「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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聖女覚醒編

追跡

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 カイがマリアを迎えに行くためにリリウム公爵家を出た直後ー

 私とマリウスは、先回りして街へと向かっていた。

 実は、カイとマリアが初デートすると決まった日、マリウスから「こっそりついて行こうか」という大変魅力的なお誘いを受けていたのだ。

 見たいというのが、そんなに顔に出ていたのかなぁ。

 クランに指摘されたことを思い出す。
昔は姉上姉上と、マリウスと対抗するみたいに私に構って来てたのに、最近は婚約者のシャルロット・ウィステリア侯爵令嬢にべったりなんだよね。

 クラン。お姉ちゃん、ちょーっと寂しいよ。いや。婚約者と仲良いのは良いことだけどね。

 それはともかく、マリアたちを遠くから見守ることにしたのだが、カイたちがどこへ行くのかがわからない。

 ずっとついて行くわけにも、と思っていたら、マリウスがカイの友人であるセリオという人と接触していた。

 どうやら、とても優秀な人らしく、マリウスは自分サイドに引き入れたいと思っているらしかった。

 王族は、決して品行方正なばかりではない。
 表立って処分できないことを、裏で片付けることもあるのが事実だ。

 多分、マリウスは自分の、その闇の部分を担う役目をセリオという人に任せたいのだろう。

 返事はまだらしいけど、私はそのことをどうこう言うつもりはない。
 カイの友人で、マリアを救う手伝いをしてくれた人だ。

 きっと、その人は裏切ることはしない。
カイのように、誠心誠意仕えてくれるだろう。

 その人曰く、まず自分のところに礼を言いにくるだろう、とのことだ。

 確かに、真面目で義理堅いマリアなら、最初にお礼を言いたいと言いそうだし、カイに私が渡してあるお礼に関しても、それを持って街歩きをするのは大変である。

 馬車1台分の、お酒や果物などを持って行くように伝えてある。
 カイに言われて、馬車は酒屋から荷馬車を借りた。貴族の馬車で乗り付けたら、セリオの迷惑になるからと言われて。

 よくわからないけど、カイがそう言うならそうなのだろう。

 というわけで、まずはそのセリオという人のところへ行くのが確定である。

 私たちは、そこでマリアたちを待ち伏せることにしたのだ。

 ちょーっと、覗き見なんて悪いことをしている気もするけど、いやいやいや。
 これは、うん。親心みたいなものだと思う。

 カイだから心配いらないとは思うけど、マリアのことが心配というか、せっかくの初デートを邪魔する輩がいても困るというか。
 うん。護衛。護衛みたいなものよ。

 でも、マリウスがこんなことを私に薦めてくるなんて、珍しいわ。
 マリウスも心配なのかしら?




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