嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

文字の大きさ
114 / 215

今生の別れ〜王弟殿下視点〜

しおりを挟む
「お前がそこまで愚かだったとは思わなかった」

 転がされた甥に冷たく言い放つ。

 義姉上は涙を流し、兄上は苦悶の表情だ。

 そして、ラウンディ公爵夫妻も泣いていた。

 目の前にいる、茫然とした表情の娘を見ながら。

「何故ですかっ!叔父上。父上も母上も叔父上を止めて下さい」

「・・・ここで、何故と言えるお前の精神の歪みにもっと早く気付いていればな」

 少なくとも、婚約者に執着していたなら、こんなことにはならなかった。

 本来なら処刑すべきだ。
病死か事故だと公表すれば、少なくとも今後の憂いはなくなる。

 だが、被害者からの要請を跳ね除けるわけにはいかない。

 何故、リビエラ嬢が処刑を望まなかったのか。

 それは、ダニエルとラウンディ嬢を離宮に幽閉して、半年経つ頃にわかった。

 絶対に外に出ることが叶わない空間。

 一応、元王族と元公爵令嬢のため、身の回りの世話をする侍女は付けてあるが、

 言葉を交わせるのはダニエルのみ。

 本を読むことも刺繍をすることも、なにも許されず、ただ流れる時間の中ダニエルと過ごすだけ。

 窓という窓は板を打ち付けられて、朝なのか夜なのかもわからない。

 最初こそ、ダニエルと会話していたラウンディ嬢だが、そのうちに会話ではなく体を繋げるばかりになった。

 食事に避妊薬を混ぜているため、子を授かる心配はないが、娼婦でさえ朝から晩まで体を繋げるようなことはない。

 やがて少しずつ・・・
ラウンディ嬢の精神は病んでいった。

 ただ自分に抱かれるだけの
笑いも泣きもせず、言葉すら発しなくなったラウンディ嬢を見て、ダニエルは初めて自分が何をしたのか気付いたようだった。

 もちろん、我々が直接ダニエルから聞いたわけではない。

 兄上や義姉上はもちろんのこと、物言わぬ侍女以外はダニエルたちに接することはない。

 その侍女や護衛から、ダニエルがラウンディ嬢を抱きしめて泣き叫んでいるという報告を受けただけだ。

 リビエラ嬢は、ラウンディ嬢が望んだわけではないのかもしれない。

 だが彼女は、王太子妃となり国の頂点に立つ人間としての教育を受けている。

 その立場の人間の責任や罰に関して、キチンと理解しているのだろう。

 ずっと・・・
我慢してくれていたのだ。

 関わりさえしなければ、他国のことだからと目をつぶっていてくれたのだろう。

 踏み出してはならない一歩を踏み出したのはダニエルで、それを止められなかったのは我々とラウンディ嬢だ。

 、我々の
しおりを挟む
感想 577

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】愛してました、たぶん   

たろ
恋愛
「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。 「愛してる」 「わたしも貴方を愛しているわ」 ・・・・・ 「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」 「いつまで待っていればいいの?」 二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。 木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。  抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。 夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。 そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。 大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。

【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。 あなたに相応しくあろうと努力をした。 あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。 なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。 そして聖女様はわたしを嵌めた。 わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。 大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。 その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。 知らずにわたしはまた王子様に恋をする。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

あなたの愛はもう要りません。

たろ
恋愛
15歳の時にニ歳年上のダイガットと結婚したビアンカ。 この結婚には愛などなかった。 16歳になったビアンカはできるだけ目立たないように学校でも侯爵家でも大人しくしていた。 侯爵家で肩身の狭い思いをしながらも行くところがないビアンカはできるだけ問題を起こさないように過ごすしかなかった。 でも夫であるダイガットには恋人がいた。 その恋人にちょっかいをかけられ、ビアンカは我慢の限界を超える。 そして学園を卒業さえすればさっさと離縁して外国で暮らす。 その目標だけを頼りになんとか今の暮らしに耐えていた。 そして、卒業を控え「離縁して欲しい」その言葉を何度となく夫に告げた。 ✴︎今回は短めの話を投稿していく予定です。 (作者の時間の都合により)

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

処理中です...