85 / 105
85.できる者できない者〜ウィリアム視点〜
しおりを挟む
「は?フローレンス公爵が?」
慌てた様子の父上から聞いたのは、フローレンス公爵家の全員が我がマデリーン王国を捨てて亡命したということだった。
公爵として、常に王家を支えてくれていた一柱である公爵家の亡命。
それはマデリーン王国にとって、大打撃だった。
アイシュ・フローレンス公爵令嬢。
僕のかつての婚約者。
銀髪に銀色の瞳をした彼女は、生まれた時から僕の婚約者だった。
そしてそれを当たり前だと思っていた僕は、王宮メイドである男爵令嬢に恋をした。
アイシュに不満を持ったことはない。
だけど彼女が僕に恋などしていなかったように、僕も彼女に恋をしていなかった。
だから、ディアナにのめり込んだ。
明るく愛らしいディアナ。
アイシュには悪いと思いながらも、ディアナへの気持ちは止められなかった。
当然のことながら、僕の行動はアイシュだけでなく父上や母上の知ることとなった。
そして、婚約解消。
母上はアイシュでないと王太子妃は務まらないと反対していたが、父上が解消を押し進めた。
解消後にアイシュはクライゼン王国に渡ったらしい。
というのも、僕は王太子妃教育が思うように進まないディアナにずっと手を取られていたのだ。
元々が下位の男爵令嬢というのもあるが、ディアナは最低限のマナーしか身についていなかった。
一般メイドであることで気づくべきだったんだ。
キチンとマナーを身につけたものは、王宮内でも侍女として務めている。
下位のメイドでしかないディアナは、高位貴族と接することさえ許されない立場でしかないということだったのだ。
そんな彼女が、王太子妃教育に耐えられるわけがなかった。
淑女教育から始めなければならないのだから。
だけど、僕を愛してくれているのなら、頑張ってくれると思っていたんだ。
一方、アイシュはクライゼン王国の第二王子と婚約したと聞いた。
アイシュとは、ずっと婚約者だったから、彼女が自分のそばからいなくなるということは、不思議な感じがした。
それでも、彼女なら優秀な王子妃になると思ったし、幸せになって欲しいとも思った。
母上はずっと、アイシュを正妃にディアナは愛妾にと言っていた。
確かに王太子妃教育も終えているアイシュなら正妃として問題ないだろうけど、彼女は他の人間と婚約したのだし、僕はディアナを愛妾なんかにするつもりはない。
「ウィリアム様・・・先生方がアイシュ様ならこんなこと子供の頃に出来たとかおっしゃるんです。私、私・・・」
「ディアナ、大丈夫。時間がかかってもいいんだ。アイシュができたんだから、君にもできるよ」
慌てた様子の父上から聞いたのは、フローレンス公爵家の全員が我がマデリーン王国を捨てて亡命したということだった。
公爵として、常に王家を支えてくれていた一柱である公爵家の亡命。
それはマデリーン王国にとって、大打撃だった。
アイシュ・フローレンス公爵令嬢。
僕のかつての婚約者。
銀髪に銀色の瞳をした彼女は、生まれた時から僕の婚約者だった。
そしてそれを当たり前だと思っていた僕は、王宮メイドである男爵令嬢に恋をした。
アイシュに不満を持ったことはない。
だけど彼女が僕に恋などしていなかったように、僕も彼女に恋をしていなかった。
だから、ディアナにのめり込んだ。
明るく愛らしいディアナ。
アイシュには悪いと思いながらも、ディアナへの気持ちは止められなかった。
当然のことながら、僕の行動はアイシュだけでなく父上や母上の知ることとなった。
そして、婚約解消。
母上はアイシュでないと王太子妃は務まらないと反対していたが、父上が解消を押し進めた。
解消後にアイシュはクライゼン王国に渡ったらしい。
というのも、僕は王太子妃教育が思うように進まないディアナにずっと手を取られていたのだ。
元々が下位の男爵令嬢というのもあるが、ディアナは最低限のマナーしか身についていなかった。
一般メイドであることで気づくべきだったんだ。
キチンとマナーを身につけたものは、王宮内でも侍女として務めている。
下位のメイドでしかないディアナは、高位貴族と接することさえ許されない立場でしかないということだったのだ。
そんな彼女が、王太子妃教育に耐えられるわけがなかった。
淑女教育から始めなければならないのだから。
だけど、僕を愛してくれているのなら、頑張ってくれると思っていたんだ。
一方、アイシュはクライゼン王国の第二王子と婚約したと聞いた。
アイシュとは、ずっと婚約者だったから、彼女が自分のそばからいなくなるということは、不思議な感じがした。
それでも、彼女なら優秀な王子妃になると思ったし、幸せになって欲しいとも思った。
母上はずっと、アイシュを正妃にディアナは愛妾にと言っていた。
確かに王太子妃教育も終えているアイシュなら正妃として問題ないだろうけど、彼女は他の人間と婚約したのだし、僕はディアナを愛妾なんかにするつもりはない。
「ウィリアム様・・・先生方がアイシュ様ならこんなこと子供の頃に出来たとかおっしゃるんです。私、私・・・」
「ディアナ、大丈夫。時間がかかってもいいんだ。アイシュができたんだから、君にもできるよ」
841
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる