「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

姫様来襲2

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「試験後休暇になったのです。あちらで過ごす予定だったのですが、話の折に、カール様が聖女様にお会いしてみたいとおっしゃって・・・」

 あら?
ということは王太子殿下もご一緒ということ?
 でも、今のマリアは・・・

「あの、ローラ様・・・」

「アニエスお姉様、お父様からお話は聞いています。カール様にも聖女様は体調を崩されていて、学園をお休みされているとお伝えしてあります」

 ローラ様の言葉に、ホッとする。
今のマリアは、私や母親の女性ならともかく、ただ1人を除いて父親にすら体を強ばらせるのだ。

 同郷のチェリーのことは、憎んではいないが、マリアをこんなに傷つけたことに関しては恨めしく思う。

「本当に、聖女様おいたわしい」

「ありがとうございます、ローラ様。このお休みの間には無理かもしれませんが、きっと王太子殿下ともお会いできるようになると思います」

「大体、お兄様がいけないのです。その、男爵令嬢は学園での素行もよろしくなかったそうではありませんか!お兄様がさっさと手を打っておけば、このようなことにはならなかったのです!」

「それは・・・」

「ローラ様。それは違います。マリウス殿下は常にわたくしたちのことをお守り下さっていました。あの者があのようなことをすると見抜けなかったのは、わたくし。わたくしが、あの者が悔い改めることを望んだのです。ですから、この事態を引き起こしたのは、わたくしなのです」

 そう。
私の考えが甘かったのだ。
 自分のことを乙女ゲームのヒロインだと思い込んでいたチェリーが、ヒロインであるマリアに対して敵意を持っていたことに気付いていたのに。

 まさか、襲わせるだなんて思いもしなかった私が甘かったのだ。

 同郷のチェリーに対して、やっぱりどこかに懐かしさというか同族意識があったのだと思う。

 俯いた私を、後ろからマリウスが抱きしめてきた。

「アニエスは悪くない。僕の配慮が足りなかったんだ。そんな風に自分を責めないで」

「マリ様・・・」

「ごめんなさい、アニエスお姉様。お姉様を責めるつもりなんてなかったの。お姉様に悪かったことなんてないわ。全部、お兄様がいけないのよ」

 ローラ様も一生懸命、私を元気付けてくれるけど、えらくマリウスに辛辣である。
 いや。全部マリウスが悪いわけないから。

 実行犯やそれを命じたチェリーが悪いのであって、マリウスに非はないから。

 乙女ゲームやラノベの中では、ローラ様はものすごいブラコンだったのに。

 本当に、こんなに違うのに。どうしてあんなにゲームやラノベにこだわっていたんだろう。

 私を元気付けようとしてくれる2人に、思わず笑みが浮かんだ。

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