【完結済】逆恨みで婚約破棄をされて虐待されていたおちこぼれ聖女、隣国のおちぶれた侯爵家の当主様に助けられたので、恩返しをするために奮闘する

ゆうき

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第二十二話 母さんを知っている……?

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 休憩を終えて出発した私達は、目的地の森にたどり着いた。鬱蒼とした森は、何とも不気味な雰囲気を醸し出している。

 ここに本当に人が住んでいるのだろうか? 私なら、こんな不気味な場所になんて、絶対に住みたくない。

「そういえば、この森に聖女がいるって話は聞いてますけど、森のどこにいるかっていうのは知ってるんですか?」
「残念ながら、それはわかりません。しかし、探す術はあります」

 探す術? こんな広そうな森の中から探す方法なんて、私には全然思いつかないわ。

「今日私達をここまで連れて来てくれた御者が、魔法が得意な方でして。特に、魔力を感知する力に優れているのです」
「魔力感知……」
「ええ。彼曰く、聖女のような特殊な魔法を使える人は、とてもわかりやすいそうですよ。感知できる範囲が狭いから、あまり使いものにならない、なんて謙遜もしておりましたが」

 そんな謙遜しないで、もっと胸を張ればいいのに。だって、こうして私達の力になってくれている、とても凄い力なのだから。

 ……私なんかの使い物にならない聖女の力より、全然良いと思うし。

「ウィルフレッド様。見つけました」
「本当か?」
「はい。しかし、見つけた直後に唐突に魔力を感知出来なくなりました。おそらく、向こうで何かしらの方法を使って、魔力を遮断したのかと」
「とりあえず、今の感知を頼りに向かってほしい。正確な位置はわからなくとも、方角がわかれば近くに行くことは出来るはずだ」
「かしこまりました」

 外にいる御者と会話を終えたウィルフレッド様は、何か考えるように、顎に手を当てて目を伏せた。

 こういう時に、私ももっと力になれれば……回復魔法の他にも、何か魔法が使えればなぁ……。

 一応これでも、レプグナテ家にいる時に回復魔法以外の魔法の勉強もしていたのだけど、軒並み習得することが出来なかったの。教えてくれた人が言うには、回復魔法しか魔法の才能が無いらしい。

 ……その唯一の才能も、この有様だから笑っちゃうわ。はぁ……。

『なんじゃ、ぞろぞろと森を荒しおって』
「……ウィルフレッド様、なんか言いましたか?」
「いえ、何も……」
「そうですか……私の空耳?」

 確かに何か声みたいなのが聞こえたのに、ウィルフレッド様は小首を傾げて否定を示した。

 私の空耳にしては、やたらとはっきり聞こえたような気が……風の音? それにしては明らかに不自然だし……。

『空耳じゃないわ阿呆め』
「わぁ!? や、やっぱり何か聞こえる!」
「……今のは私も聞こえましたね。何か近くに潜んでいるのかもしれません。一旦止まって、周りの様子を確認を」
「かしこまりました!」

 ウィルフレッド様が御者に指示を出すと、馬車はゆっくりと止まった。

 やっぱり空耳じゃなかったんだわ! 誰か近くにいるの? でも、外を見てもあるのは木ばかり。人なんてどこにもいない……!

『魔法で儂の声を飛ばしておるのじゃよ。全く、急に感知魔法を飛ばす無礼者だとは思っておったが、知性にも欠けておるとは』
「もしかして、あなたがこの森の聖女なんですか!?」
『そうだと言ったら?』
「お願いします! 私にあなたの回復魔法を教えてください!」

 どこにいるかもわからない聖女様に向かって、私は声を荒げながら、大きく頭を下げた。すると、聞こえてきたのは声ではなく、鼻をフンッと鳴らす音だった。

『断る。儂が貴様に教える義理など無い。それに、回復魔法は聖女しか扱うことは出来んのじゃよ』
「わ、私も聖女です! 回復魔法は使えます!」
『ほう。なら自分で勉強をして、その力で金稼ぎでもするがいい。儂は忙しいんじゃ。ほれさっさと帰れ。シッシッ』

 事前に聞いていた通り、やはり歓迎はしてくれないみたいだ。でも、はいそうですかなんて引き下がるわけにもいかないわ。

「もちろん自分で勉強しましたが、上手くいかなくて……どうしてもウィルフレッド様を治したくて、あなたに教えを乞いに来たんです! お願いします!」

 私の姿が見えているかはわからないけど、少しでも誠意が伝わるように深々と頭を下げる。

「私は……ウィルフレッド様を治して、幸せになってもらいたいんです! 大切な人達のために頑張ってるウィルフレッド様に、報われてほしいんです! だから……お願いします!」
『そんな綺麗事など、もう飽きる程聞かされたわ。人間というのは、そう言って善人ぶって甘い蜜を吸う、醜い生き物じゃ。儂はそういう人間を嫌というほど見てきたから、よーく知っておる』

 ……彼女の言うことは、あながち間違ってもないだろう。人間の醜さの片鱗は、この前のパーティーで嫌というほど見た。

 でも、私は彼女の言うようなことはしないし、貴族達とは違う!

「善人ぶってるわけではありません! 一人の聖女として、一人の人間として彼の幸せを願っているだけです! きっと同じ聖女だった母さんも、同じことを言うはずです!」
『……母も聖女……おい小娘、その顔を儂によく見せろ』
「え? ど、どうすれば?」
『上を向いたまま、その間抜け面を見せれば良い』

 言われた通りに顔を上げる。すると、彼女からふむぅ……と、何かを見定めてるような声が聞こえてきた。

 一体何を見られてるのかしら……私の顔なんて見ても、何も面白くないと思うんだけど……。

『その鬱陶しいくらい、慈愛に満ちた緑の目……小娘、母親の名前は申せ』
「え、エレノア・ゲリールですけど……」
『エレノア……そうか、なるほどのぅ……』

 もしかして、母さんのことを知っているの? 母さんの名前は確かに有名だけど、こんな森の中にまでその名前が知れ渡ってるなんて。

 そう思っていると、私達の前に、青い光の玉が突然現れた。

『今回は特別に、貴様らを招いてやろう。その光の玉に従って、儂の元に来るが良い』
「っ……!! あ、ありがとうございます!!」
『……ふん』

 少し不機嫌さが残った鼻息を最後に、彼女の声は聞こえなくなった。

 私の気持ちが伝わったのか、それとも彼女に何か思うことがあるのか。理由はわからないけど、とにかく良かった!

「ウィルフレッド様、どうしましょう?」
「彼女の言葉を信じよう。その青い光の導き通りに進んでくれ」
「かしこまりました」

 ウィルフレッド様の指示に従うように、青い光の玉は御者の方へ向かって、スーッと消えていった。

 馬車の中からでは、どうやって案内してくれるかわからないけど、動き出したってことは、とりあえず行くべき所はわかったみたいで安心ね。

「エレナ殿、私のために彼女を説得してくれて、ありがとうございます。嬉しくて胸が熱くなってしまいました」
「い、いえ! ウィルフレッド様の聖女として、当然のことをしただけです! それに……正直な話、私の力で説得出来たようには思えないですし……」

 あの口ぶりからすると、母さんのおかげで招いてくれたって感じが否めない。もしそうなら、私が母さんの娘じゃなければ、門前払いされていたかもしれない。

「いえ、あなたの誠意は伝わったと、私は信じています」
「そうだと良いのですが……」

 なるべくなら伝わっててほしいけど、もし伝わってなかったとしても、やることは変わらない。何とかお願いして、回復魔法について教えてもらわないと。

 大丈夫、私なら出来る。全てはウィルフレッド様の幸せのために……!
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