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後日譚
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後日譚──《選ばれなかった令嬢が、“誰かの希望”になるまで》
リュクサン王国歴563年。
新基本法施行から三年が経ったこの春、王都は穏やかな風に包まれていた。
「……見違えましたね、広場も、議事堂も。まるで別の国に来たみたいですわ」
華やかな帽子を押さえながら微笑んだのは、かつての親友——クラリス=マルセル。
彼女は今や、貴族子女向けの学問講義を行う教師として、多くの“未来の語り手”を育てている。
「人が変われば、風景も変わるのよ。逆もまた然り」
レティシアは白に近いラベンダーのドレスを身にまとい、芝生のベンチに腰を下ろす。
今の彼女は、国家顧問の職をすでに退いていた。
法と制度を整えた今、“私”ではなく“仕組み”で国が回るようにしたい——それが、彼女の最終目標だったからだ。
「……今では貴族の子も、商人の子も、農家の娘も同じ学問の門をくぐっている。貴女が築いた時代ですわ」
「私が始めただけよ。動かしているのは、貴女たち」
*
その頃、神殿では——
「“選ばれた”のではなく、“選び続ける”ための祈り。私が今も立っていられるのは、あの方のおかげです」
そう語ったのは、セシル=リーヴェルト。
聖女としての地位は持ちながら、今では“宗教と社会の橋渡し”として、新たな役割を担っている。
彼女は決して神の名を盾にせず、人の声に耳を傾ける“聖女”になっていた。
*
そして、王宮。
ノア=グランディスは第二王子として即位せず、“王政の補佐者”として新たな立場にある。
「私は“王”ではない。だが、“誰かの背中を支える”くらいなら、喜んで引き受けよう」
そう語る彼の背後には、いまや多くの若手官吏や民間人が立っていた。
その誰もが、レティシアの名前を知っていた。
だが彼女は、もう国の中心にはいない。
*
現在のレティシアは——
郊外に建てた小さな学び舎で、若者たちに“言葉の力”を教えていた。
「身分も家柄も関係ありません。“あなたの言葉”が、世界を変える第一歩です」
教壇に立つその姿は、あの日演壇で語った令嬢と変わらず、けれどどこか柔らかかった。
*
ある日、一人の少女が彼女に尋ねた。
「先生。先生って、昔、偉い人だったんでしょう? 国の法を作ったって、父が言ってました」
「そうね。昔、少しだけ」
「なのにどうして、ここにいるんですか?」
レティシアは少し考えてから、答えた。
「だって、私は“誰にも選ばれなかった”ところから始まったから。
だから今は、“誰かが選ばれるための場所”を作りたいのよ」
少女はきょとんとしながらも、やがて嬉しそうに笑った。
「……じゃあ、わたしも選ばれてみたいな」
「いいえ、違うわ」
レティシアは微笑みながら言った。
「“選ぶ”のよ。自分の人生を、自分の手で」
*
かつて、“婚約破棄された悪役令嬢”と呼ばれた少女は、
今では“未来の選び方”を教える師となっていた。
そしてその教えは、また誰かの声となって、この国を静かに変えていく。
かつて語った言葉が、今もこの国を支えている。
──「婚約破棄? むしろ、ご褒美ですわね」
それは過去を笑い飛ばす冗談ではない。
未来を肯定するための、最初の一歩だった。
リュクサン王国歴563年。
新基本法施行から三年が経ったこの春、王都は穏やかな風に包まれていた。
「……見違えましたね、広場も、議事堂も。まるで別の国に来たみたいですわ」
華やかな帽子を押さえながら微笑んだのは、かつての親友——クラリス=マルセル。
彼女は今や、貴族子女向けの学問講義を行う教師として、多くの“未来の語り手”を育てている。
「人が変われば、風景も変わるのよ。逆もまた然り」
レティシアは白に近いラベンダーのドレスを身にまとい、芝生のベンチに腰を下ろす。
今の彼女は、国家顧問の職をすでに退いていた。
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「……今では貴族の子も、商人の子も、農家の娘も同じ学問の門をくぐっている。貴女が築いた時代ですわ」
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*
その頃、神殿では——
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彼女は決して神の名を盾にせず、人の声に耳を傾ける“聖女”になっていた。
*
そして、王宮。
ノア=グランディスは第二王子として即位せず、“王政の補佐者”として新たな立場にある。
「私は“王”ではない。だが、“誰かの背中を支える”くらいなら、喜んで引き受けよう」
そう語る彼の背後には、いまや多くの若手官吏や民間人が立っていた。
その誰もが、レティシアの名前を知っていた。
だが彼女は、もう国の中心にはいない。
*
現在のレティシアは——
郊外に建てた小さな学び舎で、若者たちに“言葉の力”を教えていた。
「身分も家柄も関係ありません。“あなたの言葉”が、世界を変える第一歩です」
教壇に立つその姿は、あの日演壇で語った令嬢と変わらず、けれどどこか柔らかかった。
*
ある日、一人の少女が彼女に尋ねた。
「先生。先生って、昔、偉い人だったんでしょう? 国の法を作ったって、父が言ってました」
「そうね。昔、少しだけ」
「なのにどうして、ここにいるんですか?」
レティシアは少し考えてから、答えた。
「だって、私は“誰にも選ばれなかった”ところから始まったから。
だから今は、“誰かが選ばれるための場所”を作りたいのよ」
少女はきょとんとしながらも、やがて嬉しそうに笑った。
「……じゃあ、わたしも選ばれてみたいな」
「いいえ、違うわ」
レティシアは微笑みながら言った。
「“選ぶ”のよ。自分の人生を、自分の手で」
*
かつて、“婚約破棄された悪役令嬢”と呼ばれた少女は、
今では“未来の選び方”を教える師となっていた。
そしてその教えは、また誰かの声となって、この国を静かに変えていく。
かつて語った言葉が、今もこの国を支えている。
──「婚約破棄? むしろ、ご褒美ですわね」
それは過去を笑い飛ばす冗談ではない。
未来を肯定するための、最初の一歩だった。
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