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身の振り方は難しい

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 婚約者を切り捨てられない様子のメルティンに、ルーナは小さくため息を吐いた。

 おそらく、シシリーは転生者で間違いないだろう。
 そして、ヒロインに取り変わろうとしていることは確実だ。

 小説の流れを理解しているから、カイルに「ランスロットを救いたい」と言ったに違いない。

 ルーナがライアンの婚約者でないことをどう解釈したのかはわからないし、ターゲットとしているのかも不明だ。

 だが、アレックスとダグラスは完全にシシリーに堕ちたと考えて間違いないだろう。

 ルーナは乙女ゲームのヒロインは嫌いだし、ランスロット以外の攻略対象も正直言ってどうでもいい。

 廃嫡されようと、廃籍されて平民になろうと、全くもって興味がない。

 シシリーが王妃になるようなことがあれば国は衰退しそうだから、さっさとアデライン王国とはサヨナラしようと思うが、ライアンが継ぐにしろリリアナが継ぐにしろ、今は様子見である。

 攻略対象はどうでも良いが、その婚約者であるご令嬢が悲しむのは、さすがにルーナも気が引けた。

 ご令嬢たちを見捨てたりしたら、カイルに呆れられちゃうかも。

 チートにやり放題のルーナではあるが、好きな人にはやっぱりよく思われたい、という普通の女の子なのである。

 カーラは愚かな婚約者を切り捨て、貴族令嬢の座を捨てて平民となり、騎士を目指すという。

 ジョルダン侯爵がどう判断するかはわからないが、フィオレンサ公爵夫妻の人脈を使えば、侯爵家から廃籍されなくても騎士の道に進むことも出来るだろう。

 問題は、メルティンである。

 政略的な間柄のカーラとダグラスと違い、メルティンはアレックスのことを好いている、ようだ。

 セドリックのように、元のアレックスに戻って欲しい。

 そう願っているのだろう。

 魅了を解くことは不可能ではない。

 ルーナの魔道具で完全に防げるのなら、チートを大奮発すれば解除できるだろう。

 だが、神官長である王弟殿下の防御魔法を同じようにかけられていて、ライアンやセドリックと、アレックスとダグラスに違いが出たのは何故か。

 おそらくは、シシリーに対する感情の差ではないのか。

 シシリーに好意を抱き、婚約者に嫌悪感を抱けば抱くほど、術にハマるのではないか。

 ルーナはそう予測していた。

 その場合、魅了魔法を解いても、婚約者に向き合えるだろうか。

 それに、彼らの父親である宰相や騎士団長は息子の愚行をどう処罰するつもりなのか。

 少なくとも、自分たちのあと目を継がせることはないだろう。

 そうなると、メルティンはひとつ間違うと無職のアレックスと婚姻することになる。

 想い思われているならそれも良いだろうが、フィクサー侯爵夫妻も頷かない気がした。
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