【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭

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連れて行くのは、妹だけ

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 両親から愛情を貰う事を諦めた私は、ひたすら勉学に励み、父の執務を手伝う様になっていた。
 
 そして、婚期を迎えた私達姉妹には、沢山招待状が来るようになった。
 母は、毎日の様にデイジーだけ連れて、パーティへ出かけて行く。
 いい加減にして欲しい。
 母の実家である侯爵家からの援助だけでは、お母様のドレス代を賄い切れなくなっている。
 デイジーのドレスだって、仕立て過ぎだわ。
 
 お母様には、毎回請求書を見せているのに、まるで理解していない。
 「何時迄、侯爵令嬢のつもりでいるのかしら?」
 お婆様がよく言っていたけれど、本当に教養が無さすぎる。
 公爵夫人どころか、伯爵夫人だって無理よ。
 お爺様が借金さえしなければ、お父様だって別の人を娶っていたと思うもの。
 
 デイジーは、大丈夫なのかしら?
 お母様の様になってしまったら、面倒を見切れる自信がないわ。


 「マーガレット、貴方は留守番よ。陰気臭い娘なんて、恥ずかしくて連れて歩けないわ」
 「お姉様の代わりに、私が素敵なお婿さんを見つけて来るわね」
 そう言って今日も、妹だけを連れて母は行ってしまった。

 「お婿さんて…爵位を継ぐのは私なのに、デイジーは何を言っているのかしら」
 私だって綺麗なドレスを着て、パーティへ行ってみたいのに…

 でも仕方ないわね。
 私はお父様がお決めになった方と、結婚するのだもの。
 デイジーの様に、気に入った方を見つけたって、無意味だわ。
 出来るなら、お父様の様に、真面目にお仕事をしてくれる方が良いわね。
 お爺様の様な方だったら、伯爵家は間違いなく没落してしまうもの。

 妹がパーティから戻ると、何時も何かしら私に用事を言いつけて来る様になった。
 「お姉様、来週までに刺繍を、しておいてちょうだい。ハンカチの持ち主は、メモしてあるから、イニシャルを間違えないでよね」
 「何故私が知らない人のハンカチに、刺繍をしなければならないの?」
 「余計な事は、聞かなくて良いのよ。来週のパーティで渡す約束をしたの、分かった?さっさと仕上げてよね」
 「でも…」
 バタンと、扉を閉めて、妹は出て行ってしまった。
 「引き受けたのなら、自分で刺繍したら良いのに…」

 私は執務の合間に、ハンカチに刺繍を施していった。
 手仕事は好き、嫌な事も、寂しい気持ちも忘れられる。
 受け取った人が喜ぶ姿を想像しながら、刺繍を施していたら、没頭し過ぎたみたい。
 「マーガレット、休憩は終わりだ。刺繍は後にしなさい」
 「はい、すみません、お父様」
 叱られてしまったわ…

 妹の要求は、パーティに参加する度、酷くなっていった。
 「無理だわ、デイジー。私には執務があるのよ、こんなに沢山のハンカチに、刺繍をするなんて…」
 「五月蠅いわね!お母様に嫌われている癖に、私に口答えしないで。出来なかったら、許さないからね」
 バタンっと、大きな音を立てて、扉を閉めて出て行ってしまった…
 「もう少し、静かに出来ないのかしら」
 置いて行かれた、山積みのハンカチを見る。
 「いったい何枚あるの?数えるのも億劫になるわ。執務が無かったとしても、この量は無理よ。どうしてこんなに沢山の頼み事を、引き受けて来たのかしら?」
 仕方の無い子。出来るだけ頑張ってみるけれど、残りは我慢して貰いましょう。


 「どうしてよ!出来なかったって、私が恥ずかしい思いをすいるのよ。態とね、態と仕上げなかったんでしょう。自分がパーティに行けなかったからって、酷いわ」
 「デイジー、貴方だって分かるでしょう。刺繍は、簡単では無いのよ?頼んで来た方だって、きっと理解して下さるわ。出来るだけ早く仕上げるから、もう安請け合いは止めて頂戴」
 キッと私を睨んで、部屋を出て行く、妹の後姿を見送った。

 その後も妹が持って来るハンカチの数が減る事は無く、私の技術がメキメキと上がっていった。
 今ではお店を持てるのではないかと、思える程の腕前になっている。
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