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第三十二話 聞き込み……難しいです……
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翌日、無事にポスターを何枚か完成させた私とエリカさんは、正体がバレないように、徒歩で城下町に行き、いくつかある掲示板に、ポスターを貼った。
ちかみに、イラストはエリカさんが担当をし、文字は私が担当をした。エリカさん曰く、自分の文字は汚すぎて、私以外には読むのは困難だからとの事だ。
うーん、そんなに汚いとは思わないんだけどなぁ……ちょっと独創的なのは否めないけど、読めないほど汚くは見えない。
「さて、とりあえずこれでポスターに関しては完了ですね。あとは情報提供先に指定した、自警団からの情報を待ちましょう」
「そうですね」
正体がバレないようにする為に、私のよく知る常連のお客さんに変装したエリカさんに、大きく頷いて見せた。
……正体がエリカさんだとわかっていても、やっぱり変な感じだ。見た目もそうだけど、声も全然違うし……これでは気づきようがないよ。
「では予定通り聞き込みを始めましょう。まずは大通りから向かいましょう」
「わかりました」
エリカさんと一緒に大通りに向かう。ここは城下町の中でも一番人通りが多い場所だ。周りには色んなお店が立ち並び、とても賑やかな場所でもある。
「何かあった時にすぐ対処できるように、できるだけ近くにいるようにお願い致します」
「わかりました」
私に注意をしてから、エリカさんは近くの人から片っ端に聞き込みを始めた。
わ、私も負けていられないよね。知らない人に声をかけるのは怖いけど……これもヴォルフ様の為だから!
「あ、あの……」
「…………」
あれ……近くの男性に話しかけたのに、何の反応も無かった……声が小さくて、聞こえなかったのかもしれない。次はもうちょっと大きな声で……。
「すみません……お聞きしたい事が……」
「悪いけど急いでいるの。他を当たってもらえる」
「ご、ごめんなさい……」
次は少しご年配の女性に声をかけてみたけど、嫌そうな顔をされながら、逃げられてしまった。
うぅ……聞き込みって難しい……出だしから最悪すぎる……私みたいな人見知りで内気な人間には、こんなの無理だったのかな……。
って、何を弱気になっているの私は! さっきヴォルフ様の為にって思ったばかりなのに、心が折れるのが早すぎるよ!
「私なら出来る……頑張れ、セーラ……これも大好きなヴォルフ様の為……!」
私はお母さんから貰ったハンカチをギュッと握りしめながら、自分を鼓舞すると、近くを通りかかった若い男性の方に声をかけた。
「あ、あのぅ……ちょっといいですか
……?」
「ん? なにかな」
「えっと、その……一昨日から昨日にかけての夜中に、すぐ近くのお店が火事になったのですが……その日に怪しい人を見なかったか聞いて回ってて……」
「ああ、火事は知ってるよ。でも、怪しい人は見てないなぁ。役に立たなくてすまないね」
「い、いえ。ありがとうございます」
男性は申し訳なさそうにしながら、人混みの中に消えていった。
情報は手に入らなかったけど、人見知りな私でも、聞き込みが出来た……! 良かった、私にも何とか出来るんだ! この調子で、聞き込みを続けよう!
「あの、お聞きしたい事が――」
「いや、知らないわね」
「そうですか、ありがとうございます……あ、ごめんなさい、ちょっといいでしょうか――」
「特に見てねぇな……悪いな嬢ちゃん」
「ありがとうございます……」
何とか聞けるようにはなったおかげで、何人も聞き込みをする事が出来たけど、これといって有力な証拠になりそうな情報は無かった。
「セーラ様、いかがでしたか?」
「ごめんなさい、知ってる人はいませんでした……」
「いえ、お気になさらず。それよりも、あの内気なセーラ様がちゃんと聞きこみが出来るか心配しておりましたが、ちゃんと出来ていて、感動しました。本当に成長されましたね」
「あ、ありがとうございます」
エリカさんは、あの酒場がオープンした時から、常連のお客さんとして私を見てくれていた。だから、私がドジを連発していた頃を知っているからこそ、お母さんみたいな温かい事を言ってくれるんだね。
「はじめは緊張でガチガチになったり、注文を聞くのもままならなかったというのに……」
「わ、わーわー! 恥ずかしいから言わないでくださいー!」
やめてー! それは私の黒歴史だからー! 今でも緊張すると噛んじゃうけど、あの頃は本当に思い出すと恥ずかしい失敗ばかりしてたからー!
「ふふっ、セーラ様の緊張をほぐすのは、これくらいにしましょう」
「うぅ……エリカさんの意地悪ぅ……」
「さて、次は広場に向かいましょう」
「わかりました……」
多少緊張はほぐれたけど、代償が大きすぎると内心思いながら、私はエリカさんと広場に移動する。ここは城下町の中心にある広場で、大きな噴水と、沢山の道が交わっているのが特徴だ。
広場には、大通りと同じで沢山の人が行き来する中、ベンチに座って談笑する人や、ハトさんに餌をあげてる人、楽しそうに走り回り子供達といった、様々な事をしている人で賑わっていた。
「では先程と同じように聞いて回りましょう。何かあったらお呼びくださいませ」
「わかりました」
エリカさんと別れた私は、再び聞き込みを再開した。
「あの、ちょっといいですか――」
「火事ねぇ……知らないわぁ」
「そうですか、ありがとうございます……あ、すみません――」
「うーん、その時間は寝てるから、知らないよ! 早く寝ないと、ママに怒られちゃうから!」
「そっか、ごめんね変な事を聞いて……あ、ちょっといいですか――」
老若男女、沢山の方に声をかけさせてもらったけど、結局有力な情報を得られないまま、いつの間にか夕方になってしまった。
「お疲れ様でした。残念ながら、今日は有力な情報はありませんでしたね」
「はい……ごめんなさい……」
「セーラ様のせいではありませんわ。明日からも頑張りましょう」
「……はいっ」
「では、念の為自警団の本部に寄って、情報が来ていないかの確認をしてから帰りましょう」
エリカさんの提案に頷いた私は、一緒に自警団の本部に行って話を聞いてみたけど、やはりと言うべきか、情報は特に来ていなかった。
結局今日は完全に空振りかぁ……でも、自分が聞き込みが出来ると分かったのは収穫だ。このおかげで、明日からも頑張って聞き込みが出来るのだから。
絶対に証拠を見つけて、ヴォルフ様に安心してもらって、そして喜んでもらうんだ! 頑張ろう!
「あの、セーラ様。突然手を天に突き出して、どうかされたのですか?」
「あっ! い、いえなんでもないです! はい、ないです! うっ……あうぅ……は、恥ずかしい……!」
ちかみに、イラストはエリカさんが担当をし、文字は私が担当をした。エリカさん曰く、自分の文字は汚すぎて、私以外には読むのは困難だからとの事だ。
うーん、そんなに汚いとは思わないんだけどなぁ……ちょっと独創的なのは否めないけど、読めないほど汚くは見えない。
「さて、とりあえずこれでポスターに関しては完了ですね。あとは情報提供先に指定した、自警団からの情報を待ちましょう」
「そうですね」
正体がバレないようにする為に、私のよく知る常連のお客さんに変装したエリカさんに、大きく頷いて見せた。
……正体がエリカさんだとわかっていても、やっぱり変な感じだ。見た目もそうだけど、声も全然違うし……これでは気づきようがないよ。
「では予定通り聞き込みを始めましょう。まずは大通りから向かいましょう」
「わかりました」
エリカさんと一緒に大通りに向かう。ここは城下町の中でも一番人通りが多い場所だ。周りには色んなお店が立ち並び、とても賑やかな場所でもある。
「何かあった時にすぐ対処できるように、できるだけ近くにいるようにお願い致します」
「わかりました」
私に注意をしてから、エリカさんは近くの人から片っ端に聞き込みを始めた。
わ、私も負けていられないよね。知らない人に声をかけるのは怖いけど……これもヴォルフ様の為だから!
「あ、あの……」
「…………」
あれ……近くの男性に話しかけたのに、何の反応も無かった……声が小さくて、聞こえなかったのかもしれない。次はもうちょっと大きな声で……。
「すみません……お聞きしたい事が……」
「悪いけど急いでいるの。他を当たってもらえる」
「ご、ごめんなさい……」
次は少しご年配の女性に声をかけてみたけど、嫌そうな顔をされながら、逃げられてしまった。
うぅ……聞き込みって難しい……出だしから最悪すぎる……私みたいな人見知りで内気な人間には、こんなの無理だったのかな……。
って、何を弱気になっているの私は! さっきヴォルフ様の為にって思ったばかりなのに、心が折れるのが早すぎるよ!
「私なら出来る……頑張れ、セーラ……これも大好きなヴォルフ様の為……!」
私はお母さんから貰ったハンカチをギュッと握りしめながら、自分を鼓舞すると、近くを通りかかった若い男性の方に声をかけた。
「あ、あのぅ……ちょっといいですか
……?」
「ん? なにかな」
「えっと、その……一昨日から昨日にかけての夜中に、すぐ近くのお店が火事になったのですが……その日に怪しい人を見なかったか聞いて回ってて……」
「ああ、火事は知ってるよ。でも、怪しい人は見てないなぁ。役に立たなくてすまないね」
「い、いえ。ありがとうございます」
男性は申し訳なさそうにしながら、人混みの中に消えていった。
情報は手に入らなかったけど、人見知りな私でも、聞き込みが出来た……! 良かった、私にも何とか出来るんだ! この調子で、聞き込みを続けよう!
「あの、お聞きしたい事が――」
「いや、知らないわね」
「そうですか、ありがとうございます……あ、ごめんなさい、ちょっといいでしょうか――」
「特に見てねぇな……悪いな嬢ちゃん」
「ありがとうございます……」
何とか聞けるようにはなったおかげで、何人も聞き込みをする事が出来たけど、これといって有力な証拠になりそうな情報は無かった。
「セーラ様、いかがでしたか?」
「ごめんなさい、知ってる人はいませんでした……」
「いえ、お気になさらず。それよりも、あの内気なセーラ様がちゃんと聞きこみが出来るか心配しておりましたが、ちゃんと出来ていて、感動しました。本当に成長されましたね」
「あ、ありがとうございます」
エリカさんは、あの酒場がオープンした時から、常連のお客さんとして私を見てくれていた。だから、私がドジを連発していた頃を知っているからこそ、お母さんみたいな温かい事を言ってくれるんだね。
「はじめは緊張でガチガチになったり、注文を聞くのもままならなかったというのに……」
「わ、わーわー! 恥ずかしいから言わないでくださいー!」
やめてー! それは私の黒歴史だからー! 今でも緊張すると噛んじゃうけど、あの頃は本当に思い出すと恥ずかしい失敗ばかりしてたからー!
「ふふっ、セーラ様の緊張をほぐすのは、これくらいにしましょう」
「うぅ……エリカさんの意地悪ぅ……」
「さて、次は広場に向かいましょう」
「わかりました……」
多少緊張はほぐれたけど、代償が大きすぎると内心思いながら、私はエリカさんと広場に移動する。ここは城下町の中心にある広場で、大きな噴水と、沢山の道が交わっているのが特徴だ。
広場には、大通りと同じで沢山の人が行き来する中、ベンチに座って談笑する人や、ハトさんに餌をあげてる人、楽しそうに走り回り子供達といった、様々な事をしている人で賑わっていた。
「では先程と同じように聞いて回りましょう。何かあったらお呼びくださいませ」
「わかりました」
エリカさんと別れた私は、再び聞き込みを再開した。
「あの、ちょっといいですか――」
「火事ねぇ……知らないわぁ」
「そうですか、ありがとうございます……あ、すみません――」
「うーん、その時間は寝てるから、知らないよ! 早く寝ないと、ママに怒られちゃうから!」
「そっか、ごめんね変な事を聞いて……あ、ちょっといいですか――」
老若男女、沢山の方に声をかけさせてもらったけど、結局有力な情報を得られないまま、いつの間にか夕方になってしまった。
「お疲れ様でした。残念ながら、今日は有力な情報はありませんでしたね」
「はい……ごめんなさい……」
「セーラ様のせいではありませんわ。明日からも頑張りましょう」
「……はいっ」
「では、念の為自警団の本部に寄って、情報が来ていないかの確認をしてから帰りましょう」
エリカさんの提案に頷いた私は、一緒に自警団の本部に行って話を聞いてみたけど、やはりと言うべきか、情報は特に来ていなかった。
結局今日は完全に空振りかぁ……でも、自分が聞き込みが出来ると分かったのは収穫だ。このおかげで、明日からも頑張って聞き込みが出来るのだから。
絶対に証拠を見つけて、ヴォルフ様に安心してもらって、そして喜んでもらうんだ! 頑張ろう!
「あの、セーラ様。突然手を天に突き出して、どうかされたのですか?」
「あっ! い、いえなんでもないです! はい、ないです! うっ……あうぅ……は、恥ずかしい……!」
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