虐げられ令嬢の最後のチャンス〜今度こそ幸せになりたい

みおな

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三度目の人生

嫌いじゃない

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「よくなりましたね、キャス様」

「え、本当ですかぁ?あ・・・!ごめんなさい」

 誉めると、満面の笑顔で振り返ったキャス様は、私と目が合って花がしぼむように俯いた。

「そこは、にっこりと微笑んで、少し小首を傾げる程度で」

 キャス様の教育も今日で五日目。
明々後日は、夜会当日だ。

 必要最低限というか、ギリギリこれだけという、姿勢と歩き方、あと笑顔の練習は、ようやく終着点が見え始めた。

 始めた頃はどうなるものかと思ったけど、泣き言を言いながらもちゃんと続けるキャス様のことを、私はある意味尊敬していた。

 私は、公爵令嬢としての記憶がなくても、前々回の侯爵夫人としての記憶がある。

 だから、ある程度のマナーも出来るけど、キャス様は平民だ。

 姿勢ひとつ直すのも、ものすごく辛かったと思う。

 それでも頑張れる彼女は、本当に殿下のことが好きなのだろう。

 私は、キャス様を選んだアズリル殿下のことをほんの少しだけ見直した。

 初対面?で、私を怒鳴りつけたこととか、何コイツと思うような言動だったこととか、まぁ色々と思うところはあるけれど、とりあえず人を見る目だけはあったのだと認めても良いかな~と思う。

「少し休憩しましょうか」

 侍女に紅茶を淹れてもらい、キャス様と席に着く。

 素直で頑張り屋なキャス様は、私が座るのをジッと見て、同じように座ろうとして・・・足を椅子にぶつけた。

「痛っ!」

「大丈夫ですか?ずっと立っていましたからお疲れになったでしょう?すぐにアレもこれもは出来ませんわ。少しずつ身につければよろしいのです」

「レティーナ様はこんなにお優しいのに、どうしてアズリル様は・・・」

「ああ、そうですわ。キャス様。殿下とお二人きりの時以外は、お名前ではなく殿下とお呼びくださいませ」

 口を開く必要はないけれど、もし開いた時に名前呼びだと、何か言ってくる輩がいるわ。

「殿下・・・」

「殿下とお二人きりの時は、今まで通りにお名前で。殿下もキャス様にお名前で呼ばれないとお寂しいでしょうから。ただ、貴族の中にはそんな些細なことにも口を挟んでくる者が多くいますの。私の前ではかまいませんが、今は慣れるために殿下とお呼び下さいね」

 慣れというものは恐ろしいもので、普段通りについポロッと出てしまうのである。

 私は記憶喪失を装っているから、少々のことなら誤魔化せるし、今のところ他人と会う機会もない。

 私にとっても、明々後日の夜会が公の場に出る初舞台となる。

「当日、レティーナ様はそばにいてもらえるんですか?」

「それは少し難しいですわ。でも、キャス様のお隣には殿下がいらっしゃいますわ」

 私はお父様のエスコートで入場した後は、お母様のそばにいるつもりである。

 本当なら殿下のエスコートで入場なのだが、その間キャス様をひとりにするわけにはいかないからだ。
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