聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜ＬＶ∞の聖女は冒険者になるらしい〜

これはダメなやつかも

　夜になるのを待って、アルプロの森に転移した。

　森に行くこともあるかも、と採取の依頼を受ける時に、隠蔽魔法を使って森の入口まで行っていたのだ。

　一度行っていないと転移は使えないから、手間だけど今回役に立った。

　もちろん、入口には人が入らないように警戒する人がいる。

　まぁ魔物が出る森だから、ギルドの情報を聞いている冒険者が入ったりはしないだろうけど、たまに自分は大丈夫って勘違いする人もいるから。

　え？私？
絶対に大丈夫と思ってるわけじゃない。

　世の中に絶対はないもの。
でも一応はそれなりに戦えると思うし、ギリギリまで隠蔽魔法を使うつもりでもある。

　ヤバそうなら逃げる。

　ちなみに私の懐にはクロがいる。
宿に置いてくるつもりだったんだけど、行くと言って聞かなかった。

　逃げる分には問題ないと思う。
問題は戦闘になった時だけど、とりあえず落ちないようにポーチに入れた。

「あー。あれは駄目なヤツだわ」

　加速魔法で森の奥まで進んだ私は、その先のモノを見てため息を吐いた。

　ドラゴン、しかも異常種っぽい。
上半身？の鱗は鈍い赤なのに、尻尾に近づくにつれ昏い青になっている。

　うわぁ。これって、火と水の両方使えるやつとかでない？

　ドラゴンは基本、その使える魔法の色をしていることが多い。

　赤と青ってことは、確実に異常種だ。
相反する魔法を使えるってことは、火魔法めも水魔法でも倒せないってことだから。

　ドラゴンより強い威力なら勝てるかもだけど。
　そんなの使える人間は、冒険者なんかやってない。王宮専属の魔術師ならいるかもしれないが、冒険者には荷が重いだろう。

　うーん、どうするかなぁ。
この異常種のせいで、魔物が森の入口付近まで来てるんだろう。

　見て見ぬふりをして、帝都から魔術師が派遣されるのも待ってもいいけど、それまでに何人かは怪我人が出るかもしれない。

　弱い魔物は入口までコレから逃げて来てるから、もしかしたら街に出てくるかもしれない。

　うーん、どうするかなぁ。
宿屋のおじさんもおばさんも良い人だし、ご飯も美味しいし、クロのことも可愛がってくれるし、ギルドのベティさんも良い人だしなぁ。

　あの人たちが、怪我とかすることになるのは嫌だなぁ。

　うーん。
私の使える魔法で、有効なのあるかなぁ。

　倒せちゃったとして、それを報告するわけにはいかないけど、帝都に魔術師の派遣を頼んで、来てもらったら異常種倒されてました～とかマズいよねぇ。

「クロ。絶対に出て来ちゃ駄目だよ？約束ね」

「にゃー」

　うん。
まぁ、いっか。なんとかなるでしょ。