ねえ、私も付いて行っていい?」

 「えっ?」

 僕は彩白の言葉に狼狽えた。でも、その気持ちが少しわかったと思う。

 「……うん。一緒に行こうよ。」

 「……ありがとう。」

 あの時のヤンキーが、ここまでトラウマになってるとは思わなかったな……。

 「……とりあえず、ここで待ってて。」

 「う、うん。早めに戻ってきてよ?」

 「……ああ。すぐ戻ってくるよ。」

 僕は足早に用を済ませ、トイレ前の待合室に戻った。ジェットコースターの後遺症が残っているけど、何とかなりそうな気がした。

 「よっしゃ、次行こっか。」

 「そうだね!! じゃあお化け屋敷行こー!!」

 なんというか、情緒不安定というか。このV字回復には、流石の僕も呆気に取られた。

 「えっ待って、怖いの苦手なんだってー……!!」

 僕の声が彩白に届くことはなく、そのまま連れて行かれてしまった。

 そして終わった後、再び吐き気が催してきた。これに関しては手遅れで、トイレで今朝のご飯を出してしまった。

 それでも、彩白が笑顔だから僕はそれだけで、満足だった。

 それから、幾つかのアトラクションを楽しみ、昼食を平らげ間食も食べながら、ショーも見て回っていた。

 彩白は終始楽しそうだった。

 子供のようにはしゃいで、変にボケて、僕を連れ回して。

 僕はその表情を見れただけで、今日来た甲斐があったような気すらした。

 最後に、僕らはこれに乗った。

 「いつぶり? 観覧車乗るの。」

 「小学生以来かな。結構騒いだの覚えてるよ。」

 従兄弟とか、おばあちゃんたちと遊園地に来た時に、乗って以来観覧車はご無沙汰だった。

 僕らが乗り込むと、それはゆっくりと高度を上げていった。

 「綺麗だね~。夕陽が見えるよ。」

 「ああ、そうだな。」

 僕は彩白と視線を合わせて、同じところを見ていた。僕も同感だった。

 「キー君、高所恐怖症じゃないんだね。」

 「うん。ジェットコースターの浮く感覚が嫌なだけ。あと、ビビり。」

 「うわっ、絶対女子にモテないじゃん……!」

 「えっ……なんでそんなに引くの?」

 「引いてないよ? 馬鹿にしてるだけ!」

 「それ、元気に言う必要ない……!」

 まったく、怖いものは人それぞれでしょ……。

 「私さ、こういう景色好きなんだよね。」

 「ふーん。」

 「キー君はどんな景色が好きなの?」

 ん……あんまり考えたことなかったな……。周りに綺麗な景色無いし、旅行もほとんど行かないし。

 「まあ、彩白と見る景色ならなんでも好きかな。」

 「ふーん。」

 「ねえっ……」

 そして彩白は違う話に持っていき、観覧車から降りるまで、終始ツッコんでいたような気がする。

 そして帰り道、少し名残惜しさが残る中、僕らは遊園地を後にした。

 「また来ようね、今度も2人で。」

 「だな。なんだかんだ、あっという間だったし。」

 僕らはそうやって、また2人で遊びにくる約束を交わすのだった。

 

 

 
 

 






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