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第九話 ジーク先生とクリス先生?
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初めて勉強した日から数日が経ったある日の夜、私はバルコニーに座って、気持ちのいい風を肌に感じながら、ぼんやりと景色を眺めてました。
今日は風が優しいですし、お母さんは風が運んでくれたお花の香りを楽しんでるでしょう。本当にみなさんには感謝……を……。
「あー!!」
そうだ、大変な事を忘れてました! 私はベルモンド家に恩返しをしなければいけないのに、勉強に夢中になってました!
もちろん勉強はとても楽しいし、支援してくれるのはとても嬉しいのですが……これでは私の目標は達成されないんです!
「急に大声出してどうした?」
「ひょあ!? じ、ジーク様……?」
「隣いいか?」
答える前に座ったジーク様は、執事様に紅茶を淹れてもらい、それを口にする。すると、いつも無表情か難しい顔をしているのに、ほんのりと頬が緩んだ気がします。
せっかく来ていただいたんですし、何かお話ししないと失礼ですよね。そうだ、前から少し気になっていた事を聞いてみましょう。
「一つ質問していいですか?」
「なんだ?」
「ジェニエス学園って、どんな人達がいるんですか? やっぱり凄く真面目な人とか?」
これは私の勝手なイメージですが、凄く真面目な生徒達ばかりが通う、お堅い所ってイメージなんですが、実際はどうなんでしょうか?
「そんな事はない。うちは割とオープンな校風だからな。明るいやつや暗いやつ……良いやつも悪いやつもいる。だが……それでもみんな楽しそうに生活している。勉強をし、運動をし、休み時間は談笑をしたり……」
「そうなんですね」
「ジェニエス学園と二大学園として肩を並べているもう一つの学校は、実力主義社会で大変だそうだ」
「ジーク様の学園生活ってどんな感じなんですか?」
「…………」
あっ……せっかく楽しそうにお話しされていたのに、いつもの無表情に戻ってしまいました……聞かない方が良かったかもしれません……反省……。
「……基本は一人でいる」
「え? それじゃあ食事も?」
「ああ。兄上が仕事がない時に来る時があるから、その時は二人で食ってる」
学園でお仕事っていうのは引っかかりましたけど、今はそれは気にしなくていいですね。問題は……ジーク様が一人ぼっち……そういう事ですよね。
「どうして一人でいるんですか? 領主様の息子だからですか?」
「それは関係ない。俺のような領主の息子もいれば、大富豪の御曹司とかもいる。そいつらには、ちゃんと友人がいる」
「ならどうして? ジーク様は無口で無愛想で、表情も乏しいから考えている事がわかりにくいけど……」
「おいちょっと待て、さすがに言いすぎだろ……」
「あっ! も、申し訳ございません! で、でも! 急に転がり込んできた私を迎え入れてくれましたし、様子を見に来てくれたり、お母さんを眠らせてくれたり……他にも沢山、優しくて良いところがあります!」
「……だから、言いすぎだと……」
嘘偽りのないジーク様の優しい所を述べると、何故かジーク様はそっぽ向いてしまいました。心なしか、髪の隙間から見える耳が赤くなっている気がします。
……耳まで赤くなるほど、怒らせてしまったんでしょうか? 私の馬鹿……素直に言えばいいってものじゃないですよ……。
「嫌な気分にさせて、申し訳ございません……私なんかとお茶するのが嫌だったら、部屋に戻っていただいても――」
「嫌じゃない」
「え、どうして……?」
「さあな」
どうしてかはわかりませんが、ジーク様は怒るそぶりを見せず、静かに紅茶に口をつけました。
よかった、せっかくジーク様が私とお茶してくれて、学園の話をしてくれたのに、怒らせてしまったら申し訳なさで寝込むところでした。
「もし……もしもですけど、私が一緒に学校に通ったら、一緒にお昼を食べたり、登下校を一緒にしてくれますか?」
「……まあ、悪くはないな」
「なら……わかりました! ありがとうございます!」
私は勢いよく立ち上がると、自室の勉強机に腰を下ろして勉強を始めます。
これは些細なお礼ですが……頑張ってジェニエス学園に入学し、ジーク様が一人ぼっちな状況から助けてあげるんです! だって、一人が寂しいのは、身をもって知ってますから。
ふふっ、新しい目標ができたおかげか、より一層勉強したくなりました!
「失礼するよ、おや……勉強していたのかい」
「クリス様! はい、復習をしておこうと思って」
「そんな君に、役立ちそうな本を持ってきた。是非有効活用してほしい」
「あ、ありがとうございます!」
「ジークも来ていたのか。様子を見に来たのかい?」
「ああ」
短く会話をしてから、お二人は私の後ろから、勉強する姿を覗き込みました。そんなにジッと見られると、ちょっと恥ずかしいです。
「……ついこの前まで、文字の読み方とかやっていたはず……なのに、もう四則計算まで来たのか……?」
「あ、はい! 勉強するの楽しくて」
「とても良い傾向じゃないか。そうだ、私とジークが勉強を見てあげようじゃないか。いつも暇というわけではないから、長時間は見れないけどね」
「おい、なに勝手に――」
「いいんですか!? 嬉しいで……あっ……」
クリス様の好意に甘えたいところですが……私の目標は、あくまでベルモンド家に恩返しをする事です。ただでさえ勉強させてもらえてるのに、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません。
「お前の事だから……また迷惑とか思っているんだろ」
「ぎくっ……そんな事ないですよ?」
「元聖女様は隠し事が下手のようだ。勉強の復習になるから気にしなくていいよ」
「学業と鍛錬以外は暇だから、お前が良ければ教えても良い」
「……優しすぎますよ、もう……わかりました。お願いします」
こうして私は、ジーク様とクリス様が開いた時間に勉強を教えてもらえる事になりました。今から楽しみですけど……やっぱり申し訳なく思ってしまいます……。
今日は風が優しいですし、お母さんは風が運んでくれたお花の香りを楽しんでるでしょう。本当にみなさんには感謝……を……。
「あー!!」
そうだ、大変な事を忘れてました! 私はベルモンド家に恩返しをしなければいけないのに、勉強に夢中になってました!
もちろん勉強はとても楽しいし、支援してくれるのはとても嬉しいのですが……これでは私の目標は達成されないんです!
「急に大声出してどうした?」
「ひょあ!? じ、ジーク様……?」
「隣いいか?」
答える前に座ったジーク様は、執事様に紅茶を淹れてもらい、それを口にする。すると、いつも無表情か難しい顔をしているのに、ほんのりと頬が緩んだ気がします。
せっかく来ていただいたんですし、何かお話ししないと失礼ですよね。そうだ、前から少し気になっていた事を聞いてみましょう。
「一つ質問していいですか?」
「なんだ?」
「ジェニエス学園って、どんな人達がいるんですか? やっぱり凄く真面目な人とか?」
これは私の勝手なイメージですが、凄く真面目な生徒達ばかりが通う、お堅い所ってイメージなんですが、実際はどうなんでしょうか?
「そんな事はない。うちは割とオープンな校風だからな。明るいやつや暗いやつ……良いやつも悪いやつもいる。だが……それでもみんな楽しそうに生活している。勉強をし、運動をし、休み時間は談笑をしたり……」
「そうなんですね」
「ジェニエス学園と二大学園として肩を並べているもう一つの学校は、実力主義社会で大変だそうだ」
「ジーク様の学園生活ってどんな感じなんですか?」
「…………」
あっ……せっかく楽しそうにお話しされていたのに、いつもの無表情に戻ってしまいました……聞かない方が良かったかもしれません……反省……。
「……基本は一人でいる」
「え? それじゃあ食事も?」
「ああ。兄上が仕事がない時に来る時があるから、その時は二人で食ってる」
学園でお仕事っていうのは引っかかりましたけど、今はそれは気にしなくていいですね。問題は……ジーク様が一人ぼっち……そういう事ですよね。
「どうして一人でいるんですか? 領主様の息子だからですか?」
「それは関係ない。俺のような領主の息子もいれば、大富豪の御曹司とかもいる。そいつらには、ちゃんと友人がいる」
「ならどうして? ジーク様は無口で無愛想で、表情も乏しいから考えている事がわかりにくいけど……」
「おいちょっと待て、さすがに言いすぎだろ……」
「あっ! も、申し訳ございません! で、でも! 急に転がり込んできた私を迎え入れてくれましたし、様子を見に来てくれたり、お母さんを眠らせてくれたり……他にも沢山、優しくて良いところがあります!」
「……だから、言いすぎだと……」
嘘偽りのないジーク様の優しい所を述べると、何故かジーク様はそっぽ向いてしまいました。心なしか、髪の隙間から見える耳が赤くなっている気がします。
……耳まで赤くなるほど、怒らせてしまったんでしょうか? 私の馬鹿……素直に言えばいいってものじゃないですよ……。
「嫌な気分にさせて、申し訳ございません……私なんかとお茶するのが嫌だったら、部屋に戻っていただいても――」
「嫌じゃない」
「え、どうして……?」
「さあな」
どうしてかはわかりませんが、ジーク様は怒るそぶりを見せず、静かに紅茶に口をつけました。
よかった、せっかくジーク様が私とお茶してくれて、学園の話をしてくれたのに、怒らせてしまったら申し訳なさで寝込むところでした。
「もし……もしもですけど、私が一緒に学校に通ったら、一緒にお昼を食べたり、登下校を一緒にしてくれますか?」
「……まあ、悪くはないな」
「なら……わかりました! ありがとうございます!」
私は勢いよく立ち上がると、自室の勉強机に腰を下ろして勉強を始めます。
これは些細なお礼ですが……頑張ってジェニエス学園に入学し、ジーク様が一人ぼっちな状況から助けてあげるんです! だって、一人が寂しいのは、身をもって知ってますから。
ふふっ、新しい目標ができたおかげか、より一層勉強したくなりました!
「失礼するよ、おや……勉強していたのかい」
「クリス様! はい、復習をしておこうと思って」
「そんな君に、役立ちそうな本を持ってきた。是非有効活用してほしい」
「あ、ありがとうございます!」
「ジークも来ていたのか。様子を見に来たのかい?」
「ああ」
短く会話をしてから、お二人は私の後ろから、勉強する姿を覗き込みました。そんなにジッと見られると、ちょっと恥ずかしいです。
「……ついこの前まで、文字の読み方とかやっていたはず……なのに、もう四則計算まで来たのか……?」
「あ、はい! 勉強するの楽しくて」
「とても良い傾向じゃないか。そうだ、私とジークが勉強を見てあげようじゃないか。いつも暇というわけではないから、長時間は見れないけどね」
「おい、なに勝手に――」
「いいんですか!? 嬉しいで……あっ……」
クリス様の好意に甘えたいところですが……私の目標は、あくまでベルモンド家に恩返しをする事です。ただでさえ勉強させてもらえてるのに、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきません。
「お前の事だから……また迷惑とか思っているんだろ」
「ぎくっ……そんな事ないですよ?」
「元聖女様は隠し事が下手のようだ。勉強の復習になるから気にしなくていいよ」
「学業と鍛錬以外は暇だから、お前が良ければ教えても良い」
「……優しすぎますよ、もう……わかりました。お願いします」
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