え?後悔している?それで?

みおな

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国王陛下も実は結構怒っていた件

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「そこの書類にサインをしろ」

 謁見の間に入った途端に、国王である父親からそう言われたダミアン。

 謁見の間にテーブルが置かれて、そこに数枚の書類が並んでいた。

 テーブルの前では宰相が、ジッとこっちを睨んでいる。

「え、あ、父上?」

「さっさとしろ。後ろの二人もだ」

「え?わ、私たちもですか?」

「そう言っている」

 ものの、国王陛下と会うのなんて初めてである。

 その国王陛下から冷たく言われて、ジェニッタは「これは何かまずいのではないか?」という不安が頭に浮かんだ。

 だが、娘のアネッタが「お母様、ここに名前を書けば良いの?」と自分を頼って来たことで、その不安な気持ちは横に追いやられた。

 大丈夫だ。
王太子殿下であるダミアンも、サラサラとサインをしている。

 ジェニッタは名前を書くところを確認しながら、アネッタと共にサインを終えた。

 三人が書いたサインを確認しながら、宰相がそれを国王陛下と王妃殿下に差し出す。

 二人はそれに目を通して、宰相に戻した。

「すぐに手続きを」

「かしこまりました」

 書類を手に宰相が出て行ったことで、ダミアンは口を開く。

 さっさと書けと言われたから、内容をろくに確認していなかったダミアンは、なんの書類なのか尋ねようと思ったのだ。

「あ、あの、父上・・・」

「これで、お前とそこの娘との婚姻が決定した。本日付で二人は夫婦だ。ちなみにこれは王命である」

「夫ふ・・・え?」

 貴族の婚姻は必ず国王の許可がいる。
 だから、自分とアネッタの婚姻を国王である父親が宣言するのも理解できる。

 だが、婚約期間もなく婚姻?しかも王命?

 ポカンと口を開けたダミアンの横で、アネッタとジェニッタが喜んでいる。

 だがダミアンは、嫌な予感をヒシヒシと感じていた。

「ち、父上、あの・・・」

「それから、ダミアンお前を王家から廃籍する。さすがに平民としては生きていけないだろうから、王妃の従弟の辺境伯の地にお前たちを送る。明日朝に出立するように」

「え?は?へ?明日?」

 マトモに思考すら働かないダミアンはもちろん、喜んでいたジェニッタとアネッタもポカンとして、国王陛下の顔を凝視する。

 今、とんでもないことを聞かなかったか。

 先ほどサインした書類に、ダミアンを王家から廃籍する書類があった?

 王太子妃になるつもりだったのに、辺境伯?
 それならのままの方が位は上では?

「ちょっ、ちょっと待ってください、父上。何故、廃籍などされなくてはならないのですか?」

「お前が阿呆だからだ」

 国王陛下、実は静かに怒っていたのである。

 
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