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第十四話 ついに目標を……!!
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凄く忙しかった日から数週間後。自室にいた私は、お金を貯めていた麻袋から沢山のお金を取り出し、いくらあるか数えていた。
「……何度確認しても変わらない……」
目の前にあるお金を見ながら、私は小刻みに震えた。
それは悲しみや怒りといった、負の感情からではない。ついに目標の金額に達した事への喜びだ。
「やった……ついに貯まった……! これで、お父さんに会いに行ける!!」
貧乏ながらも、お給料をもらう度にコツコツと貯めたのから始まり、ライル家に生活を支えてもらえた事と、あの忙しかった日に沢山貰えたからこそ、たどり着いたんだ。
早く、この事をヴォルフ様達やマスターに伝えたい。みんなには心配をかけちゃったし、支えてもらったのだから、そのお礼もきちんと伝えなきゃ。
「ヴォルフ様に早く伝えたいのに、どこにいるんだろう……お昼は基本的に屋敷にいないからなぁ……」
……ううん、もしかしたら屋敷で仕事をしている可能性もある。その可能性に賭けて、探しに行こう!
「とりあえず、ヴォルフ様の自室に行ってみよう」
少し駆け足気味でヴォルフ様の自室の前に来た私は、控えめにノックをしてみる。しかし、中からは何も返事が無かった。
やっぱりいないか……夜に帰ってくるのを待つしかないのかな。幸いにも、私は今日の仕事が休みだから、すれ違うって事は無いと思うんだけど……。
「あら、セーラ様。ヴォルフ様に何か御用でしょうか?」
部屋の前で溜息を漏らしていると、若いメイドの人に声をかけられた。
「は、はい。ちょっとお話があって……」
「ヴォルフ様でしたら、さきほど部屋を出ていかれましたよ。用事があって出かける予定でして」
「それっていつの事ですか?」
「つい数分前ですよ」
数分前? それなら、急げばもしかしたら間に合うかもしれない!
「ありがとうございます!」
「あ、セーラ様! 廊下を走ったら危険ですよ!」
メイドの人の注意を背中に受けつつも、私はさっきよりも速い速度で廊下を駆け抜ける。
普通に考えれば、別にいつ話したところで事実は変わらない、それでも、私は早くこの喜びと感謝を伝えたかった。
その気持ちが天に通じたのか……屋敷を飛び出したら、丁度ヴォルフ様が馬車に乗りこもうとしているところだった。
「ヴォルフ様ー!!」
「セーラ? どうしたんだい、そんな息を切らせて……急ぎの用事?」
「はぁ……はぁ……用事というわけではないんですが……ちょっとだけ話したい事が……」
「話したい事……エリカ、時間は?」
「五分程でしたら、支障はないかと」
「わかった。セーラ、息を整えてから、ゆっくり話してごらん」
ヴォルフ様の優しさに対して、心の中で感謝をしながら、私は深く深呼吸を繰り返す。そのおかげで、少しだけ息が楽になった。
「やっと、やっと貯まったんです!」
「貯まったって、もしかしてお父上に会う為の資金が?」
「そうです! それが嬉しくて、早くヴォルフ様に伝えたくて!」
「そうかそうか! おめでとう、セーラ! これでお父上に会いに行けるな!」
「はいっ! これもヴォルフ様をはじめ、ライル家のみなさんが支えてくれたおかげです。本当にありがとうございます!」
勢いが良すぎて、首がどこか飛んでいってしまうんじゃないかと思われてもおかしくないくらい、勢いよく何度も頭を下げてお礼を伝えていると、私の肩にポンっと手が乗せられた。
「僕達は大した事はしていないよ。これもセーラが今まで頑張ってきた結果だ。エリカもそう思うだろう?」
「はい、私も全面的に同意です」
「で、でも……支えてもらったのは事実ですから!」
「セーラが頑張っていたから、僕も支えたいと思っただけだよ」
ヴォルフ様の優しい言葉が嬉しくて、私は涙を流しながら、小さく頷いてみせた。
「さて、エリカ」
「はい。セーラ様、出発はいつにされる予定ですか?」
「ぐすっ……えっと……マスターに話して、出勤日の調整をしてもらってからじゃないと、はっきりとした日程はわからないです」
「そうですか。わかり次第、すぐにお伝えください。こちらのスケジュールを合わせますので」
「わかりました」
「そうそう、エリカも一緒に行くからね」
「え、エリカさんも一緒にですか!?」
まさかエリカさんまで一緒に行ってくれるとは思ってなかった私は、驚きのあまり声を荒げてしまった。ちょっと声が裏返っちゃったし……恥ずかしい。
「その、ありがとうございます。当日はよろしくお願いします!」
「それじゃ、そろそろ僕は仕事に行くよ。夜には帰ってくるから、その時にまた話そう」
「わかりました。お気をつけて」
そう言い残して、ヴォルフ様とエリカさんを乗せた馬車は去っていった。
ヴォルフ様だけではなく、エリカさんまで……やっぱり申し訳ないよ……大した事じゃなくてもいいから、何かお礼をしたい……そうだ、今まで貯めていたお金が、旅費の分を引いても少し残るから、それで今までのお礼も兼ねて、お返しのプレゼントをしよう!
「ヴォルフ様とエリカさんって、何が好きなんだろう……?」
よく考えたら、私ってヴォルフ様とエリカさんの好きな物を知らない。今後に役立つかもしれないし、誰かに聞いてみよう。
「あの……すみません、ちょっと聞きたいんですけど……」
「おやセーラ様。ご機嫌麗しゅう」
屋敷に戻って人を探していると、丁度通りがかった初老の使用人の方を見つけた私は、恐る恐る声をかけた。
「ヴォルフ様とエリカさんの好きな物って知ってますか?」
「ヴォルフ様とエリカの好きな物でございますか。ヴォルフ様は、幼い頃から料理と読書を好んでおられます」
「読書……好きな本はわかりますか?」
「ええ。ヴォルフ様は恋愛小説を読まれておりましてな。最近は料理を屋敷でする時間は中々取れませんが、読書は移動中にされておりますぞ」
恋愛小説? ちょっと意外というか、可愛い所があるんだね……これがギャップというものだろうか?
私も読書は好きだけど、恋愛小説は正直苦手な部類だ。そういうのを読んでいると、こっちが恥ずかしくなってきちゃって……いつも最後まで読めないの。
「エリカは愛らしい物が大好きでしてな。ぬいぐるみには特に目がありませんぞ」
「それなら本とぬいぐるみが一番よさそうかな……教えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。もしかして、お二人へのプレゼントですかな?」
「は、はい。日頃のお礼にと」
「でしたら馬車を準備いたしますので、少々お待ちを」
「え、そんな……歩いて街まで行くから大丈夫です」
「そのような事をさせたら、我々が叱られてしまいます」
そ、そう言われると断れない……仕方ない、ここは厚意に甘えるとしよう……。
「……何度確認しても変わらない……」
目の前にあるお金を見ながら、私は小刻みに震えた。
それは悲しみや怒りといった、負の感情からではない。ついに目標の金額に達した事への喜びだ。
「やった……ついに貯まった……! これで、お父さんに会いに行ける!!」
貧乏ながらも、お給料をもらう度にコツコツと貯めたのから始まり、ライル家に生活を支えてもらえた事と、あの忙しかった日に沢山貰えたからこそ、たどり着いたんだ。
早く、この事をヴォルフ様達やマスターに伝えたい。みんなには心配をかけちゃったし、支えてもらったのだから、そのお礼もきちんと伝えなきゃ。
「ヴォルフ様に早く伝えたいのに、どこにいるんだろう……お昼は基本的に屋敷にいないからなぁ……」
……ううん、もしかしたら屋敷で仕事をしている可能性もある。その可能性に賭けて、探しに行こう!
「とりあえず、ヴォルフ様の自室に行ってみよう」
少し駆け足気味でヴォルフ様の自室の前に来た私は、控えめにノックをしてみる。しかし、中からは何も返事が無かった。
やっぱりいないか……夜に帰ってくるのを待つしかないのかな。幸いにも、私は今日の仕事が休みだから、すれ違うって事は無いと思うんだけど……。
「あら、セーラ様。ヴォルフ様に何か御用でしょうか?」
部屋の前で溜息を漏らしていると、若いメイドの人に声をかけられた。
「は、はい。ちょっとお話があって……」
「ヴォルフ様でしたら、さきほど部屋を出ていかれましたよ。用事があって出かける予定でして」
「それっていつの事ですか?」
「つい数分前ですよ」
数分前? それなら、急げばもしかしたら間に合うかもしれない!
「ありがとうございます!」
「あ、セーラ様! 廊下を走ったら危険ですよ!」
メイドの人の注意を背中に受けつつも、私はさっきよりも速い速度で廊下を駆け抜ける。
普通に考えれば、別にいつ話したところで事実は変わらない、それでも、私は早くこの喜びと感謝を伝えたかった。
その気持ちが天に通じたのか……屋敷を飛び出したら、丁度ヴォルフ様が馬車に乗りこもうとしているところだった。
「ヴォルフ様ー!!」
「セーラ? どうしたんだい、そんな息を切らせて……急ぎの用事?」
「はぁ……はぁ……用事というわけではないんですが……ちょっとだけ話したい事が……」
「話したい事……エリカ、時間は?」
「五分程でしたら、支障はないかと」
「わかった。セーラ、息を整えてから、ゆっくり話してごらん」
ヴォルフ様の優しさに対して、心の中で感謝をしながら、私は深く深呼吸を繰り返す。そのおかげで、少しだけ息が楽になった。
「やっと、やっと貯まったんです!」
「貯まったって、もしかしてお父上に会う為の資金が?」
「そうです! それが嬉しくて、早くヴォルフ様に伝えたくて!」
「そうかそうか! おめでとう、セーラ! これでお父上に会いに行けるな!」
「はいっ! これもヴォルフ様をはじめ、ライル家のみなさんが支えてくれたおかげです。本当にありがとうございます!」
勢いが良すぎて、首がどこか飛んでいってしまうんじゃないかと思われてもおかしくないくらい、勢いよく何度も頭を下げてお礼を伝えていると、私の肩にポンっと手が乗せられた。
「僕達は大した事はしていないよ。これもセーラが今まで頑張ってきた結果だ。エリカもそう思うだろう?」
「はい、私も全面的に同意です」
「で、でも……支えてもらったのは事実ですから!」
「セーラが頑張っていたから、僕も支えたいと思っただけだよ」
ヴォルフ様の優しい言葉が嬉しくて、私は涙を流しながら、小さく頷いてみせた。
「さて、エリカ」
「はい。セーラ様、出発はいつにされる予定ですか?」
「ぐすっ……えっと……マスターに話して、出勤日の調整をしてもらってからじゃないと、はっきりとした日程はわからないです」
「そうですか。わかり次第、すぐにお伝えください。こちらのスケジュールを合わせますので」
「わかりました」
「そうそう、エリカも一緒に行くからね」
「え、エリカさんも一緒にですか!?」
まさかエリカさんまで一緒に行ってくれるとは思ってなかった私は、驚きのあまり声を荒げてしまった。ちょっと声が裏返っちゃったし……恥ずかしい。
「その、ありがとうございます。当日はよろしくお願いします!」
「それじゃ、そろそろ僕は仕事に行くよ。夜には帰ってくるから、その時にまた話そう」
「わかりました。お気をつけて」
そう言い残して、ヴォルフ様とエリカさんを乗せた馬車は去っていった。
ヴォルフ様だけではなく、エリカさんまで……やっぱり申し訳ないよ……大した事じゃなくてもいいから、何かお礼をしたい……そうだ、今まで貯めていたお金が、旅費の分を引いても少し残るから、それで今までのお礼も兼ねて、お返しのプレゼントをしよう!
「ヴォルフ様とエリカさんって、何が好きなんだろう……?」
よく考えたら、私ってヴォルフ様とエリカさんの好きな物を知らない。今後に役立つかもしれないし、誰かに聞いてみよう。
「あの……すみません、ちょっと聞きたいんですけど……」
「おやセーラ様。ご機嫌麗しゅう」
屋敷に戻って人を探していると、丁度通りがかった初老の使用人の方を見つけた私は、恐る恐る声をかけた。
「ヴォルフ様とエリカさんの好きな物って知ってますか?」
「ヴォルフ様とエリカの好きな物でございますか。ヴォルフ様は、幼い頃から料理と読書を好んでおられます」
「読書……好きな本はわかりますか?」
「ええ。ヴォルフ様は恋愛小説を読まれておりましてな。最近は料理を屋敷でする時間は中々取れませんが、読書は移動中にされておりますぞ」
恋愛小説? ちょっと意外というか、可愛い所があるんだね……これがギャップというものだろうか?
私も読書は好きだけど、恋愛小説は正直苦手な部類だ。そういうのを読んでいると、こっちが恥ずかしくなってきちゃって……いつも最後まで読めないの。
「エリカは愛らしい物が大好きでしてな。ぬいぐるみには特に目がありませんぞ」
「それなら本とぬいぐるみが一番よさそうかな……教えてくれてありがとうございました」
「いえいえ。もしかして、お二人へのプレゼントですかな?」
「は、はい。日頃のお礼にと」
「でしたら馬車を準備いたしますので、少々お待ちを」
「え、そんな……歩いて街まで行くから大丈夫です」
「そのような事をさせたら、我々が叱られてしまいます」
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