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恋はするものではなくおちるもの?
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「そう。私のお姫様はずっと王家に縛られていて、婚約者と交流することもままならなかったものね。それはエリック殿下も同じだったのかもしれないけど、彼が何とかするべきだったわね。幼い頃ならともかく、ね」
確かにわたくしは、王家の指示での教育に時間を取られ、エリック殿下とご一緒できるのは限られておりました。
それに
「王太子妃とはこうあるべき」
「エリック殿下は尊きお方だということを忘れないように」
「エリック殿下を煩わせることのないように」
常に微笑みを浮かべ、エリック殿下に反論するなど許されない、そんなふうな教育をずっとされて来ました。
あの市井での塗料事件も、お母様たちには言えませんでしたが、王宮では王妃様はもちろんのこと、教育係の先生方から叱られましたわ。
王太子妃になろうという者が髪を切る羽目になるなど、注意散漫だと。
市井に出かけるなど、どれだけエリック殿下を困らせれば済むのだと。
楽しかった気持ちが萎んでしまったことを覚えています。
わたくしにとって、たったひとつの我儘でした。
ずっと、王家のため、国のため、エリック殿下のため、公爵家のために生きて来たわたくしが言った、ただひとつの我儘。
だからエリック殿下は叶えてくださったのです。
あんな時間をもっと持てていたなら、わたくしはエリック殿下に恋をしたかもしれません。
お母様にそう言うと、お母様はわたくしの髪を優しく撫でて下さいます。
「そうね。結局アリスティアという王妃に相応しい存在を失う原因を作ったのは、セオドア王家。自業自得というやつね」
「きっとエリック殿下のことをお好きなユリア様ですもの。王太子妃教育を頑張ってくださいますわ」
「ふふっ。私の可愛いお姫様は、本当に優しい子ね。まぁ、あの国がどうなろうともう私たちには関係ないこと。私のお姫様はこの国で、今まで出来なかったことをたくさんしなさい」
今まで出来なかったこと。
一番欲しかった、ご令嬢のお友達もできましたわ。
お菓子作りも、まだまだ下手ですけど、少しは不恰好でないものができるようになりました。
好きな本もたくさん読む時間ができました。
お母様やキャスリーン様、シャルロット様とお買い物に出かけることも、カフェでお茶をいただくこともできました。
「わたくし、恋をしてみたいです。お母様、どうすればできますか?」
わたくしも、エリック殿下のように、ユリア様のように、ジークハルト様のように、誰かに恋をしてみたいです。
わたくしがそう申し上げると、お母様は困ったように微笑まれました。
「私の可愛いお姫様。恋はね、しようと思ってできるものではないの。恋は知らないうちに落ちるものなのよ」
確かにわたくしは、王家の指示での教育に時間を取られ、エリック殿下とご一緒できるのは限られておりました。
それに
「王太子妃とはこうあるべき」
「エリック殿下は尊きお方だということを忘れないように」
「エリック殿下を煩わせることのないように」
常に微笑みを浮かべ、エリック殿下に反論するなど許されない、そんなふうな教育をずっとされて来ました。
あの市井での塗料事件も、お母様たちには言えませんでしたが、王宮では王妃様はもちろんのこと、教育係の先生方から叱られましたわ。
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楽しかった気持ちが萎んでしまったことを覚えています。
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だからエリック殿下は叶えてくださったのです。
あんな時間をもっと持てていたなら、わたくしはエリック殿下に恋をしたかもしれません。
お母様にそう言うと、お母様はわたくしの髪を優しく撫でて下さいます。
「そうね。結局アリスティアという王妃に相応しい存在を失う原因を作ったのは、セオドア王家。自業自得というやつね」
「きっとエリック殿下のことをお好きなユリア様ですもの。王太子妃教育を頑張ってくださいますわ」
「ふふっ。私の可愛いお姫様は、本当に優しい子ね。まぁ、あの国がどうなろうともう私たちには関係ないこと。私のお姫様はこの国で、今まで出来なかったことをたくさんしなさい」
今まで出来なかったこと。
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わたくしがそう申し上げると、お母様は困ったように微笑まれました。
「私の可愛いお姫様。恋はね、しようと思ってできるものではないの。恋は知らないうちに落ちるものなのよ」
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