囁き少女のシークレットボイス

うみだぬき

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59話 足先に触れたものの正体

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 菖蒲の水泳指導の末、顔に水をつけながら目を開けることが当たり前にできるようになった頃。
 響は次の段階へ進もうとしていた。

「次はそこに掴まりながらバタ足です!」
「足離すのはまだ怖いんだが」
「私が支えますから、大舟に乗ったつもりで任せてください!」

 菖蒲の体格的に、イカダぐらいの支えを頼りにバタ足を始める。

「もっと勢いよく足をバタバタさせてくださーい」
「…もう…きっつぃ」

 響の沈みそうになる腹部を、菖蒲が優しく支え、限界を超えるまでバタ足をさせられた。

「一分休憩です!」
「スパルタすぎる…」

 どこまでも青く、その奥から照らす太陽から目を逸らしながら身体を休める。
 その横で菖蒲はプールに足を入れ、ちゃぷちゃぷと水遊びを楽しんでいた。

「もう一分経ちましたね、続きを始めます!」

 次は支え無しでのバタ足をすることになり、一抹の不安を抱いていたが、以外にもしっかりと足を動かすことで、身体は浮力を持つ。
 しかし、泳ぎが得意な菖蒲からすればまだまだらしく、響にアドバイスを送る。

「響さん足をもう少し伸ばしてください!私が響さんの後ろで確認をするので、気合い入れてくださいね!」

 菖蒲は響の足元で浮き具を腕に着けながら、水の中で指南をする。
 響はアドバイス通り、今までよりもめいいっぱい足を伸ばした。

「っひゃあ!」

 響の足先に柔らかい感触が伝わった瞬間、菖蒲が甲高い声を上げる。
 響は何事かと振り返ると、浮き具を着けながら水面に半分顔を出す菖蒲が目に入った。

「突然声上げてどうしたんだ?」
「…響さんは何でだと思いますか?」
「うーん…溺れかけたとか?」

 菖蒲は続いて違った趣旨の質問を投げかける。

「さっき足に触れませんでしたか?それはなんだったと思いますか?」
「さっきのか、弾力は少なかったけど柔らかさはあったし…こんにゃくとかか?」

 すると菖蒲は、ゆっくりと陸にあがり浮き具を外すと、響目掛けて飛び込んできた。

「どこのプールにこんにゃくが浮いてるんですか!!」
「っうおぉ!!」

 高い水しぶきが上がり、水の中で怒りを露わにする菖蒲が目に入った。
 水の中で、先程の感触が脳裏を過ぎる。
 足を伸ばした時に触れた柔らかいもの、後ろには菖蒲が水中を浮かんでいた。

「っぶぼぼ!!」

 水中で点と点が線で繋がり、先程の感触の正体の検討がついた。
 水中から顔を出すと、菖蒲がプールのレーンを区切るコースロープに掴まりながら、響を睨みつけていた。

「菖蒲さん…」
「なんですか響さん」
「さっきのはもしかして…」

 菖蒲は響に大波の水しぶきをかけながら呟く。

は知らなくていいですっ!!」

 今日だけでだいぶ水に揉まれ、水に対する恐怖心は和らいだ気がした。

 休憩も兼ねて二人分のアイスを買いに行った響は、片方のアイスを菖蒲に献上する。

「お納めください」

 菖蒲は言葉を発さずにアイスにかじりつく。
 表情は険しく、まだまだ怒りは収まっていなそうだが、足先をクルクルと回していて、多少怒りは収まっているのかと安堵する。
 アイスを食べきった菖蒲は、響から顔を逸らしたまま話しかける。

「…そういえばさっき少し泳げてましたね」
「あぁ、菖蒲のおかげで初めて泳げた」

 菖蒲は上半身だけ振り返り、顔を朱色に染めて口角を上げる。

「なら良かったですっ!」

 菖蒲の赤い顔と空の青さが対比となり、より綺麗に見えた。
 そんな菖蒲は口をモゴモゴさせながら、突飛な質問をする。

「…他意は無いですけど、響さんは大きい胸と…小さい胸、どちらが…す、好きなんです…?」

 男にとってこの質問は、必ず敵を作ってしまう難問だ。
 オブラートを破り、言うのであれば菖蒲は小さい側、答え方によっては万死に値する。
 響は迷いに迷い、偶然だが完璧な答えを捻り出す。

「好きになった子ならサイズは関係ないっ!」
「ふーんっ」

 菖蒲は響の顔と、自分の胸部を交互に見つめて、視線を水面に向けながら囁く。

「なら今はまだ、現状維持でいいですっ」

 何故か分からないが、菖蒲の中の響に対するロリコンメーターが高まった気がする。
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