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12話
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“次代を語る夜会”——その名の通り、王都の歴史に残る前代未聞の集いは、王宮の第三晩餐の間にて開催された。
招かれたのは、貴族、学者、神殿関係者、商会代表、そしてごく少数ながら選出された市民層。
かつて“王族と神殿だけが語る未来”とされてきた国政に、初めて“民意”が組み込まれる場が用意されたのだ。
主催の名は、レティシア=マルグリット=ヴェルディーユ。
その姿が現れた瞬間、空気は変わった。
淡い翡翠のドレス。過度な装飾は排され、凛とした気品だけが際立つ立ち姿。
“悪役令嬢”とも揶揄された彼女が、今や“改革の象徴”として注目される。
「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。立場を越えて語り合うための場として、この夜会を用意いたしました」
一礼と共に、その声が静かに響いた。
第一の話題は、“神殿の役割と透明性”。
第二は、“王政と市政の線引き”。
第三に、“国費の再配分と次世代育成”。
いずれも今まで“語られることのなかった領域”だった。
そして、その中央に立ち続けるレティシアの姿に、人々はある種の威厳と安定を見た。
*
「……ここまでやるとは思わなかったな」
会場の片隅、ノア=グランディスは低く笑った。
彼は今夜、あくまで“聴衆”としてその場にいた。だがそれこそが、レティシアの計算だった。
彼女が表に立ち、ノアが裏で支持する。
「レティシア嬢。貴女はまるで、“次代の中心”にふさわしい者のようですわね」
皮肉交じりに近づいてきたのは、元政敵のひとり、伯爵令嬢エレノア。
かつてアレクシスと聖女リリィを公然と支持していた名門の娘だった。
「そう見えたのなら、努力が報われたということですわ」
「お見事。でも、“あの方”はそれをどう思っているかしら?」
「“あの方”……?」
「ふふ、知らないふりを。第二王子ノア様。あなたが彼に近づいたという噂は、もう王宮でも囁かれておりますわよ?」
レティシアは笑みだけで応えた。
その表情には、動揺も敵意もない。ただ、わずかな余裕だけが滲んでいた。
*
夜も更け、各派の意見が交錯したあと——
「それでは最後に、“この国の未来に必要なもの”を、ひと言ずついただけますか」
司会者の言葉に、ざわつきが広がる。
王宮、神殿、商会、市民、そして——
「ヴェルディーユ侯爵令嬢、最後にお願いいたします」
全ての視線が、レティシアに向いた。
「……私が思うに、この国に今最も欠けているのは“責任”です」
彼女の声は、静かに、しかし確かに空間を支配していく。
「誰もが“誰かがなんとかする”と考え、責任を押しつける。けれど、未来は“誰か”が創るのではなく、“私たち自身”が築くものです」
「だからこそ、私はこうして“舞台”に立ちました。失ったものがあるからこそ、得られた視座がある」
「どうか皆様も、“誰か任せ”ではなく、“私が”と語る勇気を、持ってください」
——その言葉のあと、場に一瞬の沈黙が落ちた。
だがそれは、敬意の前の静寂だった。
次の瞬間、広間には自然と拍手が湧き上がる。
皮肉屋と呼ばれた令嬢が、今や“覚悟”を語る人間として受け入れられ始めていた。
*
その夜の終わり、王妃イザベルは誰にも言わず、つぶやいた。
「……レティシア嬢。貴女が王家の者であったなら、さぞやこの国も安泰だったでしょうね」
それは皮肉ではなく、惜しみと敬意の混じった、ただの独白だった。
招かれたのは、貴族、学者、神殿関係者、商会代表、そしてごく少数ながら選出された市民層。
かつて“王族と神殿だけが語る未来”とされてきた国政に、初めて“民意”が組み込まれる場が用意されたのだ。
主催の名は、レティシア=マルグリット=ヴェルディーユ。
その姿が現れた瞬間、空気は変わった。
淡い翡翠のドレス。過度な装飾は排され、凛とした気品だけが際立つ立ち姿。
“悪役令嬢”とも揶揄された彼女が、今や“改革の象徴”として注目される。
「本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。立場を越えて語り合うための場として、この夜会を用意いたしました」
一礼と共に、その声が静かに響いた。
第一の話題は、“神殿の役割と透明性”。
第二は、“王政と市政の線引き”。
第三に、“国費の再配分と次世代育成”。
いずれも今まで“語られることのなかった領域”だった。
そして、その中央に立ち続けるレティシアの姿に、人々はある種の威厳と安定を見た。
*
「……ここまでやるとは思わなかったな」
会場の片隅、ノア=グランディスは低く笑った。
彼は今夜、あくまで“聴衆”としてその場にいた。だがそれこそが、レティシアの計算だった。
彼女が表に立ち、ノアが裏で支持する。
「レティシア嬢。貴女はまるで、“次代の中心”にふさわしい者のようですわね」
皮肉交じりに近づいてきたのは、元政敵のひとり、伯爵令嬢エレノア。
かつてアレクシスと聖女リリィを公然と支持していた名門の娘だった。
「そう見えたのなら、努力が報われたということですわ」
「お見事。でも、“あの方”はそれをどう思っているかしら?」
「“あの方”……?」
「ふふ、知らないふりを。第二王子ノア様。あなたが彼に近づいたという噂は、もう王宮でも囁かれておりますわよ?」
レティシアは笑みだけで応えた。
その表情には、動揺も敵意もない。ただ、わずかな余裕だけが滲んでいた。
*
夜も更け、各派の意見が交錯したあと——
「それでは最後に、“この国の未来に必要なもの”を、ひと言ずついただけますか」
司会者の言葉に、ざわつきが広がる。
王宮、神殿、商会、市民、そして——
「ヴェルディーユ侯爵令嬢、最後にお願いいたします」
全ての視線が、レティシアに向いた。
「……私が思うに、この国に今最も欠けているのは“責任”です」
彼女の声は、静かに、しかし確かに空間を支配していく。
「誰もが“誰かがなんとかする”と考え、責任を押しつける。けれど、未来は“誰か”が創るのではなく、“私たち自身”が築くものです」
「だからこそ、私はこうして“舞台”に立ちました。失ったものがあるからこそ、得られた視座がある」
「どうか皆様も、“誰か任せ”ではなく、“私が”と語る勇気を、持ってください」
——その言葉のあと、場に一瞬の沈黙が落ちた。
だがそれは、敬意の前の静寂だった。
次の瞬間、広間には自然と拍手が湧き上がる。
皮肉屋と呼ばれた令嬢が、今や“覚悟”を語る人間として受け入れられ始めていた。
*
その夜の終わり、王妃イザベルは誰にも言わず、つぶやいた。
「……レティシア嬢。貴女が王家の者であったなら、さぞやこの国も安泰だったでしょうね」
それは皮肉ではなく、惜しみと敬意の混じった、ただの独白だった。
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