【完結済】婚約者である王子様に騙され、汚妃と馬鹿にされて捨てられた私ですが、侯爵家の当主様に偽物の婚約者として迎え入れられて幸せになります

ゆうき

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第四十一話 無事で良かった……!

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 一分一秒が異様に長く感じながらも、言われた通りジッと待っていると、ラドバル様と国王様が、地下牢へとやってきた。

 ここに来たという事は……二人の無実が証明されたって事だよね!?

「セーラ、もう大丈夫だ。二人を牢から出してやってほしい」
「わかりました!」

 私は急いで手に持っていた鍵を使って、牢の鍵を開けようとする。しかし、疲れと焦りのせいで、なかなかうまくいかない。

 焦っても仕方ないのはわかってる。わかってるけど……手が思うように動いてくれない。

「大丈夫、落ち着いて。前に言っただろう? 焦らず、急ぐんだ。まあ、今は急ぐ必要は無いけどね」
「焦らず、急ぐ……」

 私にとって、この言葉はお守りのようなものになっている。焦っている時にこの言葉を聞くと、不思議と少し落ち着けるの。

「焦らない……焦らない……開いた!」

 自分に言い聞かせながら、落ち着いて鍵穴に差し込み、ゆっくりと横に捻る。すると、ガチャンっという音と共に、牢屋の一部が開いた。

「ヴォルフ様! エリカさん!」

 牢屋が開いたと同時に、私は二人の元に駆け寄ると、二人は私の事を強く抱きしめてくれた。

 鎧のせいで二人の感触は感じられないけど、こうして目の前で生きているのがわかるだけでも、嬉しくて仕方がない。

「……本当に無事で良かった」
「申し訳ない、父上。お手数をおかけしてしまいました」
「申し訳ございません、旦那様」
「いや、私こそすまなかった。大変な時に、その場で何も出来なかった」

 みんなが揃って謝罪をしていると、今まで黙っていた国王様が、深々と頭を下げた。

「皆の者、今回は本当に申し訳なかった。全てはワシがマルクを甘やかしていたのが原因だ」
「か、顔をお上げください陛下! あなたは何も悪くありません!」

 ヴォルフ様が急いで国王様に頭をあげさせようとするが、国王様は一向に上げようとしない。それくらい、今回の事に責任を感じているのだろう。

「あ、あのあの……みんな無事だったんですし、それでいいんじゃないでしょうか……? って、ごめんなさい! 私にこんな事を言う資格なんて無いですよね!」
「いや、セーラの言う通りだ。国王陛下、顔をお上げください」
「……うむ……皆の者、感謝する」

 完全に余計な事を言ってしまったと思ったけど、なんとか受け入れてもらえてよかった……余計な事を言うなって怒られたら、どうしようかと思ったよ。

「では地上に戻るとしよう。本来ならヴォルフ達には早急に休んでほしいのだが、もう少しだけワシに付き合ってもらえないだろうか?」
「僕は問題ございません。エリカは大丈夫そうかい?」
「もちろんでございます」
「すまない。この後……マルクを呼び出し、全ての罪を白日の下に晒した後、謝罪をさせるつもりだ」

 ……ついにマルク様との決着という事だね。素直に罪を認めてくれるならいいけど、マルク様の性格からして、素直になるとは思いにくい。

 まだ……一波乱ありそうだ……。


 ****


 国王様の私室へと移動した私達は、一人の兵士と、縛り上げられている男性、そして先程やってきた、マルク様によく似た男性と一緒に、マルク様が来るのを待っていた。

 確かあの人って、マルク様の弟様だったはず。私が出席したパーティーで、少しだけ見かけたのを覚えている。

 ちなみに、マルク様にはパーティーが終わり次第、ここに来るように、国王様が伝えたそうだ。

 その間に、私は着ていた鎧を脱いで、綺麗なドレスを着させてもらっている。国王様が言うには、謝罪の一つとして受け取ってほしいとの事だ。

「……そろそろ、だね」
「はい……」

 時計を見ると、そろそろパーティーが終わる頃だ。外は既に夜の帳に包まれている。

 はぁ、緊張する……波乱はありそうって思ったけど、何も無いに越した事はない。無事に全部終わって、またヴォルフ様達と一緒に過ごして、そしてあの店で働けますように……!

「失礼致します。マルク様がお越しになられました」
「通せ」
「はっ!」

 部屋の前で見張りをしていた兵士の案内の元、マルク様が近衛兵と共に、少し面倒くさそうに入ってきた。パーティーの後という事もあって、いつも以上に見た目がビシッと決まっている。

「む? これは随分と賑やかですね父上。ここで二次会でも開くおつもりですか? お気持ちは大変嬉しいですが、この面々で楽しむには、いささか難しいかと思いますよ」
「残念だが二次会ではない。お前の悪事を白日の下に晒す為に呼んだのだ」

 一瞬だけ眉がピクッとなったけど、すぐに余裕たっぷりの笑みを浮かべた。

「悪事? 何を仰るのかと思えば。そんな罪人まで呼ぶとは、そこまで耄碌もうろくしたのですか? でしたら一日でも早く王位を譲っていただけると嬉しいのですが」

 この状況でも、この余裕たっぷりな態度を崩さないのは、マルク様の性格なのか、絶対にバレないという自信なのだろうか……。

 でも、それももうここで終わりだ。マルク様には罪を認めてもらって、しっかりと償ってもらうんだから!
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