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第八十一話 自分のしたことは、全て自分に……
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「きゅう……」
すっかり伸びて大人しくなってしまったハリー様を前に、私はぼんやりと立ち尽くしていた。
……完全にやらかしてしまった。いくら相手がハリー様とはいえ、曲がりなりにも王族。そんな相手に、頭に血が上ってビンタを二回もしてしまった……。
「その、私……えっと……」
『よくやったわよ、シャーロット! いやぁ~、スカッとしたわ! ざまーみろっての!』
「彼女の言う通りだ。ハリーにはこんなものでは到底足りないくらい、非道なことをしてきたからね」
あ、あれ……? よかった、私も一緒に捕まるかと覚悟したのに、許してもらえたみたい。
「本当なら、余が親として叱らなければならんというのに……まったく、余はつくづく親として失格であるな」
「父上、あまり自分を責めてはなりません」
「ありがとう。だが、事実である以上、受け入れなければならんことだ。皆の者、ハリーを地下牢に閉じ込めておけ」
「はっ!!」
国王様に命令された兵士達は、相手が王子であるにもかかわらず、随分と乱暴に地下牢へと連れていった。
これはあくまで私の仮説だけど、日頃から色々な人から恨みを買っていた可能性がある。そうじゃなきゃ、いくら命令とはいえ、王族にあんなに乱暴にするとは思えない。
「さて、ハリーの処罰についてだが……裁判と調査次第ではあるが、極刑は免れんだろうな」
「極刑というと……やはり処刑とかなのでしょうか?」
「うむ」
一般的には、処刑にはギロチンを用いられるのだが……ハリー様に、果たしてその刑は適しているのだろうか?
「その……一つ、刑について提案があるのですが……」
さすがにこれは、少しだけやり過ぎかと思いつつも、処罰についてみんなに話すと、とても難しい顔をしていた。
「ハリ―様には、これくらいした方が良いかと思ったのですが……」
「僕としては、悪くない案だと思う。人にやったことは、巡り巡って自分に返ってくる感じが、とても良いね」
「だが、それは我々の一存では決めることは不可能である。そなたの案は処罰の一つとして、裁判の場に持っていかせてもらう」
「わかりました。ありがとうございます」
「国王様、そろそろお部屋に戻ってお休みください。お体に変化がないか、調べさせていただきたいのです」
「うむ。では、余はこれで失礼するが……ルーク達はどうするかね?」
「僕達は、一度新しく生活し始めた場所に帰ります」
「わかった。気をつけてな」
国王様は、お医者様に連れられて、ゆっくりとその場を去っていく。それを見送っていると、セラピアがニヤニヤと笑いながら、私の頬を突っついていた。
『あんたも、結構えぐいことを考えるわね。まあ、私としてはそれが一番良い案だと思うけどね! 考えるだけで、さらにスカッとするわ~!』
「それほど、ハリーは酷いことをしたからね。過去の行いも考えれば、これでもぬるいと思うよ」
『……あんたも大概よねぇ。一応実の兄弟でしょ?』
「兄弟だからって、なんでも許せるわけじゃないからね。まあ、僕のシャーロットに手を出した時点で、極刑は免れないけどね。あははっ」
恥ずかしいような、物騒なような、なんとも言えないことを言わないでほしい。反応に困ってしまうから。
「さてと、それじゃあ一度帰って休むとしようか。セラピア、精霊の皆にもう大丈夫だって伝えてくれるかな?」
『はーい、任せておきなさい』
はぁ……これで、ようやくすべてが終わったのね。なんだかここ最近で色々あり過ぎたせいで、一気に疲れが出た気がする。早く帰って、何も考えずに休みたいわ……。
「な、何事かと思って見に来たら……凄く大変なことになってる!? まずいよまずいよぉ……こうしちゃいられない。巻き込まれる前に、逃げないと……」
『んあ? なんか怪しい奴がいるんだなぁ~。知らない相手だけど、一応イタズラしておくんだなぁ~』
「えっ、なんだこの長い毛……うわぁ!? 急に体に絡みついてきた!? 動けな……た、たすけてぇー! ハリーお兄ちゃーん!!」
****
ハリー様と決着がついた日から、二ヶ月後。新しい家でゆっくり休んで心身ともに回復した私は、新人宮廷魔術師として、忙しく働く日々を送っていた。
そんなある日、私はルーク様と一緒に、とある場所に呼び出された。その場所とは、ハリー様が閉じ込められていた、地下牢だった。
この二ヶ月の間、国王様やルーク様を交えた多くの人の協議と裁判を経て、ハリー様への処罰が決まり、その執行日が今日なの。
その処罰とは、私が以前提案したものだ。協議と裁判の中で、この刑が最も残酷で、ハリー様への罰になるという結論が付けられたからだ。
……そうそう、一緒にアルバート様への処罰も話し合いをされたみたい。なんでも、長い毛が絡まって動けなくなっていたところを保護した後、ルーク様の命令で、身柄を拘束されていたそうだ。
ハリー様の自供で、アルバート様も協力していたことが明るみになり、協力者として、先に処罰された。
ルーク様曰く、アルバート様は辺境の地にある教会に送られ、そこで厳しい再教育がされるとのことだ。
再教育って、一体何をするつもりなのだろう? 少し気になるけど、聞かない方が幸せな気がしてならない。
「愚かな息子よ、随分と変わり果てた姿になったものだな」
「……父上……兄上……シャーロット……!」
ずっと地下牢に閉じ込められていたこともあり、驚くほどボロボロになっているが、相変わらず人を見下すような目は変わっていない。
「くそっ……俺様の計画がうまくいっていれば……貴様ら全員、もう既にこの世にいないはずなのに……! どうして、俺様がこんな目に……!」
見た目だけではなく、中身も全く変わっていないようだ。
少しは反省していれば、さすがに今回の処罰はかわいそうと思えたかもしれないけど……逆にこの方が、清々しく見送れるわね。
「ハリー、貴様への処罰が決まった。本日は、それを実行する時が来た」
国王は、手に持っていた杖で地面をコンっと叩くと、部屋いっぱいに魔法陣が広がった。すると、その魔法陣から、見覚えのある黒い球体が出現した。
「ま、まさかこれは……あの禁術か!? 父上、なんの冗談だ!? 俺様を脅して、更に何か聞き出したいのか!?」
「否。貴様はこの魔法に呑まれ、永遠の苦しみを味わってもらう。それが貴様への処罰であり、償いだ」
「ふ、ふざけるな!! こんなことをされる謂れは無い!」
よくもまあ、そんなことが言えたものね。この人が今まで行ってきた悪事の数々を聞いた後だと、そんな感想しか出てこない。
こんな人間が計画通りに進んでいれば、国王になっていたら……なんてことを思っていると、黒い球から触手が伸び、ハリー様の体を掴んだ。
「……何か声が聞こえないかい?」
「声ですか……?」
『アァ……ハリー……!』
「えっ、なにこの声……聞いているだけで、背筋が冷たくなる……!」
『憎イ……痛イ……苦シイ……全部、全部……オ前ノセイダ……!』
「ひい!? まさか貴様は……俺様に利用される程度の価値しかない分際で、なにをするつもりだ! やめろ、来るな……嫌だ、こんなところで一生苦しみたくない! 誰か、俺様を助けろ! 早く、いっそのこと殺してくれてもいいから!!」
あれだけずっと偉そうにしていたのに、いざ自分が恐怖に晒されたら、涙と鼻水で顔を滅茶苦茶にしながら許しを請うだなんて……つくづく救いようがない人だ。
『オ前モ、アタシト一緒ニ……苦シメ……永遠ノ、苦痛ヲ……!』
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!? い、痛い!? 熱い! 冷たい!! なんなんだこれは!? ぐあああああ! 焼けこげるぅぅぅぅ!! ぐっはぁぁぁぁぁ!? そんな、締め付けるなぁ! がっ、はぁ……首、にぃ!? い、息が……でき、ない……タス、ケ……!」
必死の命乞いも虚しく、ハリー様は黒いものに呑み込まれ、消えていった。
……あの声って、もしかして……ううん、私は関係のないことだ。全て、あの人達が自分で蒔いた種だもの。
なんにせよ、これでハリー様との戦いは、完全に幕を下ろしたのだった。
すっかり伸びて大人しくなってしまったハリー様を前に、私はぼんやりと立ち尽くしていた。
……完全にやらかしてしまった。いくら相手がハリー様とはいえ、曲がりなりにも王族。そんな相手に、頭に血が上ってビンタを二回もしてしまった……。
「その、私……えっと……」
『よくやったわよ、シャーロット! いやぁ~、スカッとしたわ! ざまーみろっての!』
「彼女の言う通りだ。ハリーにはこんなものでは到底足りないくらい、非道なことをしてきたからね」
あ、あれ……? よかった、私も一緒に捕まるかと覚悟したのに、許してもらえたみたい。
「本当なら、余が親として叱らなければならんというのに……まったく、余はつくづく親として失格であるな」
「父上、あまり自分を責めてはなりません」
「ありがとう。だが、事実である以上、受け入れなければならんことだ。皆の者、ハリーを地下牢に閉じ込めておけ」
「はっ!!」
国王様に命令された兵士達は、相手が王子であるにもかかわらず、随分と乱暴に地下牢へと連れていった。
これはあくまで私の仮説だけど、日頃から色々な人から恨みを買っていた可能性がある。そうじゃなきゃ、いくら命令とはいえ、王族にあんなに乱暴にするとは思えない。
「さて、ハリーの処罰についてだが……裁判と調査次第ではあるが、極刑は免れんだろうな」
「極刑というと……やはり処刑とかなのでしょうか?」
「うむ」
一般的には、処刑にはギロチンを用いられるのだが……ハリー様に、果たしてその刑は適しているのだろうか?
「その……一つ、刑について提案があるのですが……」
さすがにこれは、少しだけやり過ぎかと思いつつも、処罰についてみんなに話すと、とても難しい顔をしていた。
「ハリ―様には、これくらいした方が良いかと思ったのですが……」
「僕としては、悪くない案だと思う。人にやったことは、巡り巡って自分に返ってくる感じが、とても良いね」
「だが、それは我々の一存では決めることは不可能である。そなたの案は処罰の一つとして、裁判の場に持っていかせてもらう」
「わかりました。ありがとうございます」
「国王様、そろそろお部屋に戻ってお休みください。お体に変化がないか、調べさせていただきたいのです」
「うむ。では、余はこれで失礼するが……ルーク達はどうするかね?」
「僕達は、一度新しく生活し始めた場所に帰ります」
「わかった。気をつけてな」
国王様は、お医者様に連れられて、ゆっくりとその場を去っていく。それを見送っていると、セラピアがニヤニヤと笑いながら、私の頬を突っついていた。
『あんたも、結構えぐいことを考えるわね。まあ、私としてはそれが一番良い案だと思うけどね! 考えるだけで、さらにスカッとするわ~!』
「それほど、ハリーは酷いことをしたからね。過去の行いも考えれば、これでもぬるいと思うよ」
『……あんたも大概よねぇ。一応実の兄弟でしょ?』
「兄弟だからって、なんでも許せるわけじゃないからね。まあ、僕のシャーロットに手を出した時点で、極刑は免れないけどね。あははっ」
恥ずかしいような、物騒なような、なんとも言えないことを言わないでほしい。反応に困ってしまうから。
「さてと、それじゃあ一度帰って休むとしようか。セラピア、精霊の皆にもう大丈夫だって伝えてくれるかな?」
『はーい、任せておきなさい』
はぁ……これで、ようやくすべてが終わったのね。なんだかここ最近で色々あり過ぎたせいで、一気に疲れが出た気がする。早く帰って、何も考えずに休みたいわ……。
「な、何事かと思って見に来たら……凄く大変なことになってる!? まずいよまずいよぉ……こうしちゃいられない。巻き込まれる前に、逃げないと……」
『んあ? なんか怪しい奴がいるんだなぁ~。知らない相手だけど、一応イタズラしておくんだなぁ~』
「えっ、なんだこの長い毛……うわぁ!? 急に体に絡みついてきた!? 動けな……た、たすけてぇー! ハリーお兄ちゃーん!!」
****
ハリー様と決着がついた日から、二ヶ月後。新しい家でゆっくり休んで心身ともに回復した私は、新人宮廷魔術師として、忙しく働く日々を送っていた。
そんなある日、私はルーク様と一緒に、とある場所に呼び出された。その場所とは、ハリー様が閉じ込められていた、地下牢だった。
この二ヶ月の間、国王様やルーク様を交えた多くの人の協議と裁判を経て、ハリー様への処罰が決まり、その執行日が今日なの。
その処罰とは、私が以前提案したものだ。協議と裁判の中で、この刑が最も残酷で、ハリー様への罰になるという結論が付けられたからだ。
……そうそう、一緒にアルバート様への処罰も話し合いをされたみたい。なんでも、長い毛が絡まって動けなくなっていたところを保護した後、ルーク様の命令で、身柄を拘束されていたそうだ。
ハリー様の自供で、アルバート様も協力していたことが明るみになり、協力者として、先に処罰された。
ルーク様曰く、アルバート様は辺境の地にある教会に送られ、そこで厳しい再教育がされるとのことだ。
再教育って、一体何をするつもりなのだろう? 少し気になるけど、聞かない方が幸せな気がしてならない。
「愚かな息子よ、随分と変わり果てた姿になったものだな」
「……父上……兄上……シャーロット……!」
ずっと地下牢に閉じ込められていたこともあり、驚くほどボロボロになっているが、相変わらず人を見下すような目は変わっていない。
「くそっ……俺様の計画がうまくいっていれば……貴様ら全員、もう既にこの世にいないはずなのに……! どうして、俺様がこんな目に……!」
見た目だけではなく、中身も全く変わっていないようだ。
少しは反省していれば、さすがに今回の処罰はかわいそうと思えたかもしれないけど……逆にこの方が、清々しく見送れるわね。
「ハリー、貴様への処罰が決まった。本日は、それを実行する時が来た」
国王は、手に持っていた杖で地面をコンっと叩くと、部屋いっぱいに魔法陣が広がった。すると、その魔法陣から、見覚えのある黒い球体が出現した。
「ま、まさかこれは……あの禁術か!? 父上、なんの冗談だ!? 俺様を脅して、更に何か聞き出したいのか!?」
「否。貴様はこの魔法に呑まれ、永遠の苦しみを味わってもらう。それが貴様への処罰であり、償いだ」
「ふ、ふざけるな!! こんなことをされる謂れは無い!」
よくもまあ、そんなことが言えたものね。この人が今まで行ってきた悪事の数々を聞いた後だと、そんな感想しか出てこない。
こんな人間が計画通りに進んでいれば、国王になっていたら……なんてことを思っていると、黒い球から触手が伸び、ハリー様の体を掴んだ。
「……何か声が聞こえないかい?」
「声ですか……?」
『アァ……ハリー……!』
「えっ、なにこの声……聞いているだけで、背筋が冷たくなる……!」
『憎イ……痛イ……苦シイ……全部、全部……オ前ノセイダ……!』
「ひい!? まさか貴様は……俺様に利用される程度の価値しかない分際で、なにをするつもりだ! やめろ、来るな……嫌だ、こんなところで一生苦しみたくない! 誰か、俺様を助けろ! 早く、いっそのこと殺してくれてもいいから!!」
あれだけずっと偉そうにしていたのに、いざ自分が恐怖に晒されたら、涙と鼻水で顔を滅茶苦茶にしながら許しを請うだなんて……つくづく救いようがない人だ。
『オ前モ、アタシト一緒ニ……苦シメ……永遠ノ、苦痛ヲ……!』
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!? い、痛い!? 熱い! 冷たい!! なんなんだこれは!? ぐあああああ! 焼けこげるぅぅぅぅ!! ぐっはぁぁぁぁぁ!? そんな、締め付けるなぁ! がっ、はぁ……首、にぃ!? い、息が……でき、ない……タス、ケ……!」
必死の命乞いも虚しく、ハリー様は黒いものに呑み込まれ、消えていった。
……あの声って、もしかして……ううん、私は関係のないことだ。全て、あの人達が自分で蒔いた種だもの。
なんにせよ、これでハリー様との戦いは、完全に幕を下ろしたのだった。
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