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第二話 婚約者は既に奪われていた
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朝から草むしりを始めて、いつの間にか辺りが闇に包まれてきた。私の体は寒さで全く感触が無くなっていたが、ある程度の草を片付けることが出来た。
ここまで来ると、もう多少の傷では何も痛みを感じなくなっている。それが功を奏して、途中から回復魔法で傷を治す手間が省けたわ。
「ほう、それなりに片づけたようだな、エレナ」
「……アーロイ様」
少しでも寒さに対抗する為に、はぁ~……と、両手に息を吹きかけていると、とても暖かそうなモコモコの上着を着たアーロイ様がやってきた。
あんなモコモコな服なんて、随分と触れてすらいない。ベッド代わりに使っている藁は硬いしチクチクしているし、服はボロボロの布一枚だからね。
「人殺しが得意な聖女様は、自然破壊も得意ということか」
「…………」
そんな嫌味を言わなくてもいいじゃない……昔のアーロイ様なら、お疲れ様の一言くらいくれたでしょうに……本当に変わってしまったのね。
「まあいい。部屋に食事の用意はしてあるから、さっさと食って寝ろ。当然明日もしてもらうからな」
「わかりました……」
結局何の労いもなく、私を地下牢に連れていったアーロイ様は、そのまま私を牢屋の中に放り出した。
……今日は酷く疲れたわ。正直あまり食欲もないし、体が凍えて眠れそうも無いけど、早く休んだ方が良いだろう。
「えっと、ごはんは……え?」
ベッドの横に置かれた金属製の汚い皿と、ガラスのコップには、これまた汚い水と、ほとんど具が入っていないスープがよそわれていた。
それはいつものことだが、問題はそれじゃない。なんと、両方共大量の氷が入れられていて、キンキンに冷えていた。
ただでさえずっと寒い中で草むしりをしていたのに、こんな物を食べたら、更に体が冷えてしまう。完全に嫌がらせをしているとしか思えない。
「どうだ、ボクがコックにわざわざ直接言って用意させたものだ。咽び泣いて食べると良い。それじゃあ、ボクは失礼する。暖かい食事が待っているのでね」
「…………」
楽しそうに笑いながら去っていくアーロイ様を見送った私は、大きく溜息を漏らした。
こんな嫌がらせは日常茶飯事だけど、今日は中々に厳しい嫌がらせだ。
「……仕方ないわね」
私は、壁に掛かっていた燭台を取り外すと、火をスープが入っている金属に当てる。これで熱々には出来なくても、少しはマシになるだろう。それに、温めている間、火に当たって体を暖めることも出来る。
「……この火で……私の体を……って、何を考えているの私は!」
ぼんやりと温まるのを待っていると、変な考えが頭を過ぎった。
弱気になってはいけないのに、疲れているせいか、余計なことばかり考えてしまう。まだあまり温まっていないけど、さっさと食べて寝てしまおう。
……いつもほとんど味がしないのに、今日はいつもより、ほんの少しだけしょっぱい気がするわね……。
****
「エレナ、さっさと起きなさい!!」
「っ!?」
翌日。昨日の疲れでいつも以上にぐっすりと眠っていた私は、耳をつんざくような甲高い声に起こされた。
び、ビックリした……アーロイ様、いつの間にそんな声を出せるように……って、どう考えてもアーロイ様じゃないわね。
「ようやくお目覚めかしら、落ちこぼれ」
「ジェシー……」
鉄格子の向こうに立っていたのは、アーロイ様と一人の女性だった。彼女は私に悪口を言いながら、少しウェーブがかかった、長い桃色の髪をかきあげていた。
彼女の名はジェシー・デーフォル。七年前、聖女として既に名が知れていた母さんの元に、弟子入りしたいと言って屋敷にやってきたのが、彼女との出会いだ。
元々は貧民層に住んでいたジェシーには、聖女の力があり、この屋敷で働きながら、母さんから聖女の力を学んでいた。
もちろん私とも交流はあるけど、私はジェシーに嫌われている。それは、先程の数秒のやり取りでもわかるだろう。
自分よりも才能がない私のことを、母さんがとても可愛がっていたことや、助手として私を連れていたことが気に入らないから、私を嫌っているというのを、屋敷の使用人達が話しているのを聞いたことがある。
それと、ジェシーは昔からアーロイ様に想いを寄せていたが、アーロイ様が私と婚約を結んだことも、気に入らないんだと思う。
アーロイ様とは確かに婚約をしていたが、私自身に彼に異性としての好意があったわけじゃない。それでも、ジェシーは気に入らなかったのだろう。
私としては、ジェシーのことは苦手ではあるけど、少しは仲良くしたいと思っている。無理な話なのは重々承知だけどね。
「ジェシーが来るなんて珍しいわね……何か用?」
「は? 何その態度。どっちが偉いかわかって言ってるのかしら!」
「…………」
ジェシーは一体何を言っているのだろうか。私達の間には、特に主従関係は無いんだから、偉いとかそういうのは一切無いというのに。
「ジェシー、まだこいつにはあのことを言ってないだろう? それではこの間抜け面になるのも無理はない」
「そうですわね、アーロイ様! 私達、数日後に結婚式をあげるの!」
「それはおめでたい……え? 私……達?」
「ええそうよ。私とアーロイ様が結婚をするの。屋敷の者や他の家の人間をたくさん呼んで、大規模な結婚式にするのよ!」
ちょっと待って、どういうこと? こんな酷い仕打ちをされてはいるけど、私が一応婚約者なのよ? それなのに、どうして二人が結婚をするの?
「なんだその面は。まさか、まだ自分が婚約者だと思っていたのか?」
「いや、その……」
「アハハハハハ! どれだけおめでたい頭をしてるのよ!」
ジェシーの甲高い笑い声が、いつも不気味なくらい静かな地下牢に響き渡る。私には、それが酷く耳障りに聞こえた。
「母上を失った悲しみに押しつぶされそうだったボクに、彼女がずっと寄り添ってくれていてね。それで、ボクは彼女の優しさと美しさに気づいたんだ。エレナなんかよりも、とても素晴らしい女性だとね。だから彼女と結婚する為に……お前との婚約は破棄することにした」
……そうか。悲しみで弱っていたアーロイ様につけこむように、ジェシーがアーロイ様に言い寄ったんだ。卑怯だけど、とても有効的なやり方と言わざるを得ない。
「本当にあの時のアーロイ様は可哀想でしたわ……」
「あの時は悪かったね、ジェシー。でもボクが落ち込んで君が慰めてくれなければ、エレナに復讐としてここに入れるという、君の助言を聞けなかったよ」
っ……!? 私がこんな仕打ちを受けているのは、ジェシーのせいだったの!? てっきりアーロイ様が、私への怒りと悲しみでしているのだとばかり……!
ううん、今となってはどちらが原因でもいい。ジェシーがアーロイ様に提案をして、決めたのはアーロイ様。私は……とっくに婚約者ではなく、ただの二人の憎しみのぶつけ先という、オモチャにされていただけだわ。
「さて、話すことも話して満足したし、私は失礼しますわ。ここはカビ臭くてたまったものじゃないもの」
「ああ、先に戻っているといい。エレナ、お前は今日も仕事だ」
「……はい」
私は二人に何も言えないまま、昨日と同様の格好で、寒空の下に放置された。
アーロイ様が変わるかもと、淡い希望を持っていたけど、それが断たれた今……ここにいても、何も希望が無い。待っているのは苦痛と、死だけだというのが、はっきりとわかった。
そして、二人の結婚式……私にとってショックなのに違いは無いけど、これはチャンスだ。
先程ジェシーは、沢山の人を呼んで式を挙げると言っていた。それは、屋敷の人間も含まれていたわ。
ということは……いつもより、警備が薄くなるはず。その隙を突いて、ここを逃げ出そう。そして、どこか遠くの地でひっそりと生きるんだ。
母さん、ごめんね。ずっと母さんが仕えていたレプグナテ家を裏切ることになっちゃうけど……まだ私は母さんの言いつけを守りたい。だから……叱るのは、もう少し先まで待っててほしいな。
ここまで来ると、もう多少の傷では何も痛みを感じなくなっている。それが功を奏して、途中から回復魔法で傷を治す手間が省けたわ。
「ほう、それなりに片づけたようだな、エレナ」
「……アーロイ様」
少しでも寒さに対抗する為に、はぁ~……と、両手に息を吹きかけていると、とても暖かそうなモコモコの上着を着たアーロイ様がやってきた。
あんなモコモコな服なんて、随分と触れてすらいない。ベッド代わりに使っている藁は硬いしチクチクしているし、服はボロボロの布一枚だからね。
「人殺しが得意な聖女様は、自然破壊も得意ということか」
「…………」
そんな嫌味を言わなくてもいいじゃない……昔のアーロイ様なら、お疲れ様の一言くらいくれたでしょうに……本当に変わってしまったのね。
「まあいい。部屋に食事の用意はしてあるから、さっさと食って寝ろ。当然明日もしてもらうからな」
「わかりました……」
結局何の労いもなく、私を地下牢に連れていったアーロイ様は、そのまま私を牢屋の中に放り出した。
……今日は酷く疲れたわ。正直あまり食欲もないし、体が凍えて眠れそうも無いけど、早く休んだ方が良いだろう。
「えっと、ごはんは……え?」
ベッドの横に置かれた金属製の汚い皿と、ガラスのコップには、これまた汚い水と、ほとんど具が入っていないスープがよそわれていた。
それはいつものことだが、問題はそれじゃない。なんと、両方共大量の氷が入れられていて、キンキンに冷えていた。
ただでさえずっと寒い中で草むしりをしていたのに、こんな物を食べたら、更に体が冷えてしまう。完全に嫌がらせをしているとしか思えない。
「どうだ、ボクがコックにわざわざ直接言って用意させたものだ。咽び泣いて食べると良い。それじゃあ、ボクは失礼する。暖かい食事が待っているのでね」
「…………」
楽しそうに笑いながら去っていくアーロイ様を見送った私は、大きく溜息を漏らした。
こんな嫌がらせは日常茶飯事だけど、今日は中々に厳しい嫌がらせだ。
「……仕方ないわね」
私は、壁に掛かっていた燭台を取り外すと、火をスープが入っている金属に当てる。これで熱々には出来なくても、少しはマシになるだろう。それに、温めている間、火に当たって体を暖めることも出来る。
「……この火で……私の体を……って、何を考えているの私は!」
ぼんやりと温まるのを待っていると、変な考えが頭を過ぎった。
弱気になってはいけないのに、疲れているせいか、余計なことばかり考えてしまう。まだあまり温まっていないけど、さっさと食べて寝てしまおう。
……いつもほとんど味がしないのに、今日はいつもより、ほんの少しだけしょっぱい気がするわね……。
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「エレナ、さっさと起きなさい!!」
「っ!?」
翌日。昨日の疲れでいつも以上にぐっすりと眠っていた私は、耳をつんざくような甲高い声に起こされた。
び、ビックリした……アーロイ様、いつの間にそんな声を出せるように……って、どう考えてもアーロイ様じゃないわね。
「ようやくお目覚めかしら、落ちこぼれ」
「ジェシー……」
鉄格子の向こうに立っていたのは、アーロイ様と一人の女性だった。彼女は私に悪口を言いながら、少しウェーブがかかった、長い桃色の髪をかきあげていた。
彼女の名はジェシー・デーフォル。七年前、聖女として既に名が知れていた母さんの元に、弟子入りしたいと言って屋敷にやってきたのが、彼女との出会いだ。
元々は貧民層に住んでいたジェシーには、聖女の力があり、この屋敷で働きながら、母さんから聖女の力を学んでいた。
もちろん私とも交流はあるけど、私はジェシーに嫌われている。それは、先程の数秒のやり取りでもわかるだろう。
自分よりも才能がない私のことを、母さんがとても可愛がっていたことや、助手として私を連れていたことが気に入らないから、私を嫌っているというのを、屋敷の使用人達が話しているのを聞いたことがある。
それと、ジェシーは昔からアーロイ様に想いを寄せていたが、アーロイ様が私と婚約を結んだことも、気に入らないんだと思う。
アーロイ様とは確かに婚約をしていたが、私自身に彼に異性としての好意があったわけじゃない。それでも、ジェシーは気に入らなかったのだろう。
私としては、ジェシーのことは苦手ではあるけど、少しは仲良くしたいと思っている。無理な話なのは重々承知だけどね。
「ジェシーが来るなんて珍しいわね……何か用?」
「は? 何その態度。どっちが偉いかわかって言ってるのかしら!」
「…………」
ジェシーは一体何を言っているのだろうか。私達の間には、特に主従関係は無いんだから、偉いとかそういうのは一切無いというのに。
「ジェシー、まだこいつにはあのことを言ってないだろう? それではこの間抜け面になるのも無理はない」
「そうですわね、アーロイ様! 私達、数日後に結婚式をあげるの!」
「それはおめでたい……え? 私……達?」
「ええそうよ。私とアーロイ様が結婚をするの。屋敷の者や他の家の人間をたくさん呼んで、大規模な結婚式にするのよ!」
ちょっと待って、どういうこと? こんな酷い仕打ちをされてはいるけど、私が一応婚約者なのよ? それなのに、どうして二人が結婚をするの?
「なんだその面は。まさか、まだ自分が婚約者だと思っていたのか?」
「いや、その……」
「アハハハハハ! どれだけおめでたい頭をしてるのよ!」
ジェシーの甲高い笑い声が、いつも不気味なくらい静かな地下牢に響き渡る。私には、それが酷く耳障りに聞こえた。
「母上を失った悲しみに押しつぶされそうだったボクに、彼女がずっと寄り添ってくれていてね。それで、ボクは彼女の優しさと美しさに気づいたんだ。エレナなんかよりも、とても素晴らしい女性だとね。だから彼女と結婚する為に……お前との婚約は破棄することにした」
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っ……!? 私がこんな仕打ちを受けているのは、ジェシーのせいだったの!? てっきりアーロイ様が、私への怒りと悲しみでしているのだとばかり……!
ううん、今となってはどちらが原因でもいい。ジェシーがアーロイ様に提案をして、決めたのはアーロイ様。私は……とっくに婚約者ではなく、ただの二人の憎しみのぶつけ先という、オモチャにされていただけだわ。
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私は二人に何も言えないまま、昨日と同様の格好で、寒空の下に放置された。
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