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第3章

的外れな考え

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 私は、自分の目の前で跪き、深紅の薔薇の花束を差し出しているハルトナイツの姿に、目を丸くした。

 一体、何事なの?
ああ。もしかして婚約の申し込みなのかな?普通に、お父様に申し込んでくれれば良いんだけど。
 もしかして、レンブラント皇国ではこんな風に本人に申し込むものなのかな。

 半分、嬉しい。
だって一般的に女の子の憧れだと思う。
 素敵な男性に花束を差し出され、プロポーズされるのって。

 半分、切ない。
政略結婚なのに、そこに明確な愛はないのに、形だけ愛があるみたいにされるのって。

 もちろん婚約したら、ちゃんと向き合うつもりだけど。きっとハルトナイツだって、私のことを好きになろうとしてくれると思う。

 付き合っていたら、段々と好きになる場合だってあると思う。

 だけど、私は前世ではそのタイプではなかった。
 好意は持ってるし、好きになるだろうって思って、交際の申し込みを受けるけど、結局本気で好きにはなれなかった。

 相手の嫌なところばかりが気になって、どうしても好きにはなれなかった。

 そのくせ、一目惚れした相手だと、片想いでも、何年も好きなままだった。
 運良く交際できて、どんどん好きになって、相手からフラれて別れても、好きな気持ちは消えなかった。

 人に言わせたら、それは単に恋に恋してるだけだと言われるのかもしれない。

 だけどいいじゃない。
前世だって現在だって、恋に恋していても構わない年齢しか生きてない。

 もちろんヴィヴィは公爵令嬢で、貴族の娘として政略結婚するのは当たり前のことだって分かってる。

 まだ転生して長くは経っていないけど、それでも前世でやった乙女ゲームや、読んだライトノベルでの知識、それからヴィヴィ自身の知識もあるから、政略結婚に抗おうとは思ってない。

 思ってないけど・・・

 サイードの時は、転生したらすでに婚約者だった。
 そして、ヒロインと出会っていた。

 別にサイードを好きでも嫌いでもなかったから、私を断罪する婚約者なんか要らないと、ヒロインにあげるつもりだった。

 だけど、現在リアーネのことを大切にしているサイードを見ていて、ふと思う。

 私もちゃんとサイードと向き合っていたら、サイードもヒロインではなく私を大切にしてくれたのではないかって。

 私は勝手に「ここは乙女ゲームの世界だから」と決めつけて、向き合おうとしなかっただけなんじゃないかって。

 ハルトナイツのことは、前世からの推しだから、好きだと思う。

 それが本当に恋愛の好きかどうかはわからないけど、私はサイードがリアーネに向き合っているように、ハルトナイツに向き合うべきなのではないか。

 本気で好きになるよう・・・
向き合う前提で、婚約するべきなんじゃないか。

 私は的外れにも、この時そう考えていた。
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