特進クラスのふざけかた

やすを。

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35話 不安が積もり積もる

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 「ねえ、あの2人大丈夫かな……?」

 飛行機の中、修学旅行の行きの便。僕らが沖縄に向かうために移動中だった。

 「分からないな。あの後も度々喧嘩してるようだし。治ればいいけど。」

 「そうね……原因はなんなの?」

 「さあな……? 聞いても教えてくれないだろうし、正直聞きたくない。」

 「そこはさ、キー君の行動力の見せ所でしょ!! 私を森林の中から助けてくれたみたいにさ。」

 「それとこれとは話が違うだろ!! 今回はデリカシーの問題だよ!!」

 それに僕らが介入すると、更にややこしくなるだろうし。放っておくのが1番だよ。

まあ、接し方に困るはあるけど、そこは今まで通りの感じでいいと思う。

「……でも大丈夫かな……初日、2日目は全体での観光地巡りだからいいけど。」

「3日目の判別自主行動だろ? そこなんだよな……このままだったら、すげー気まずい……」

僕らは無意識に前の席へと視線を移す。そこには気まずい雰囲気漂う、4つの席があった。前のは葉月と紫音、後ろに拓人と真斗という席配置だった。

僕らはトイレに行くついでに話しかける事にした。

「どう、楽しんでるか?」

「まあ、ぼちぼちかな……」

「俺もそんな感じだよ……」

「そっか……。」

気まずい!! 気まずすぎる!! 僕にはどうにも打開できそうにないぞ、これは!!

「どうだった様子は?」

 彩白はそう小声で聞いてきた。

「やばいって。マジで雰囲気氷だった……」

 「うわっ……移動中って修学旅行の醍醐味の一つでもあるのに……」

 「言ってやんなって……」

 流石にあの2人が不憫に思えてくるからさ……。それにしても酷い巻き込まれからだよな……。

 そんな調子で僕らはそこに視線を注いで、コソコソ話をしながら、残りの時間を過ごしていた。

 そして沖縄に着いて、ホテルに荷物を置き、1時間後に再集合。それから手配したバスに乗って、半日かけて計画通りのコースを回っていた。

 「やっぱり、ずっと気まずいままっぽいね。」

 「ああ……。なんか各所で喧嘩してたみたいだし、ちょっとピンチかもな……」

 「あんまり、キー君の言葉には賛同したくないんだけどさ……」

 「何でだよ……!!」
 
 そこでボケる必要ないのに……。まったく彩白らしいな……。

 「何とかしないと、本当にマズイんだよね……これまでずっと一緒だったのにさ……」

 そっか、ボケじゃなかったのか……。そんな場合でもないようだし、僕から見てても同感だったな。

 「ちょっと、やってみるか……」

 「えっ、何を……?」

 「まあ、見てれば分かるよ。」

 そんな会話をして、僕らはホテルに帰って行った。もう陽も落ちて暗い空の下、夕食の時間を迎えていた。

 やはり、僕が前日に言った言葉が残っているようで、僕らの前では一切喧嘩をしなかった。ただ集合の時に、紫音の目が赤かったり、真斗の頬が若干赤みがかっているのが目に入った。

 んじゃ、そろそろ始めますか……。

 先生がご馳走様の挨拶をして、僕は早めに自分の部屋に戻った。そして僕は計画していたあれを実行に移す機会が訪れるようだ。

 「……こんなとこに呼び出して、何の真似だよ。」

 「別に。話がしたくてさ。」

 「話なんて、別に部屋でもいいじゃんかよ!!」

 「いいや、ここじゃないと邪魔が入るんだよね。」

 「えっ、本当に何の話すんだよ……」

 真斗は警戒心を明からさまに出して、僕にそう言った。でもそんな事どうだって良かった。

 「とりあえず、座れよ。別に僕は何かする気は一切ないから。」

 「怪しすぎんだよ……。」

 空には少々雲がかかっていた。それは月を隠すには十分すぎるほどだった。

 「まあ、何の話をしたいのか、ぶっちゃけ答えは出てんだよ。でもよ、お前なら分かってるはずじゃないのか?」

 「ああ、おおよその見当くらいはついてるよ。でも、所詮は概ね。全てじゃない。」

 「ったく、離さなきゃいけないっぽいな……。」

 真斗は呆れながらも本心を話してくれていた。僕は黙ってそれを聞いていた。

 「そんなとこだ。で、お前の予想と外れていた部分はあったのか?」

 「誤差の範囲内かな……。まあ、でも仮定が確信に変わったから、聞けて良かったよ。」

 「そっか。それなら話した甲斐があったよ。どうせこの後紫音にも話聞くんだろ?」

 「まあな。」

 「しかも、何となくの予想もついてんだろ?」

 「いいや……。これが全く見当もつかない状態でな。」

 「お前がそうなのか……。まあ俺も同じだからな。あんまり人のことは言えないんだわ。」

 真斗はそう言うとにこやかになって、先にホテルの中に戻って行った。

 
 これで少しは緩和できたかな……。後は紫音か……。これまた厄介なやつが相手だな……。

 僕はそうやって少しだけ肩を落とすのだった。

 

 
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