【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました

ゆうき

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第四十話 第二の手段

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「ルーク様!?」

 膝から崩れ落ちて丸くなるルーク様に驚いて、声を上ずらせながら安否を確認する。
 なんとか息はしているが、あまりにも顔色が悪い。目も虚ろで、今にも意識を失いそうだ。

「大丈夫……それよりも、間に合って……良かった。人形の接続が切れたり、ベルの音が鳴ったりしたから、心配で来てみたら……まさか、こんなことになっているとは……」

「ベルって……」

 この部屋で生活するようになる際に、ルーク様から二種類のベルの存在を知らされていた。
 そのうちの一つは、ルーク様に知らせが行くものになっているが……私はそれを鳴らしていないはずだ。

「そこに……落ちているじゃないか」

「あっ……!」

 ルーク様の視線の先には、色々な小物が散乱している。その中に、例のベルが落ちていた。

 そうだ、杖でアルバート様を攻撃した時に、大振りしすぎて周りの物にぶつかったわ。その中にたまたまベルがあったということね。

「とにかく、今日は小屋に帰りましょう!」

「しかし……まだ公務が……それに、君の安全が……」

「向こうには私から説明いたしますし、すぐに小屋に帰りますから大丈夫ですわ! ルーク様が今すべきことは、休むことです!」

「……ごめんよ……」

 その言葉を最後に、ルーク様は意識を手放してぐったりしてしまった。

 外傷はないとはいえ、相当魔力を消耗してしまったのは、火を見るよりも明らかだ。どんな生き物でも、魔力を急激に消耗をすれば、こうなってしまう。

「とにかく、早く休ませてあげませんと。裂け目、開くと良いのだけど……えいっ!」

 いつもの様に杖を振ると、無事に小屋に繋がる裂け目は開いてくれた。どうやら、魔道具とやらの力は解除されたみたいだ。

「うん、しょっ……! ルーク様、すぐに小屋まで運びますからね!」

 意識の無いルーク様の肩を担いで、なんとか裂け目を通って小屋の前に来ることが出来た。

「大の大人を運ぶのって、こんなに力がいるのですね……いつもルーク様に持ち上げられる側だったから、知りませんでしたわ……」

 このまま早く中に運びたいところだけど、後を追われると面倒だから、先に裂け目を閉じておいてっと……これでよし。

「こんなになるまでして、私を助けてくださるなんて……みんな、来てくださいませ!」

『シャーロット、どうしたの?』

『ご主人、倒れてる!?』

「そうなのです! すぐにベッドに寝かせたいのですか、私一人の力では難しくて……!」

『手伝う! 手伝う!』

 ホウキ達の手伝いの元、なんとか無事にルーク様をベッドに運んだ私は、苦しそうに寝息を立てるルーク様の枕元に、静かに椅子を置いて座ると、そっと頬に触れた。

 ……こんなに冷たくなって……冷や汗が凄かったから、体が冷え切ってしまっているのね。

『シャーロット、ご主人、大丈夫? 大丈夫?』

『ご主人、死んじゃう……?』

「大丈夫ですわ。ルーク様は、少し疲れて眠っているだけですから」

 ホウキ達も、とても心配そうにルーク様の周りに集まっている。私も、彼らと同じように、ルーク様の体がとても心配だ。

「なにか、私に出来ることは無いかしら……そうだ、確か魔力を沢山失ってしまった人に効く、薬草があると聞いたことがあるわ」

 私は薬師ではないから、その薬草がどういったものかはわからない。
 しかし、前にルーク様が、実験に使う素材として、調べたことがあると聞いたことがある。

「確か、小屋のどこかにそれが書かれている本があるはず。みんな、知らないかしら?」

『ぼく、よくわからない』

『草、そのへん、たくさん!』

『ぼく知ってる! ご主人、この本読んでた!』

 体を傾げるホウキ達の中の一体が、誇らしげに跳ねながら、大きな本棚にしまわれていた一冊の本を、器用に引っ張りだしてくれた。

「この本に……あった、これだわ!」

 パラパラと本のページをめくっていくと、目当ての薬草のことが書かれているページを見つけた。

 なになに……この薬草を煮出したものを飲めば効果があるみたいね。
 苦味があるみたいだから、味付けをして、他に具材を入れれば、栄養も取れて体も温まって、良いこと尽くめだ。

 多分だけど、町に行けばこの薬草を購入できるだろう。今すぐに買いに……と言いたいところだけど、既に外は真っ暗だ。こんな時間で、扱っている店が開いているはずがない。

 もどかしいけど、明日の朝に買いに行くしかない。早く朝になってくれないかしら……。


 ****


■ルーク視点■

 シャーロットを捕まえることに失敗した役立たずのアルバート共に、地下の牢屋にやってきた俺様は、一緒に連れてきた女の膝の上に腰を下ろした。

「は、ハリーお兄ちゃん……お、おしおきはなるべく優しくしてくれるとぉ……」

「その前に、今後のことを決めなければならん。お前が失敗したことで、計画に狂いが出たからな」

「うぅ……本当にごめんよぉ……」

 この出来損ないの弟の泣き言を聞いている暇はない。今すべきことは、今後どうやって兄上の研究を止めるかだ。

 兄上のことだから、俺様がシャーロットに手出しを出来る隙は一切与えないだろう。本人になにかしようにも、それも警戒されて無理だ。

 一見すると、手詰まりなようだが、あくまでそれは今の俺様の切れる手札では無理なだけだ。時間をかけて新たな手札を用意をすれば、不可能は可能になる。

「ふん、天才の俺様に感謝をするんだな。出来損ないのお前のために、尻拭いをしてやるのだから」

「えっ、もしかして何か方法があるのぉ~!?」

「ああ。少々荒っぽいやり方だが……これも俺様が王となるためだ。多少の無茶は押し通すしかあるまい。幸いにも、奴らは例の辺境の小屋を拠点にしているから、なにかあっても気づかれにくい」

「何が言いたいのかわからないよぉ~」

「察しの悪い弟だ。まあ、天才の俺様の考えを他者に察しろという方が無理な話か。お前もそう思うだろう」

「はい。ハリー様は世界一天才でございますわ」

 まったく、天才すぎるのも罪なものだ。さらに魔法の才能まであるのだから、父上が兄であるルークを差し置いて俺様に王位を譲るのも、仕方がないことだ。

「それで、どうするのぉ?」

「仕方がない。アルバートのために教えてやろう」

 ふんっと鼻から息を漏らしながら作戦を説明すると、アルバートはその内容に感動――はせず、珍しく難しい顔をしていた。

「……う~ん……やり方はわかったけど、結構無茶じゃないかなぁ……いくらその魔法を使っても、気づかれて逃げられたら意味がなくない?」

「俺様達だけなら、さすがに無理がある。だが、俺様達が奴らの逃げ道を塞ぐ魔道具に注力していれば、そう簡単には逃げられないだろう」

「そうなると、現地で魔法を使う人が必要だよねぇ。さっきの話に出てた魔法を発動させるには、相応の人間が必要だって聞いたことがあるけど……あてはあるのぉ?」

「よく考えろ……いるじゃないか。俺様達が弱みを握っていて、魔法の才能があり、シャーロットにいなくなってもらいたい奴らが……な」

「あっ……あぁ、なるほどね! あいつらなら適任だよぉ! さっすがハリーお兄ちゃん、天才っ!」

「ふんっ、当然のことで褒める必要は無い。さあ、そうと決まれば準備をしなくてはな。今回の要となる魔法は……時間がかかる。念の為に、俺様達に意識が向かないように、囮の作戦も考えておくか」

 しばらくの間、俺様は奴らに手出しをする暇がなくなるが、致し方あるまい。これも確実に脅威を取り除き、俺様が王となり、俺様とアルバートにとっての理想の国づくりをするためだ。
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