特進クラスのふざけかた

やすを。

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37話 亀裂が穏やかに

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 3日目。とうとうその日がやって来た。昨日の仲直りで、僕らの班の雰囲気もさらに良くなって、今日の日程も楽しく過ごせそうな気がしていた。

 「……よし、じゃあ楽しく行こう!!」

 真斗は少し遠慮がちにそう言った。みんなも若干の戸惑いを抱いていて、紫音に限って言えば、ノリ切れない様子だった。

 でも、それでも真斗の取り返そう感は感じられた。それだけ責任を感じている裏返しとも取れる。

 自主行動を行う場所まではバスで移動する。昨日のような険悪な雰囲気は、見る影もなく消えていた。

 「あの2人、仲直りしたみたいだね。」

 「ああ。よかったよ。いつもの2人に戻ってさ。」

 彩白はそう言うと、探偵気取りの表情と口調に変わった。

 「それで? キー君は、昨日の午後9時45分頃どこで何を?」

 彩白ニヤけながら、尋問のようなものを始めた。

 「……ホテルの外の暗がりにあるベンチで、2人に話を聞きました。」

 僕はため息をつきながら彩白の質問に答えていく。正直詮索されるのが少し恥ずかしかった。

 「もしかしてそこで、あなたは犯行に及んだのね?」

 「まあ、そうなるよな……」

 僕が、呆れながらそう言うと、彩白は僕の右手を持って。

 「えー……午前8時30分23秒……春森輝波容疑者確保……!!」

 おいおい、探偵ごっこじゃなくて、警察官ごっこしてたのかよ……。

 「何で僕が確保されなきゃいけないんだよ……」

 「だって、そこで色々やったんでしょ!!」

 彩白がそう言うと、葉月に聞こえたようで、座席の間から顔を覗かせた。

 「え~輝波。紫音に何したのよ~!」

 「おい葉月、変に首突っ込むなよ……」

 「えっ、紫音に何しようとしたの?」

 彩白はマジな顔をして、僕にそう問いかけた。

 「……なあ、何で葉月を信じるんだよ……」

 「だって状況証拠がばっちりだもん!! 白状しなさい!! 紫音に何したのよ!!」

 僕は葉月の隣に座る紫音に助けを求めた。

 すると、葉月が顔覗かせているところの下から紫音も顔を見せた。

 「……輝波にさ、色々やられたの……あんな事やそんな事までさ……」

 紫音はそう泣く真似をしながら言った。

 「キー君!! 何してんのよ!! 最悪でも屋内でやらないと、紫音が風邪引くでしょ!!」

 「そこかよ!! つうか僕、紫音と話してただけなんだけど!!」
 
 「嘘つき! 紫音が嘘つく事ないもん!! 付いてるとしたら、キー君しかいないもん!!」

 「……僕への信用ゼロなの?」

 僕は半ば諦めたようにそう言った。

 「でさ、輝波はどんなプレイを紫音としたの?」

 「だから、話しただけなんだって!! そういうエロい方に持ってこうとすんな!!」

 「だって、それが私のキャラだし……作者に言ってよ。」

 急にメタいこと言うなよ。もっとまともな返しあっただろ。

 そんな会話を僕らはして、なんとか真実をみんなに伝えることができた。

 今回の件の発端は、紫音が家族への手紙を白紙で出そうとしていたことだった。

 そこに反応した真斗と紫音が口論になったと言う訳だ。

 どっちが正しいとか間違ってるとか、そんな単純な話じゃない。

 ただ、2人の意見の相違がもたらした喧嘩だった。

 正直健全な喧嘩で、意見のぶつかり合いだったから友達としては最高なのだと思った。

 それからバスは目的地に到着し、自由行動が開始された。

 僕は少し驚いたのだが、紫音と真斗の関係性が既に戻っていた。

 少しくらい気まずさが残っていてもおかしくないような場面なのにも関わらず、いつも通り会話をしていた。

 「なんかキー君ってさ、行動力すごいよね。」

 「そうか?」

 「うん。こういう時にもさ、解決のためにすぐに動くしさ、人のピンチの時には必ず駆けつけるよね。」

 「そりゃ、見過ごせないからな。」

 沖縄の有名な繁華街を彩白と横並びで歩いていく。人の往来が激しく、人の量が多かった。

 「私、キー君のそういうところが好きだなって思うよ。」

 「えっ?」

 「だってすごいじゃん!! そうやって人のために動けるって!! 尊敬するよ!!」

 僕的には、そうやって言葉にできる彩白が凄いよ。

 そして、僕らは笑顔を絶やさずに自主行動を過ごしていった。

 

 

 
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