【完結】お飾りの婚約者としての価値しかない令嬢ですが、少し変わった王子様に気に入られて溺愛され始めました

ゆうき

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第六十四話 結果発表

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『今日もお掃除! お掃除!』

「……うぅん……」

 どこか遠くの方で、聞き覚えのある可愛らしい声が聞こえてくる。それも、一つだけではなく、いくつも同じものが。

 その声によって現実に引き戻された私は、ゆっくりと目を開けると、そこには見慣れた小屋の風景があった。

「ふわぁ……おはようございます。今日も精が出ますわね」

『シャーロット、おはよう! おはよう!』

『ゆっくり、眠れた?』

「ええ、とっても。おかげさまで、疲れがすっかり取れましたわ」

『よかった! よかった!』

 今日も元気なホウキ達は、私が回復した喜びを踊りで表現しはじめる。いつも思うのだが、ただクルクル回ったりジャンプをしているだけなのに、どうしてこんなに可愛らしいのだろう?

「……眠り過ぎたのかしら。体のあちこちが筋肉痛みたいな感じが……そうだ、ルーク様はお出かけしておられるのですか?」

『なんか、真剣な顔で出ていったよ?』

「きゃっ! も、もう……急に顔の近くで話されたら、驚いてしまいます」

『きゃははっ! イタズラ大成功~!』

 つい先程まではいなかったのに、突然私の顔のすぐ近くにまで来ていた男の子の精霊は、お腹を抱えながら、ケラケラと笑う。

 彼のイタズラなんて日常茶飯事ではあるが、うまくしてやられると、ちょっぴり悔しい。

『まったく、相変わらず子供ねぇ。ちなみに、イケメンの彼が出かけたのは、本当よ。例の裂け目で出かけてから、もう結構立つわね』

『ここ数日の間、僕達とホウキにシャーロットの世話を押し付けて出かけてるんだよねー』

 ……待って。私の聞き間違えじゃなければ、確かに数日と言ったわよね?

「あの、私って何日眠っていたのでしょう?」

『一ヶ月』

「一ヶ月ぅ!?」

 男の子の精霊が、いつもは見せないような真剣な表情で答える。

 この子がこんなに真面目な雰囲気をするのは、見たことがない。
 ということは、これはイタズラで嘘をついているわけじゃなくて、本当に一ヶ月も……!? それじゃあ、既に試験の結果は出ているってこと!?

『な~んて、うっそぴょ~ん! ギャハハハハ!』

「…………」

 家族に対して思う事はあっても、それ以外の人に思うことはあまりないのだけど……さすがにイラっとしたわ。

『うそ、ダメ! シャーロット、かわいそう!』

『そうよ。少しは時と場合を考えなさいよ』

『ちぇ~。ホウキなんかに言われてるようじゃ、おしまいだよ』

「えっと、結局のところ、どれぐらい眠っていたのでしょう?」

『大体三日ね。本当、ずっとぐっすり眠っててね。イケメンの彼が、このまま起きなかったらどうしようって、何度もつぶやいてて可愛かったわ』

 今度はどうやら嘘ではないみたい。それにしても、三日も眠っていただなんて……疲れていた自覚はあったとはいえ、さすがに驚いたわ。

『少し外の空気を吸ってきたらどうかしら? 今日も良いお天気よ』

『まあ、この辺は僕達以外の精霊の力で、ずっと明るいし、良い天気だけどね!』

『そんな今更なことをドヤ顔で言うとか、恥ずかしくないわけ?』

『そっちだって、わかってることをこれ見よがしに話して、ドヤ顔してただろ~!』

「はいはい。喧嘩はおやめくださいな。せっかくだから、みんなで遊びましょう」

 私の案は、直ぐに受け入れられることとなった。ホウキや精霊も一緒に外に出ると、追いかけっこを始めたり、泳いだり、かくれんぼをしたりと、様々な遊びを始めた。

「みんな可愛いですわね……私も、いつかはルーク様と結婚したら……」

 とても素敵な夢だけど、まだその夢が掴めるかはわからない。今出来ることは、合格を祈りながら、疲れ切った体を休めることよね。

 そんなことを考えていると、突然裂け目が開き、ルーク様が帰ってきた。

「ふぅ……あっ、シャーロット! よかった、目が覚めたんだね! もう目が覚めなかったらって思っちゃって……心配したんだよ!」

「ご心配をおかけして、申し訳ございません」

 私はルーク様に抱きしめられながら、謝罪の言葉を述べる。それからすぐに、互いが互いの顔を見つめ始め、そのままそっと、無事を祝してキスが交わされた。

「ルーク様、お仕事だったのではありませんか?」

「ああ。試験の会議はかなり難航していてね。合間合間に様子を見に来ているんだが、そうしたらシャーロットが起きていたんだよ」

「会議、どんな感じですか?」

「魔法の能力で言えば、マーガレットに分があるが、シャーロットを評価する人もいるよ」

「どちらが優勢なのですか?」

「認めたくはないが、わずかにマーガレットだ。だが、いつひっくり返ってもおかしくないから、当日まではわからないと思う」

 まだ実家にいた時は、あれだけ魔法の差があったのに、今ではマーガレットと戦えている。望んでいたこととはいえ、ここまで成長できたのは、感慨深いものがある。

「絶対に君は勝てる。そうすれば、ようやく復讐ができるね」

「……ええ、そうですわね」

 あれだけ私の心を燃やしていた復讐心。今では復讐心がゼロとは言わないけど、出来たら仕返しがしたいって程度にしかなっていない。これも、今回の一件で復讐心を克服したからだと思う。

 何かしらの方法でプライドに傷でもつけたら、多分私の復讐は終わりになるだろう。きっと、お母様もそれで良いって言ってくれるわ。

「それで、私の様子を見に来てくださったのですか?」

「シャーロットの様子を見つつ、休息を取りに戻ってきたんだ」

「そうでしたのね。では、私は大丈夫ですから、ごゆっくりお休みください」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 そう言うと、ルーク様はなぜか私を連れて小屋に入ると、私をベッドに寝かせて、私を背中から抱きしめる形で横になった。

「ちょ、ちょっとルーク様!?」

「ごめんね。ちょっと、シャーロットとのイチャイチャ成分が足りなくて、卒倒そうなんだ」

「イチャイチャ成分って何ですか……」

 よくわからないが、ルーク様がそれでいいなら、まあいいか……なんて言えないわ! だって、だって……恥ずかしいんだもの!

「シャーロット……本当に良く頑張ったね」

「ルーク様……」

 慈しむように呟きながら、私の頭に顔を埋める。それがなんとも言えない気持ちよさがあって……さっきまでの恥ずかしさを忘れて、目を閉じる。

 ぐっすり眠って疲れは取れていたはずなのに、そのまま私はもう一度眠りについてしまった。


 ****


 ついに訪れた、試験の合否の発表日。結果発表は、以前試験が行われた会場で行われる。観客も、試験の日に負けず劣らずといってもいいぐらいの人が来ていた。

「ふふっ、こんな大観衆の中で宮廷魔術師に選ばれて、大歓声を浴びると思うと、ゾクゾクしちゃう!」

「落ち着きなさい、マーガレット。お前が選ばれるのは既に決定事項なのだから、昨晩のうちに冷静になっておけと言っただろう?」

「お父様の言う通りだけど、やっぱり興奮しちゃうんだよ」

 結果を聞きに来たマーガレットと、付き添いのお父様が、既に勝利が絶対に決まっているかのような会話をしている中、私はルーク様と一緒に、静かに結果が出るのを待っていた。

「あれあれ、見てよお父様! 向こうは随分と大人しいよ? 負けだとわかってる結果を聞く側になると、ああなっちゃうのかな? あ~やだやだ。強すぎるっていうのも罪だね~」

「これも強者として受け入れなければいけないことだ。これからもお前は永遠の勝者なのだから、もっと慣れておくことだな」

「シャーロット、聞く耳を持つ必要は無いよ。所詮、彼らの戯言だ」

「わかっておりますわ」

 正直に言うと、あの二人が何を喚こうと、私の知ったことではない。

 なにせ、私はもう以前のような強い憎しみは抱いていない。それよりも、ルーク様との結婚や未来がこの結果で絶たれてしまう可能性を考えてしまい、酷く緊張してしまっている。

 実際に、私の口から心臓が出てしまいそうなくらい、胸がバクバクいっていて、体も小刻みに震えている。

「大丈夫、勝つのは君だ」

「ルーク様……」

 今日までの間、ルーク様は緊張し続ける私をずっと励ましてくれた。この励ましの言葉だって、もう何度聞いたかわからない。

 本当にルーク様には感謝してもしきれないが、同時に申し訳なさもある。だって、たくさんたくさん励ましてもらったのに、私は依然として緊張し続けているのだから。

「皆様、お待たせいたしました。本日もお忙しい中お越しいただき、誠にありがとうございます」

 今日も前回と同じ男性が、進行を務めるようだ。今日もはきはきとした話し方で、とても聞きやすい。

「まず皆様に先にご報告したいことがございます。今年の宮廷魔術師の試験ですが……合格者が一名ございます!」

 彼の発表で、会場中がざわつく。久しぶりの合格者が出たのだから、驚く気持ちは痛いほどわかる。

 私も驚いている立場だが、同時に少しだけホッとした。ここで合格者はいないと言われたら、その時点で終わりだもの。

「では、合格者にはパギア様から宮廷魔術師の証である帽子が贈られます」

 パギア様は、手に持っていた大きな魔法使いの帽子を持ちながら、地面に魔法陣を描く。すると、帽子は彼女の手から消えた。

「ふふん、随分とじらすじゃん。まあ、その分あたしへの賛美の声が大きくなるからいっか」

「……お願い……」

 両手を組んでお願いをする私とは対照的に、マーガレットは余裕たっぷりに胸を張っている。あまりにも対極的な待ち方だ。

「今年の合格者は、こちらの方です!」

 彼の言葉が会場中に響くと同時に、帽子は合格者である人の手に収まった。

 ――今年の合格者は……。
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