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王太子殿下が再来されました
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私が殿下の新たな婚約者を決めていただくようにお願いした三日後、王太子殿下がラミリス公爵邸にいらっしゃいました。
おそらく、お見えになるとは思っていましたので、落ち着いてお会いすることができます。
「ユエ!」
「ジュリアーノ王太子殿下。聖女様は・・・娘は病み上がりです。それに、記憶がございません。せめてユエ嬢とお呼びください」
おじ様が殿下に注意してくださいます。
ええ。その通りです。
以前は恋人同士だったのかもしれませんが、それは公認ではないのです。
ウェンディという公の婚約者がいるのですから、少なくとも他人の前では繕うべきなのです。
「ッ!しかし、僕らは・・・」
「今の娘は何も覚えておりません。それをお忘れなきようお願いします」
「・・・分かった」
ジュリアーノ王太子殿下は、このような方でしたでしょうか。
不貞腐れたような表情。
私の知らない殿下のお顔です。
長く殿下の婚約者を務めてまいりましたが、私と殿下は本当に政略だったのだと改めて理解しました。
ごめんなさい、殿下。
殿下が心から想われている聖女様は、今ここにはいらっしゃらないのです。
私にも聖女様の魂がどこに行かれたのか、わからないのです。
私がウェンディに戻れば、聖女様も戻ってくださると思いたいのですが。
そんなことを考えていたからか、知らない間に殿下に手を取られていました。
「ユエ・・・嬢。ユエ・・・本当に僕のことを忘れてしまったのか?」
「・・・」
離して!と拒絶したいのに、泣きそうな殿下の様子に声が出ません。
本当に殿下は、聖女様をお好きなのですね。
でもそれなら、もっともっと試行錯誤なさればよろしかったのに。
確かにいつこの世界からいなくなるかも分からない聖女様ですが、それでも殿下が懇願なされば陛下たちもお考えくださったはずですのに。
王太子妃に相応しいマナーを身につけて、殿下がお支えするならば、王太子殿下の婚約者としてお隣に立っていただけたはずなのに。
それを私を殺してという形で・・・
そのせいで、貴方の愛する聖女様の行方が分からないのですよ?
私が聖女様の体に宿った理由は分かりませんが、少なくともウェンディを殺したりしなければこの事態にはならなかったはず。
私は、殿下の手を振り払いました。
「ユエ?」
「ごめんなさい、あなたが誰なのか思い出せません。両親・・・から、貴方には婚約者がいると聞きました。私は元の世界のことも思い出せませんけど、こういう関係は良くないと思います」
「ッ!」
なるべく貴族令嬢らしさを出さないように言ったつもりですけど、怪しまれなかったかしら。
おそらく、お見えになるとは思っていましたので、落ち着いてお会いすることができます。
「ユエ!」
「ジュリアーノ王太子殿下。聖女様は・・・娘は病み上がりです。それに、記憶がございません。せめてユエ嬢とお呼びください」
おじ様が殿下に注意してくださいます。
ええ。その通りです。
以前は恋人同士だったのかもしれませんが、それは公認ではないのです。
ウェンディという公の婚約者がいるのですから、少なくとも他人の前では繕うべきなのです。
「ッ!しかし、僕らは・・・」
「今の娘は何も覚えておりません。それをお忘れなきようお願いします」
「・・・分かった」
ジュリアーノ王太子殿下は、このような方でしたでしょうか。
不貞腐れたような表情。
私の知らない殿下のお顔です。
長く殿下の婚約者を務めてまいりましたが、私と殿下は本当に政略だったのだと改めて理解しました。
ごめんなさい、殿下。
殿下が心から想われている聖女様は、今ここにはいらっしゃらないのです。
私にも聖女様の魂がどこに行かれたのか、わからないのです。
私がウェンディに戻れば、聖女様も戻ってくださると思いたいのですが。
そんなことを考えていたからか、知らない間に殿下に手を取られていました。
「ユエ・・・嬢。ユエ・・・本当に僕のことを忘れてしまったのか?」
「・・・」
離して!と拒絶したいのに、泣きそうな殿下の様子に声が出ません。
本当に殿下は、聖女様をお好きなのですね。
でもそれなら、もっともっと試行錯誤なさればよろしかったのに。
確かにいつこの世界からいなくなるかも分からない聖女様ですが、それでも殿下が懇願なされば陛下たちもお考えくださったはずですのに。
王太子妃に相応しいマナーを身につけて、殿下がお支えするならば、王太子殿下の婚約者としてお隣に立っていただけたはずなのに。
それを私を殺してという形で・・・
そのせいで、貴方の愛する聖女様の行方が分からないのですよ?
私が聖女様の体に宿った理由は分かりませんが、少なくともウェンディを殺したりしなければこの事態にはならなかったはず。
私は、殿下の手を振り払いました。
「ユエ?」
「ごめんなさい、あなたが誰なのか思い出せません。両親・・・から、貴方には婚約者がいると聞きました。私は元の世界のことも思い出せませんけど、こういう関係は良くないと思います」
「ッ!」
なるべく貴族令嬢らしさを出さないように言ったつもりですけど、怪しまれなかったかしら。
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