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第三十九話 対峙
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■ウィルフレッド視点■
エレナ殿達が無事に出発したのを見送った俺は、剣を構えながら、アーロイと対峙する。
彼の実力に関しては、俺は一切知らないが、あの自信たっぷりな表情や、余裕そうな態度を見るに、相応の実力はありそうだ。
一方の俺は、右の両手足に加えて目も使い物にならず、立っているのもやっと。その上、実践訓練は怪我をしてから一度もやっていない。
剣は片手でも扱える軽量の物を準備したが……このハンデでどこまでやれるか。
「いや、やれるかじゃないか……やらなきゃいけない」
「何を独り言を言っている?」
「あなたを倒す術を考えてましてね」
「それはご苦労なことで。考えたところで、ボクに勝てるはずもないが」
アーロイの持っている杖の先が、暗い森の中で怪しく光る。すると、俺の周りに小さな魔法陣がいくつも現れた。
この魔法陣は……なるほど、そういうことか。
「死ね」
ブンッと杖を振ると、魔法陣から拳程度の大きさの光球が、いくつも発射された。
やはりか。俺がほとんど動けないのを見越して、全方位から攻撃しようとしたようだ。
確かにその戦術は効果的だろう。だが……!
「ふっ! はぁ!!」
向かってくる光球に対して、剣を振り降ろして打ち消す。更に斬り上げ、横に薙ぎ払って更に消す。
しかし、これでは背後からの攻撃に対処が出来ない。そう思うのは普通だろうが……俺は腕を上げて剣を背中まで持っていき、そのまま弧を描くように振ることで、背後から向かってきた光球を切ることが出来た。
「ほう……」
アーロイは驚いたり、悔しがったりはしなかった。むしろ、俺のことを感心するように、顎に手を当てながら頷いていた。
「あなたこそ、俺を舐めないでもらいたい。確かに俺の体の半分は使い物にならないが、だからといって戦えないとは言ってませんよ」
「ぶっ壊れたポンコツの割に、多少はやるようだ。さすがは名門の出身といったところか」
「……ペラペラと口を動かしている余裕はあるんですね」
「真の強者は、余興を楽しむものだ」
その考え方は賛同しにくいが、そうしてお喋りし続けている分にはありがたい。
俺の目的は、あくまでアーロイの足止めだ。その間にエレナ殿達が彼女を止め、泉の水を回収してきてくれれば、俺は使用人達と一緒にさっさと退却できるからな。
「ウィルフレッド殿こそ、さっさと俺に攻撃してくればいいだろう? ああ、これは申し訳ない。そのポンコツな体では、俺の元に来ることも出来ないか。見苦しい体で生かされて、同情するよ」
「確かに難しいでしょう。しかし……この体は、俺の両親が命を懸けて守ってくれた大切な体です。あなたのような愚かな人間に同情される筋合いはありません」
「…………」
対峙をしてから、初めて不機嫌そうに舌打ちをしたアーロイは、近くにあった大きな岩を魔法で持ち上げると、それを俺に投げつけてきた。
それに対して、俺は魔力を剣に流して威力をあげてから、斜めに切り上げて岩を破壊した。
「さっきから生意気なんだよ雑魚が! ボクを誰だと思っている! ボクはレプグナテ家の当主! 一番偉い人間なんだよ!」
「ようやく醜い本性を現しましたね。良い顔ですよ、レプグナテ家というお山の大将には、とてもお似合いです」
「っ……!? その口、今すぐに黙らせてくれる!!」
アーロイの怒りをトリガーにするように、アーロイの体から真っ赤な魔力が、勢いよく溢れ出る。
いよいよ本番か……この体では、上手く捌きながら、遠距離攻撃をするのがいいんだろうが、俺はそんな器用な真似が出来る程、魔法が得意じゃない。
なら……やることは一つ。この身が朽ちてしまうまで、全てを――切る。
****
ウィルフレッド様と別れてから、一切止まらずに泉まで進み続けていると、ルナちゃんがちょっとだけ後ろを振り向いた。
「ルナちゃん?」
「お兄様……大丈夫かなぁ……」
短い言葉だったけど、その言葉にルナちゃんの不安が全て注がれている感じがした。
そうよね、使用人達は互いに助け合えるからいいけど、ウィルフレッド様はハンデを背負った状態なのに、一人だ。心配になるなというのが無理な話ね。
「あなたのお兄さんは、とっても強い人よ。剣もそうだけど、心がとても強いの」
「心?」
「ええ。ウィルフレッド様は、大切な人を守る時は、本当に強くなるのよ」
「うん……そうだよね!」
「嬢ちゃん、ルナのあやし方上手じゃねえか」
「ありがとうございます、サラマンダーさん」
「そんなかしこまれちゃ、体がかゆくなるぜ! ダーちゃんでいいぜ!」
「わかったわ、ダーちゃん」
ルナちゃんの精霊って、本当に優しい子が多いのね。元々友達相手として呼んでた見たいだから、優しい相手になるのも当然かもしれない。
「もうすぐ見えますよ」
「えっ?」
馬を操縦していたウンディーネさんの言葉通り、私達の前は急に開けた。
そこにあったのは、夜だというのにキラキラと輝いて美しい、大きな泉が私達を出迎えてくれた――ついでにジェシーもね。
「なんだ、来ちゃったの」
「当然よ! 泉の独占はさせないわ!」
「独占? うふふ……」
先に来ていたジェシーは、泉の水面を見つめながら、クスクスと笑い始めた。
「私でもわかるわ……この泉の魔力はとんでもない! 封じられていたのも納得なくらい!」
「えっと、どれくらい凄いのかな……?」
「主から聞いたのだと、全ての魔力を使えば、軽くこの辺りは一掃できるそうです。全力なら、国ごと」
ウンディーネさんが耳打ちで教えてくれたのはよかったけど、内容が凄すぎて言葉が出てこない。
「この力があれば、エレナを足蹴にすることもできる! 私が最強になれば、師匠も認めて……いえ、全ての人間が私を認めてくれる!」
「なんでそんなに。エレナお姉ちゃんをいじめるんだっ!」
「ムカつくのよ。私の方が圧倒的に優秀! 褒められ、愛されるのは私なの! なのに……師匠のエレノアは……出来損ないのエレナばかり可愛がった!!」
「エレノアは私の母よ。親子が仲良くしてて何が悪いの」
「うるさい! ムカつく! ムカつく! ムカつく……!! 私だけを見ていればいいの! 私が一番すごくて、最高の聖女になる! そうすれば……もう誰も私を笑わない! 捨てない! あんなゴミ溜めみたいな場所に戻る必要もなくなる! あははははっ! あいつらに……世界に復讐だって!!」
よくわからないことを言いながら、高笑いをするジェシー。まるで完全にタカが外れてしまったかのように。
これは憶測だけど、泉を前にした高揚感に加えて、泉の魔力を取り入れ始めて暴走し始めている!?
「おい嬢ちゃん、あいつの様子ヤバくねえか? なんか飛んじまってるぞ」
「…………」
元々、私はジェシーのことをよく走らない。元々は貧困層にいたらしく、急にレプグナテ家に転がり込み、母さんの弟子になったジェシーは、確かに魔法の才能があった。
そのジェシーが、あんなふうに乱れるとは思ってもなかったわ。
「さて、余興はここまでにして。私は忙しいの。それじゃあ」
「ま、待ちなさい! それをしては……!!」
何かを察知したウンディーネさんが、急いでジェシーを止めようとするが、時すでに遅し……ジェシーの体は、泉の水に完全に漬かった。
エレナ殿達が無事に出発したのを見送った俺は、剣を構えながら、アーロイと対峙する。
彼の実力に関しては、俺は一切知らないが、あの自信たっぷりな表情や、余裕そうな態度を見るに、相応の実力はありそうだ。
一方の俺は、右の両手足に加えて目も使い物にならず、立っているのもやっと。その上、実践訓練は怪我をしてから一度もやっていない。
剣は片手でも扱える軽量の物を準備したが……このハンデでどこまでやれるか。
「いや、やれるかじゃないか……やらなきゃいけない」
「何を独り言を言っている?」
「あなたを倒す術を考えてましてね」
「それはご苦労なことで。考えたところで、ボクに勝てるはずもないが」
アーロイの持っている杖の先が、暗い森の中で怪しく光る。すると、俺の周りに小さな魔法陣がいくつも現れた。
この魔法陣は……なるほど、そういうことか。
「死ね」
ブンッと杖を振ると、魔法陣から拳程度の大きさの光球が、いくつも発射された。
やはりか。俺がほとんど動けないのを見越して、全方位から攻撃しようとしたようだ。
確かにその戦術は効果的だろう。だが……!
「ふっ! はぁ!!」
向かってくる光球に対して、剣を振り降ろして打ち消す。更に斬り上げ、横に薙ぎ払って更に消す。
しかし、これでは背後からの攻撃に対処が出来ない。そう思うのは普通だろうが……俺は腕を上げて剣を背中まで持っていき、そのまま弧を描くように振ることで、背後から向かってきた光球を切ることが出来た。
「ほう……」
アーロイは驚いたり、悔しがったりはしなかった。むしろ、俺のことを感心するように、顎に手を当てながら頷いていた。
「あなたこそ、俺を舐めないでもらいたい。確かに俺の体の半分は使い物にならないが、だからといって戦えないとは言ってませんよ」
「ぶっ壊れたポンコツの割に、多少はやるようだ。さすがは名門の出身といったところか」
「……ペラペラと口を動かしている余裕はあるんですね」
「真の強者は、余興を楽しむものだ」
その考え方は賛同しにくいが、そうしてお喋りし続けている分にはありがたい。
俺の目的は、あくまでアーロイの足止めだ。その間にエレナ殿達が彼女を止め、泉の水を回収してきてくれれば、俺は使用人達と一緒にさっさと退却できるからな。
「ウィルフレッド殿こそ、さっさと俺に攻撃してくればいいだろう? ああ、これは申し訳ない。そのポンコツな体では、俺の元に来ることも出来ないか。見苦しい体で生かされて、同情するよ」
「確かに難しいでしょう。しかし……この体は、俺の両親が命を懸けて守ってくれた大切な体です。あなたのような愚かな人間に同情される筋合いはありません」
「…………」
対峙をしてから、初めて不機嫌そうに舌打ちをしたアーロイは、近くにあった大きな岩を魔法で持ち上げると、それを俺に投げつけてきた。
それに対して、俺は魔力を剣に流して威力をあげてから、斜めに切り上げて岩を破壊した。
「さっきから生意気なんだよ雑魚が! ボクを誰だと思っている! ボクはレプグナテ家の当主! 一番偉い人間なんだよ!」
「ようやく醜い本性を現しましたね。良い顔ですよ、レプグナテ家というお山の大将には、とてもお似合いです」
「っ……!? その口、今すぐに黙らせてくれる!!」
アーロイの怒りをトリガーにするように、アーロイの体から真っ赤な魔力が、勢いよく溢れ出る。
いよいよ本番か……この体では、上手く捌きながら、遠距離攻撃をするのがいいんだろうが、俺はそんな器用な真似が出来る程、魔法が得意じゃない。
なら……やることは一つ。この身が朽ちてしまうまで、全てを――切る。
****
ウィルフレッド様と別れてから、一切止まらずに泉まで進み続けていると、ルナちゃんがちょっとだけ後ろを振り向いた。
「ルナちゃん?」
「お兄様……大丈夫かなぁ……」
短い言葉だったけど、その言葉にルナちゃんの不安が全て注がれている感じがした。
そうよね、使用人達は互いに助け合えるからいいけど、ウィルフレッド様はハンデを背負った状態なのに、一人だ。心配になるなというのが無理な話ね。
「あなたのお兄さんは、とっても強い人よ。剣もそうだけど、心がとても強いの」
「心?」
「ええ。ウィルフレッド様は、大切な人を守る時は、本当に強くなるのよ」
「うん……そうだよね!」
「嬢ちゃん、ルナのあやし方上手じゃねえか」
「ありがとうございます、サラマンダーさん」
「そんなかしこまれちゃ、体がかゆくなるぜ! ダーちゃんでいいぜ!」
「わかったわ、ダーちゃん」
ルナちゃんの精霊って、本当に優しい子が多いのね。元々友達相手として呼んでた見たいだから、優しい相手になるのも当然かもしれない。
「もうすぐ見えますよ」
「えっ?」
馬を操縦していたウンディーネさんの言葉通り、私達の前は急に開けた。
そこにあったのは、夜だというのにキラキラと輝いて美しい、大きな泉が私達を出迎えてくれた――ついでにジェシーもね。
「なんだ、来ちゃったの」
「当然よ! 泉の独占はさせないわ!」
「独占? うふふ……」
先に来ていたジェシーは、泉の水面を見つめながら、クスクスと笑い始めた。
「私でもわかるわ……この泉の魔力はとんでもない! 封じられていたのも納得なくらい!」
「えっと、どれくらい凄いのかな……?」
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ウンディーネさんが耳打ちで教えてくれたのはよかったけど、内容が凄すぎて言葉が出てこない。
「この力があれば、エレナを足蹴にすることもできる! 私が最強になれば、師匠も認めて……いえ、全ての人間が私を認めてくれる!」
「なんでそんなに。エレナお姉ちゃんをいじめるんだっ!」
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よくわからないことを言いながら、高笑いをするジェシー。まるで完全にタカが外れてしまったかのように。
これは憶測だけど、泉を前にした高揚感に加えて、泉の魔力を取り入れ始めて暴走し始めている!?
「おい嬢ちゃん、あいつの様子ヤバくねえか? なんか飛んじまってるぞ」
「…………」
元々、私はジェシーのことをよく走らない。元々は貧困層にいたらしく、急にレプグナテ家に転がり込み、母さんの弟子になったジェシーは、確かに魔法の才能があった。
そのジェシーが、あんなふうに乱れるとは思ってもなかったわ。
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