【完結済】婚約者である王子様に騙され、汚妃と馬鹿にされて捨てられた私ですが、侯爵家の当主様に偽物の婚約者として迎え入れられて幸せになります

ゆうき

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第三十七話 救出大作戦!!

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 寂しさと不安と心配で気が狂いそうになった三日間を過ごした私は、ヴォルフ様とエリカさんを助けに行く日を迎えた。

 本音を言うなら、一日でも早く助けに行きたかったけど、ラドバル様の言葉を信じる事で、何とか耐えきれたよ。

「さて、城門の警備は……」
「二人、ですね」

 月明かりと街灯で照らされた城門に来た私とラドバル様は、近くの茂みに隠れて城門の確認を行う。

 お城の入るには、まずあの二人の兵士をどうにかしないと無理だろう。でも、どうすればいいんだろう?

「あの、これって普通にラドバル様が入って、私もそのお供として行くのは駄目なんですか?」
「それではヴォルフ達の生存確認、および救出が出来ないだろう?」
「うっ、確かに……なら、どうやって入るんですか?」
「私に策がある。少々待っているといい」

 そう言うと、ラドバル様は茂みの奥に入り、ガサゴソと何かをし始めた。私の所だと、見えそうで見えない、丁度絶妙な位置だ。

「待たせたな」
「え、ラドバル様??」

 そこにいたのは、ラドバル様の声をした、全くの別人だった。なんていうか、街中に普通にいる、酔っ払った人みたい。

「変装をするのは久しぶりだったが、何とか上手く出来たものだな」
「え、ラドバル様も変装が出来るんですか? エリカさんも出来るんですよ」
「エリカの変装を知っているのか? 何を隠そう、彼女に変装を教えたのは、私だ」
「えっ!? あっ……」

 驚きで大きな声を出しそうになったけど、咄嗟に両手で口を塞いで、無理やり声を止めた。ば、バレてないよね……?

「当主というのは、危険な場所に赴く事がある。その際に、同行者として一緒に行き、もし危険人物がいた際に、変装して危険人物に接触し、排除するのが彼女の仕事の一つだ。最近はとても平和だから、あまり機会はないそうだが」
「そ、それって……暗殺者、みたいな……?」
「少し違うが、そのようなイメージで良い。さて、雑談はまた今度にしよう。私が兵士を一人誘導する。セーラはここから動かないで待っているんだ」
「わかりました」

 せっかく一人誘導しても、私がここにいては意味が無いんじゃと思っていると、ラドバル様はとてもヨロヨロした足取りで、城門の前に出た。

「うぃ~……飲み過ぎちまったぜぇ~……ひっく!」
「おい貴様、ここはプロスペリ国の城だというのがわからないのか!」
「城ぉ? おぉ~でっけえなぁ~! 丁度用を足したかったし、ワシのデカさと勝負してみるか~!?」
「おい馬鹿やめろ! 全くしょうがないな……本当は駄目なんだが、用を足したいなら、近くの茂みでしてこい!」
「あ~……酔いすぎて力が入らねぇ……」
「だああ! これだか酔っぱらいは! わかったから! 肩に捕まれ!!」

 ラドバル様の迫真の演技に目を奪われていた私は、言われた通り茂みでじっと待っていると、ラドバル様と見張りをしていた兵士は、別の茂みに消えていった。

「大丈夫かな……」
「待たせたな」
「ひゃあ……!?」

 突然後ろから声をかけられて驚いてしまった私は、ゆっくりと後ろを振り返る。そこには、既に元の格好に戻っているラドバル様と、気絶してる兵士の姿があった。

「す、凄いですね……」
「これでもかなり演技力が落ちてしまっているのだよ。国王陛下の側近として働いていた時は、もっと凄かったんだがな」
「側近……!?」
「うむ。私は国王陛下の側近として、国や国王陛下に歯向かうものを消す生活をしていた。怪我で引退をする際に、今までの功績を称え、爵位を授かったというわけだ」

 ラドバル様は、凄い過去を話しながら、倒れている兵士の鎧や服を、次々と脱がしていく。それを見ていた私は、恥ずかしくて、両手で目を覆ってしまった。

「ほら、これに着替えるんだ」
「この兵士の服に?」
「それを使って、カモフラージュをするんだ」
「な、なるほど! わかりました、すぐ着替えます!」
「……意気込むのは良いが、茂みの奥で構わない。年頃の女性なのだから、己の身は大切にな」
「はっ……ご、ごめんなさい……!」

 気ばかりが先走ってしまい、ラドバル様の前で脱ごうとしてしまった私は、耳まで真っ赤にさせながら、茂みの中に隠れた。

 あーもう、私の馬鹿! 少しは落ち着かないと、出来るものも出来ないよ! 大丈夫、私なら出来る……よね……ううん、出来る出来る! 頑張れ、私!

「よし、それでは私と共に城門まで行こう。そして私を帰らせた後、何食わぬ顔で見張りをしてくれ。なに、立っていれば大丈夫」
「ひゃい!」
「緊張するな。自然体でいれば良い。すぐに私が屋敷を出た時の格好で城の中に入るから、その案内役を務めてほしい。それと、このポーズを覚えておくと良い」

 ラドバル様は、腕を真っ直ぐ出すと、そのまま自分の胸を叩くようなポーズを取った。ドンって音がして、ちょっと痛そう。

「これは、城の中にいる時だけ、なおかつ兵士の間だけで使われる、秘密の敬礼だ。知っているのも、城の関係者だけだ。これをすれば、城の人間だと思われる」
「わかりましゅた!」

 緊張でカミカミだけど、今はそんなの気にしていられない。とりあえず、ラドバル様の肩を持って茂みから出よう。

「うぃ~……あ~スッキリした。んじゃ帰るわ~」
「あ、は……ごほん! うむっ! 気を付けて帰るのだぞっ!」

 私が出来る限りの低い声、そして威厳の出し方で話してみたけど、怪しまれてないよね!?

「変なジジイだ。持ち場に戻れ」
「はっ……はっ!!」

 よかったぁぁ……バレてないよぉぉ……もう緊張で頭がグルグルしちゃってるけど、まだこんな所で倒れているわけにはいかない!

 とにかく、今の私に出来るのは、ここでラドバル様が来るのを待つだけだ。そう思っていると、ラドバル様が歩いて城門前にやってきた。

「ら、ライル卿!? どうしてここに?」
「国王陛下と話があってな。事前に使いを出していたのだが……」
「これは大変失礼しました! すぐにご案内します!」
「ああ、ありがとう。行こうか」
「あっ……はっ!!」

 さりげなく、城の中を案内させるのを私に仕向けたラドバル様と一緒に、無事に城門をくぐる事が出来た。

 このお城にあるパーティー会場には、マルク様が……そして、ヴォルフ様とエリカさんが……待っててください、すぐに助けに行きますから!
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