悪役令嬢になりたくない(そもそも違う)勘違い令嬢は王太子から逃げる事にしました~なぜか逆に囲い込まれました~

咲桜りおな

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惑わしの森

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「それでお母様、どうやって行くんですの?」

 翌朝、レナード公爵邸の庭園に集合したエミリア、エドワード、エレノアの三人。いつもと変わらないニコニコ顔のエレノアはご丁寧にピクニックバスケットを持っている。

 てっきり馬車にでも乗って行くのかと思っていたがどうやらそうじゃないらしい。

「適当に歩いていたら着くわよ」

 ふふふ、と微笑みながら庭園の中を奥へと進んで行く。頭に疑問符を浮かべながらエミリアはエレノアに続いた。そして隣を歩くエドワードにコッソリと問いかける。

「ゲームではどうやって森に行くんですの?」
「メニュー画面を開くと出掛け先の地図が出るから、そこから森を選択するだけだよ。だから実際はどうやって行くのかは分からない」
「なるほど」

 ここがゲームの中の世界とは言ってもエミリア達にとっては実質、現実世界だ。だから目の前に選択肢が表示される訳でもないし、何処に出掛けるとなれば実際に自分の足で移動する事になるのだ。

(なんとも不思議な感覚ですわね)

 そんな話を交わしている内に花が咲き誇る庭園の風景が徐々に大きな木々の風景に変わって来た。

「……え?」

 違和感を感じて後ろを振り返ると既に花は何処にもなく、鬱蒼と生い茂る森の中にエミリアは立っていた。同じ様に驚いた顔をしてエドワードも周りを見回している。

「はい、到着~」

 驚いている二人とは対照的にエレノアは相変わらずニコニコと微笑みを浮かべている。

「ふふ、面白いでしょ。驚いた?」
「ええ、かなり……」
「凄い……いつの間に……」

 魔法でもかけられたかの様な出来事にエミリアもキョロキョロと周りを見た。空が見えない程に木々は生い茂り、花とは言えない怪しげな変な植物があちらこちらに生えている。その中に真っ白な一輪の可愛らしい花が咲いているのを見つけた。

「あら、この花だけ普通に可愛いですわ」
「あっ、エミリアその花は」

 そっと手を伸ばして真っ白な花に触れようとした瞬間――

 花びらが蔓のように変形してエミリアの手を捕まえようとしてきた。

「ひゃっ!?」

 エミリアは慌てて手を引っ込めて後ずさった。

「ここの花は食虫植物ばかりだから近付かない方が良いわよー」
「先に言って下さいませ!!」

 呑気に注意喚起をしてきたエレノアに抗議の声を上げる。

「あなた昔もその花で花冠作ろうとしてたし、もう大きくなったと思ったけど変わらないわねぇ~」
「そんな世間話みたいに……娘が捕食されるところでしたのよ」
「まぁ、魔女が住んでるくらいだからな。気を付けろよ……って、うわっ!」

 今度はエドワードが悲鳴を上げてその場から飛び退く。見るとエドワードの居た場所にはさっき迄無かった筈の泥の沼が出現していた。

「あらあら今度はエドワードまで。気を付けないとダメよ~その沼は気まぐれに移動するから」
「はあ!? 移動式の沼って何ですかっ」
「ほらほら余所見してるとスライム降ってくるわよ」
「きゃああああ!? な、なんで木の上からスライムがっ」

 エミリアが悲鳴を上げながら自分の身体の上に降ってきた小さな黄緑色のスライムをはたき落とす。地面に落とされたスライム達は「ぴきゃきゃ」と楽しそうに鳴きながら、はしゃぐ様に何処かへと走り去って行った。

「ス、スライムの癖になんだか生意気ですわ」
「可愛いわよねー、リーフスライム」

 どうやら今のスライムはリーフスライムという種類らしい。特に害はないらしいが、悪戯好きでこうやって木の上から飛び降りて来ては驚かして去って行くんだとか。

「さぁ、まずは魔女に会いに行くわよ」

 そう言って様々なモンスターや罠の様な道を軽くかわしながら森を歩いて行くエレノアの後を、エミリアとエドワードは必死に付いて行った。
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