嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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帰国

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 ローゼン王国の新たな王太子殿下とその婚約者の婚姻が目前となった。

 北の塔に幽閉されていたシリウス殿下は病死されて、その後を追うように王妃様も亡くなられたらしい。

 多分、だけど、お二人ともという名の元に処分されたのだと思う。

 シリウス殿下は男性としての機能は失われているけど、それでもまだ私に執着されていた。

 国王陛下としては、新たな王太子殿下であるサリオン王太子殿下の治世に、をやりかねないあのお二人を残しておきたくなかったのでしょうね。

 それでも、父親として夫として、死なせたくはなかったはず。

 シリウス殿下が大人しくコンフォート公爵家に婿入りし、子は成せなくてもエミリ様と仲睦まじく生きていれば、そうすれば陛下も辛い決断をなさらなくて済んだのに。

 私は、サリオン殿下の婚約者であるセーラ・ホリグラフ侯爵令嬢とは面識がない。

 サリオン殿下が、コンフォート公爵夫人の実家に養子に出されていた時からの婚約者らしいのだけど。

 金髪碧眼の、とても可愛らしいご令嬢だそうで、サリオン殿下との仲も良好なのだとか。

 私は殿下ともご令嬢とも面識がないから、成婚パーティーに参加したときに初めてご挨拶することになる。

 ちょっと、複雑ではあるのよね。

 シリウス殿下がエミリ様と浮気などなさらなかったら、私はシリウス殿下と婚姻して王太子妃になっていただろうし、サリオン殿下も養子先の侯爵家を継いで、セーラ様は侯爵夫人になられていたはず。

 別に王太子妃という座には全くちっとも心残りはないのだけど、私とシリウス殿下の婚約解消のせいで、二人に面倒な役割を押し付けた気持ちなのよ。

「どうした?」

 私が微妙な表情をしていたせいか、ハデス様が不思議そうに私の顔を覗き込んできた。

 今私たちは、ローゼン王国に向かっている馬車の中である。

「いえ。王太子や王太子妃になることを、嫌だと思われていないかと思いまして」

「ああ、わかった。自分が婚約解消したせいだとか考えているんだな?」

「いえ、まぁ、解消は必然だったと今では思いますけど、侯爵家を継ぐのと王太子になるのとでは、全く学ぶことも違いますし、ご負担をかけたなと思っただけです」

 私が悪いわけではなくて、浮気したシリウス殿下が悪いのだけど、少し申し訳ないと思っただけよ。

「優秀だから王太子となったんだろ。陛下もいらっしゃるんだから、心配しなくても大丈夫だと思うぞ。それよりも本当にリビエラ伯爵家に滞在して良いのか?」

「ええ。ルークお兄様も楽しみにされていると思います」

ハデス様は、ご実家に滞在されたくないそうで、宿に泊まるとおっしゃっていたのだけど、それならうちにとお誘いしたのよね。
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