【完結】騙された私も愚かでした

鈴蘭

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番外編 私の幸せ

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 侯爵領へ初孫の誕生を知らせる手紙を出して直ぐに、義両親は沢山のお祝いの品を抱えて伯爵邸に来て下さいました。 
 「母子共に健康と書いてあったが、本当か?キャロラインは無事なのか、孫は健康に産まれたのか」
 「キャロラインの元気な姿を見せてくださいな。孫は、男児で間違いはないのね」
 「父上も母上も、少し落ち着いてください。息子が驚いて泣いてしまいます」
 「ハロルド、赤子は泣くのが仕事だ。泣かぬ赤子は、弱いのだぞ」
 「だからと言って、機嫌を損ねてまで泣かせる必要は無いでしょう」
 「お義父様、お義母様、ご無沙汰しております。遠い所まで来て頂き、感謝致します。私も息子も、この通り元気ですわ」
 「キャロライン。貴方の元気な姿を見ると、安心するわ」
 お義母様は、私を抱きしめて下さいました。
 「息子も、抱いて下さいませんか。まだふにゃふにゃしておりますが、食欲もあってとても元気なのです」
 「まぁ。なんて可愛らしい天使なのかしら。ハロルドにそっくりだわ、きっと私に似たのね」
 「私にも抱かせてくれないか。確かにハロルドに良く似ているな…と、言う事は、私に似たのだろう」
 やはり息子を抱きながら、自分に似ていると言い合いをしたのです。
 孫を見たら、自分に似ていると思うものなのでしょうか?
 私にも孫が出来たら、両親や義両親の気持ちを理解出来る様になるのかと、考えてしまいます。
 「キャロライン。私たちの愚息と結婚してくれただけでも有難い事だと言うのに、こんなに可愛い孫まで…出産はさぞ辛かっただろうに、よく頑張って産んでくれた。心から感謝する、ありがとう。キャロラインは、私たちにとっても自慢の娘だ」
 「本当に…貴方が身籠ったと聞いた時は、嬉しさもあったのだけれど、とても心配だったのよ。安産で本当に良かったわ。ありがとう、キャロライン」
 義両親は何度も、何度も私にお礼を言って、安産だった事も喜んでくださったのです。
 そうして暫く滞在した後、侯爵領へと帰って行かれました。

 産後の肥立ちも良く、そろそろ二人目が欲しいと話しをした時に、ハロルド様はかなり難色を示されたのです。
 「ハルロド様は、息子が可愛くはないのですか?兄弟が居ない寂しさは、ハロルド様も知っているのではありませんか」
 「勿論知っておりますが、二人目を望まなかったのは、父上の希望です。出産は命がけだと言う事を、キャロラインを見て私は身をもって経験しましたので、今では父上の気持ちがよく分かるのです」
 「お義母様は、難産だったと聞いておりますわ。心配して下さるのはとても有難い事だと思いますが、私はお墨付きを頂ける程の安産でしたのよ。ですから、ハロルド様が不安になる事は、何もないのです」
 お義母様は産後の肥立ちが悪く、二人目は命がけになると言われたそうなので、お義父様が子を望まれなかったのは理解出来ます。
 私のお母様は安産でしたが、何故か二人目は授かりませんでした。
 こればかりは、どうしようも無い事なのです。
 子供の事で夫婦の意見が割れてしまう事はよくあると、ご婦人方も仰っておりましたが、ハロルド様がここまで狼狽えるとは正直驚きました。
 私の身を案じて下さるのはとても嬉しい事でしたが、ここはハロルド様に折れて貰うしかないのです。
 「女の子も欲しいのです。きっと可愛いですわよ、そうは思いませんか」
 「子供の性別なんて、どちらでも構いません。何故娘に拘るのですか?息子では駄目なのですか?」
 「駄目ではないのですけれど…ハロルド様から初めて頂いたプレゼントを、娘に渡したいと思うのです。あのブローチは、若い娘が着ける物ですから」
 「あ~………どうしても、娘も欲しいのですか?」
 「欲しいです。我が子は、こんなに可愛いではありませんか。10人いても良い位ですわ」
 「キャロライン…それは駄目だ…受け入れられない」
 苦悶の表情で、首を左右に振ってしまいました。
 ハロルド様は、私の気持ちを何よりも大切にして下さいます。
 ですが、子供の事だけはどうしても私の身に負担が生じてしまうので、これ以上心配を掛けるのは忍びないとも思うのでした。
 二人でよく話し合った結果、子供は三人までとお約束したのです。
 そうして産まれて来た二人目は男の子でしたが、やはり我が子は性別なんて関係なく、愛おしく思うのです。

 「母上~花冠を作ったので、プレゼントしたいのです」
 「あら、私の為に作ってくれたの?」
 「はい。弟が摘んだ花を、僕が編んだのです」
 「ありがとう。とても素敵だわ」
 私は息子が編んでくれた花冠を、頭に乗せて貰ったのです。
 「キャロライン。花冠なら、私も作れますよ」
 「父上は、あっちに行ってて下さい。母上は、僕が守るのです」
 「何を言っている。キャロラインは、私の妻なのだ。お前は弟と遊んで来なさい」
 「ハロルド様。母子の時間を、邪魔しないでくださいませ。お仕事はどうされたのですか?まだ休憩時間には、早いと思いますよ」
 「あ…うん。そうだね…戻る…よ」
 「父上の、やきもち焼き~母上を取られたくないんだ~」
 「なんて事を言うのだ、親に向かって酷いではないか」
 「あははは。父上はやきもち焼き~」
 「待ちなさい」
 ハロルド様は、逃げる息子を追いかけて、楽しそうに鬼ごっこを始めました。
 「あらあら。困ったお父様と、お兄様ね」
 私は下の息子を見ると、天使の様な笑顔を見せてくれました。
 そして小さな手で、大きくなったお腹を優しく撫でてくれたのです。
 「僕、妹がいい」
 「弟じゃ駄目なの?」
 「駄目じゃない」
 上の子は活発ですが、下の子はとても穏やかです。
 ハロルド様は、息子たちにやきもちを焼きながらも、とても可愛がってくれるのです。
 上の子を肩車しながら戻って来ました。
 「こっちにおいで」
 下の子を呼ぶと、片手で軽々と持ち上げたのです。
 そうして二人の息子を両肩に乗せて、庭を楽しそうに駆け回る姿を、私は見つめていたのです。
 「若奥様。そろそろ屋敷の中へ入りましょう、お身体が冷えてしまいますわ」
 「そうね。ハロルド様は、何時まで息子たちと張り合うつもりなのかしら」
 「父親にとっての息子は、幾つになってもライバルなのですよ。若奥様を取られると、寂しく感じるのだと思います」
 「まぁ。困った人ね」
 私が呑気に笑って見ていられたのも、この頃まででした。
 三人目が産まれたら、形成が逆転してしまったのです。
 
 義両親は隠居して、伯爵邸の近くに越して来ました。
 ほぼ毎日の様に、可愛い二人の孫息子と、二人の孫娘の元に通って来るのです。
 子供は三人と約束していたのですが、三人目は双子の女の子だったのです。
 両親も、義両親も、孫を分け隔てなく可愛がってくださいます。
 四人の子供たちはとても健やかに育っており、それはもう賑やかに毎日を過ごしております。
 「ハロルド様。娘たちを甘やかさないでください、躾になりませんわ」
 「口煩いお母様は、嫌われますわよ」
 「お父様は、私と結婚するのです」
 「お姉様、それは狡いですわ」
 「何よ。邪魔はさせないわ」
 女の子は、口がとても達者なのです。
 二言目には、ハロルド様を横取りしようとするので、私は小さな娘にやきもちを焼いてしまうのです。
 「ハロルド様は、私の夫なのよ。貴方たちは、お嫁に行ってくださいな」
 「キャロライン。こんな小さな子を、もう嫁に出すのかい?私は反対だよ」
 「ハロルド様、しっかりして下さい。今直ぐではなく、将来の事を言っているのですわ」
 「私は、お嫁に行かないの」
 「私も、お嫁に行きませんわ」
 ハロルド様に抱き着いて、娘たちが拗ねてしまいました。
 「嫁に等、行かなくても良いからね」
 娘たちは、ハロルド様がどうしたら鼻の下を伸ばすのか、理解している様です。
 「ハロルド様!何時もそうやって甘やかすから、駄目なのです」
 「母上、父上。夫婦喧嘩なら、部屋でやって下さい。勉強に身が入りません」
 「すまないね。喧嘩ではなくて、キャロラインがやきもちを焼いてくれているんだよ」
 「どっちもどっちですよ、父上」
 二人の息子に諭されて、私たちはお互いに見つめ合い、思わず笑ってしまいました。
 活発だった長男も、すっかり大人びて来ました。
 大人しかった次男は、社交的で女の子にとても人気があるのです。
 双子の娘たちは直ぐ喧嘩をするのですが、少しでも姿が見えなくなると心配して探し回る程、とても仲が良いのです。
 私とハロルド様は、そんな子供たちに振り回されながらも、とても幸せな日々を送っているのです。
 子供たちが将来、大人になってどの様な未来を切り開いて行くのかは、誰にも分かりません。
 悲しい思いや、辛い思いも沢山するかもしれませんし、幸せなままかもしれません。
 例えどんな未来が待っていようとも、私たちの小さな恋人たちと小さなライバルたちの為ならばこの命が尽きるまで、ハロルド様と二人でどんな事をしてでも護って行こうと思うのでした。
 親になって、初めて分かったのです。
 子供というのは、幾つになってもかけがえのない、唯一の宝だと言う事を…


 おしまい

 番外編までお付き合いくださり、ありがとうございました<(_ _)>
 
 
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