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第十六話 この本を家宝にする!!
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「……あら~? なにか屋敷の中が騒がしいですね~?」
無事にプレゼントを購入して屋敷に帰ってくると、屋敷の奥が少し騒がしくなっていた。
何かあったのだろうか? とりあえず向かって確認してみよう。
「ヴォルフ様、落ち着いてくださいませ。セーラ様はそろそろ帰ってくるはずです」
「そんなのわからないじゃないか! 事件に巻き込まれていたらどうする!?」
「事件なんて、早々巻き込まれたりするものじゃありませんわ。それに、一人で行ったわけではありませんし」
「しかし、可能性はゼロじゃないだろう!?」
声のする方に向かうと、ヴォルフ様とエリカさんが廊下で言い合いをしている姿があった。内容からして、私の事で話をしているみたいだ……。
「あ、あの~……」
「せ、セーラ!? 帰ってきたのかい!?」
「は、はい。丁度今帰ってきました……」
おずおずと会話に加わると、いの一番にヴォルフ様が私に駆け寄り、両手を強く握ってきた。
「帰りが遅いから心配していたんだぞ! 君の身に何かあったら僕は……!」
「ごめんなさい、ちょっとお買い物に行ってて。それが思ったよりも時間がかかっちゃって」
「買い物? それなら僕に言ってくれれば調達してくるのに」
「それじゃ意味が無いんです」
「そうなのかい? よくわからないが、立ち話もなんだし、何処か座って話をしようか」
私はヴォルフ様とエリカさんと共に、一番近くにあった応接室に入った。ちなみに、一緒に来てくれたメイドさんは、部屋の前で別れている。
「あの、実はこれを買って来たんです。」
梱包された本を取り出すと、それをヴォルフ様に手渡す。すると、ヴォルフ様はキョトンとした表情で、私と本を交互に見つめていた。
「これは……?」
「最近出た、人気の恋愛小説です。こういうのが好きだって聞いて、買いに行ったんです」
「え、僕の為に? どうしてそんな?」
「いつもお世話になってるので、そのお礼です。エリカさんのもあるんです」
「私にも? 嬉しいです。ありがとうございます。開けてみてもよろしいですか?」
「もちろんです」
ドキドキしながらエリカさんを見つめていると、今まで見た事がないくらい、笑顔の花を咲かせていた。クールなエリカさんと同一人物とは思えない。
「まあ、なんて愛らしいぬいぐるみ……! 私の事も、誰かに聞いたのですか?」
「はい。エリカさんは可愛い物が好きだって聞いたので、玩具屋さんに売ってる中で、私が一番可愛いって思った子を選びました」
「ありがとうございます、セーラ様。この子はベッドに置いて、大切にします」
「えへへ、喜んでもらえてよかったです」
こんなに笑顔で喜ぶエリカさんを見ていたら、プレゼントして本当に良かったって思える。もっとお金を貯められたら、他の人にもプレゼントをしたいな。だって、みんなライル家の為に頑張ってる人だから。
「えっと、ヴォルフ様……?」
「…………」
エリカさんと話している間、ヴォルフ様はずっと本を持ったまま、それを見つめ続けていた。まるで、石像にでもなってしまったんじゃないかと思うくらいだ。
「ご、ごめんなさい! 気に入らなかったですか……?」
「…………」
何を呼び掛けても、一切反応が帰ってこない。そう思ったのも束の間、ヴォルフ様は固まったまま涙を流していた。
う、嘘……そんなになるくらい、嫌だったの……!?
「あ、あのあの……泣く程嫌だったんですか!? 私ってば本当に馬鹿で……ヴォルフ様の事を考えもしないで……! うぅ……本当にごめんなさい……ぐすん……」
「ちがっ……違う……これは嬉しくて……」
「えっ……?」
ヴォルフ様への申し訳なさ、喜んでもらえなかった事への悲しさ、そして無能な自分への怒りが入り混じった結果、ボロボロと涙を流してしまったが、ヴォルフ様の言葉はちゃんと私に届いていた。
「まさか僕の為に、こんな素敵なプレゼントを用意してくれるなんて……僕は本当に幸せ者だ。ありがとう、セーラ」
「ほ、本当に……? 社交辞令とかじゃなくて……?」
「そんなはずないだろう?」
「よ、よかったぁ……困らせちゃったのかと思って……」
……良かった……心の底から安心した。これでヴォルフ様を傷つけてしまっていたら、私は一生自分の浅はかさを呪っていただろう。
「ヴォルフ様、あまりセーラ様を困らせないでください」
「ああ、申し訳ない……この本は僕の宝物として、末永く大事にするよ。そうだ、ライル家の家宝にしよう!!」
うんうん、そこまで大切にしてもらえるなんて嬉しい……ん? ちょっと待って、今家宝にするって……これ、ただの本なんだけど!?
「それは大げさすぎますよ!」
「大げさなものか!! 僕の大切な人が、初めてくれたプレゼントだよ!? 大事にしなければ、末代までの恥になる!」
「ま、末代まで!? いつのまに私のプレゼントがそこまで重くなったんですか!?」
「今この瞬間に重くなったのさ!」
と、とにかく喜んでもらえたのなら良かった。これでほんの少しでも日頃の感謝を伝えられていればいいんだけど……。
「さて、こんな良い物をもらったからには、相応のお返しをしなければならないね」
「ええ、そうですわね」
「……えっと、ヴォルフ様? エリカさん?」
……なんだろう、何となくだけど……嫌な予感がする。
「さあ宴の準備だ! 今日は屋敷全員を呼んで宴を開く! 料理は僕に任せておけ!」
「かしこまりました。その時間にやるはずの仕事に関しては、私の方で調整します」
「頼んだ!」
「え、えぇ……!? ま、待ってください、そんな大げさな!」
「大げさなものか! 僕の大切な人が――」
「そのやり取り、さっきもやりましたから~!」
結局私は二人を止める事が出来ず、ライル家のみんなで楽しくパーティーを開いた。
パーティーに参加していた人達は、皆とても楽しそうに飲み、食べて、おしゃべりをして……私もとても楽しい時間を過ごせた。
でも、一つ残念だったのは……ヴォルフ様が主になって今回の料理を作っていたらしく、ほとんど一緒にいられなかったのが心残りだ。
……そういえば、ヴォルフ様の料理って、美味しいんだけど……どこかで食べた事があるような……この優しい味……偶然、なのかなぁ?
無事にプレゼントを購入して屋敷に帰ってくると、屋敷の奥が少し騒がしくなっていた。
何かあったのだろうか? とりあえず向かって確認してみよう。
「ヴォルフ様、落ち着いてくださいませ。セーラ様はそろそろ帰ってくるはずです」
「そんなのわからないじゃないか! 事件に巻き込まれていたらどうする!?」
「事件なんて、早々巻き込まれたりするものじゃありませんわ。それに、一人で行ったわけではありませんし」
「しかし、可能性はゼロじゃないだろう!?」
声のする方に向かうと、ヴォルフ様とエリカさんが廊下で言い合いをしている姿があった。内容からして、私の事で話をしているみたいだ……。
「あ、あの~……」
「せ、セーラ!? 帰ってきたのかい!?」
「は、はい。丁度今帰ってきました……」
おずおずと会話に加わると、いの一番にヴォルフ様が私に駆け寄り、両手を強く握ってきた。
「帰りが遅いから心配していたんだぞ! 君の身に何かあったら僕は……!」
「ごめんなさい、ちょっとお買い物に行ってて。それが思ったよりも時間がかかっちゃって」
「買い物? それなら僕に言ってくれれば調達してくるのに」
「それじゃ意味が無いんです」
「そうなのかい? よくわからないが、立ち話もなんだし、何処か座って話をしようか」
私はヴォルフ様とエリカさんと共に、一番近くにあった応接室に入った。ちなみに、一緒に来てくれたメイドさんは、部屋の前で別れている。
「あの、実はこれを買って来たんです。」
梱包された本を取り出すと、それをヴォルフ様に手渡す。すると、ヴォルフ様はキョトンとした表情で、私と本を交互に見つめていた。
「これは……?」
「最近出た、人気の恋愛小説です。こういうのが好きだって聞いて、買いに行ったんです」
「え、僕の為に? どうしてそんな?」
「いつもお世話になってるので、そのお礼です。エリカさんのもあるんです」
「私にも? 嬉しいです。ありがとうございます。開けてみてもよろしいですか?」
「もちろんです」
ドキドキしながらエリカさんを見つめていると、今まで見た事がないくらい、笑顔の花を咲かせていた。クールなエリカさんと同一人物とは思えない。
「まあ、なんて愛らしいぬいぐるみ……! 私の事も、誰かに聞いたのですか?」
「はい。エリカさんは可愛い物が好きだって聞いたので、玩具屋さんに売ってる中で、私が一番可愛いって思った子を選びました」
「ありがとうございます、セーラ様。この子はベッドに置いて、大切にします」
「えへへ、喜んでもらえてよかったです」
こんなに笑顔で喜ぶエリカさんを見ていたら、プレゼントして本当に良かったって思える。もっとお金を貯められたら、他の人にもプレゼントをしたいな。だって、みんなライル家の為に頑張ってる人だから。
「えっと、ヴォルフ様……?」
「…………」
エリカさんと話している間、ヴォルフ様はずっと本を持ったまま、それを見つめ続けていた。まるで、石像にでもなってしまったんじゃないかと思うくらいだ。
「ご、ごめんなさい! 気に入らなかったですか……?」
「…………」
何を呼び掛けても、一切反応が帰ってこない。そう思ったのも束の間、ヴォルフ様は固まったまま涙を流していた。
う、嘘……そんなになるくらい、嫌だったの……!?
「あ、あのあの……泣く程嫌だったんですか!? 私ってば本当に馬鹿で……ヴォルフ様の事を考えもしないで……! うぅ……本当にごめんなさい……ぐすん……」
「ちがっ……違う……これは嬉しくて……」
「えっ……?」
ヴォルフ様への申し訳なさ、喜んでもらえなかった事への悲しさ、そして無能な自分への怒りが入り混じった結果、ボロボロと涙を流してしまったが、ヴォルフ様の言葉はちゃんと私に届いていた。
「まさか僕の為に、こんな素敵なプレゼントを用意してくれるなんて……僕は本当に幸せ者だ。ありがとう、セーラ」
「ほ、本当に……? 社交辞令とかじゃなくて……?」
「そんなはずないだろう?」
「よ、よかったぁ……困らせちゃったのかと思って……」
……良かった……心の底から安心した。これでヴォルフ様を傷つけてしまっていたら、私は一生自分の浅はかさを呪っていただろう。
「ヴォルフ様、あまりセーラ様を困らせないでください」
「ああ、申し訳ない……この本は僕の宝物として、末永く大事にするよ。そうだ、ライル家の家宝にしよう!!」
うんうん、そこまで大切にしてもらえるなんて嬉しい……ん? ちょっと待って、今家宝にするって……これ、ただの本なんだけど!?
「それは大げさすぎますよ!」
「大げさなものか!! 僕の大切な人が、初めてくれたプレゼントだよ!? 大事にしなければ、末代までの恥になる!」
「ま、末代まで!? いつのまに私のプレゼントがそこまで重くなったんですか!?」
「今この瞬間に重くなったのさ!」
と、とにかく喜んでもらえたのなら良かった。これでほんの少しでも日頃の感謝を伝えられていればいいんだけど……。
「さて、こんな良い物をもらったからには、相応のお返しをしなければならないね」
「ええ、そうですわね」
「……えっと、ヴォルフ様? エリカさん?」
……なんだろう、何となくだけど……嫌な予感がする。
「さあ宴の準備だ! 今日は屋敷全員を呼んで宴を開く! 料理は僕に任せておけ!」
「かしこまりました。その時間にやるはずの仕事に関しては、私の方で調整します」
「頼んだ!」
「え、えぇ……!? ま、待ってください、そんな大げさな!」
「大げさなものか! 僕の大切な人が――」
「そのやり取り、さっきもやりましたから~!」
結局私は二人を止める事が出来ず、ライル家のみんなで楽しくパーティーを開いた。
パーティーに参加していた人達は、皆とても楽しそうに飲み、食べて、おしゃべりをして……私もとても楽しい時間を過ごせた。
でも、一つ残念だったのは……ヴォルフ様が主になって今回の料理を作っていたらしく、ほとんど一緒にいられなかったのが心残りだ。
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