5 / 26
5話
しおりを挟む
「……これが、“皮肉屋令嬢”の反撃か」
ノア=グランディスは、差し出された文書に目を落としながら呟いた。
それは、ヴェルディーユ侯爵家から提出された“新財政改革案”。
華やかさはなく、むしろ味気ない。だが、その中には政権を根底から揺るがしかねない要素が詰まっていた。
「税の配分見直し、神殿への補助金制限、そして王宮財務の可視化……」
「これを通せば、“奇跡”の演出にも金が使えなくなりますね」
側近の声に、ノアは小さく頷く。
「……さて。兄上はどれほど理解しているだろうな。この国の“本当の重み”を」
*
一方その頃。
レティシアは王都の一角、ある古書店の裏部屋にいた。
「ここが“アントンの根城”ってわけね」
「見た目はただの本屋でしょう? でも、私の情報はすべてここから流れている」
アントンは棚の奥から、重たい革の帳簿を持ち出してきた。
「神殿と一部貴族の“癒着”の証拠。最近になって急激に増えた寄進金の動きもすべて記録済み」
「これだけ揃えば、王妃が“見て見ぬふり”をする理由も崩れるわね」
「そう。今必要なのは、これを“正しい場所”に投げること」
「いいえ。私は“投げたり”しないわ」
レティシアは帳簿を手に取り、薄く笑った。
「“置いてくる”の。誰もが目にする場所へ。見て見ぬふりが、できないように」
*
そして——翌日。
王宮政庁の掲示板に、一本の書簡が張り出された。
匿名の形式ながら、そこに記されたのは神殿と王太子陣営の金の流れ。
数字と日付と記録。ごまかしようのない“事実”のみ。
ざわつく官吏たち、動揺する若手の貴族たち。
そして、その報を受け取った王妃イザベルは、静かに目を閉じた。
「……レティシア=ヴェルディーユ。あなたはやはり、手強い女」
*
午後の陽光が射し込むヴェルディーユ邸の書斎で、レティシアは紅茶を啜った。
「さて、次の一手は——どう出るのかしら、王太子殿下」
優雅なティーカップの縁から、彼女の笑みが覗いた。
それは、冷たくも確かな、“勝者”の微笑だった。
ノア=グランディスは、差し出された文書に目を落としながら呟いた。
それは、ヴェルディーユ侯爵家から提出された“新財政改革案”。
華やかさはなく、むしろ味気ない。だが、その中には政権を根底から揺るがしかねない要素が詰まっていた。
「税の配分見直し、神殿への補助金制限、そして王宮財務の可視化……」
「これを通せば、“奇跡”の演出にも金が使えなくなりますね」
側近の声に、ノアは小さく頷く。
「……さて。兄上はどれほど理解しているだろうな。この国の“本当の重み”を」
*
一方その頃。
レティシアは王都の一角、ある古書店の裏部屋にいた。
「ここが“アントンの根城”ってわけね」
「見た目はただの本屋でしょう? でも、私の情報はすべてここから流れている」
アントンは棚の奥から、重たい革の帳簿を持ち出してきた。
「神殿と一部貴族の“癒着”の証拠。最近になって急激に増えた寄進金の動きもすべて記録済み」
「これだけ揃えば、王妃が“見て見ぬふり”をする理由も崩れるわね」
「そう。今必要なのは、これを“正しい場所”に投げること」
「いいえ。私は“投げたり”しないわ」
レティシアは帳簿を手に取り、薄く笑った。
「“置いてくる”の。誰もが目にする場所へ。見て見ぬふりが、できないように」
*
そして——翌日。
王宮政庁の掲示板に、一本の書簡が張り出された。
匿名の形式ながら、そこに記されたのは神殿と王太子陣営の金の流れ。
数字と日付と記録。ごまかしようのない“事実”のみ。
ざわつく官吏たち、動揺する若手の貴族たち。
そして、その報を受け取った王妃イザベルは、静かに目を閉じた。
「……レティシア=ヴェルディーユ。あなたはやはり、手強い女」
*
午後の陽光が射し込むヴェルディーユ邸の書斎で、レティシアは紅茶を啜った。
「さて、次の一手は——どう出るのかしら、王太子殿下」
優雅なティーカップの縁から、彼女の笑みが覗いた。
それは、冷たくも確かな、“勝者”の微笑だった。
39
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
「反省してます」と言いましたが、あれは嘘ですわ。
小鳥遊つくし
恋愛
「反省してます」と言いましたが、あれは嘘ですわ──。
聖女の転倒、貴族の断罪劇、涙を強いる舞台の中で、
完璧な“悪役令嬢”はただ微笑んだ。
「わたくしに、どのような罪がございますの?」
謝罪の言葉に魔力が宿る国で、
彼女は“嘘の反省”を語り、赦され、そして問いかける。
――その赦し、本当に必要でしたの?
他者の期待を演じ続けた令嬢が、
“反省しない人生”を選んだとき、
世界の常識は音を立てて崩れ始める。
これは、誰にも赦されないことを恐れなかったひとりの令嬢が、
言葉と嘘で未来を変えた物語。
その仮面の奥にあった“本当の自由”が、あなたの胸にも香り立ちますように。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
敵対勢力の私は、悪役令嬢を全力で応援している。
マイネ
恋愛
最近、第一皇子殿下が婚約者の公爵令嬢を蔑ろにして、男爵令嬢と大変親しい仲だとの噂が流れている。
どうやら第一皇子殿下は、婚約者の公爵令嬢を断罪し、男爵令嬢を断罪した令嬢の公爵家に、養子縁組させた上で、男爵令嬢と婚姻しようとしている様だ。
しかし、断罪される公爵令嬢は事態を静観しておりました。
この状況は、1人のご令嬢にとっては、大変望ましくない状況でした。そんなご令嬢のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる