千年前失恋して引き籠りの魔女になったので、今度は殺してくれませんか?

潮 雨花

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止まらない情事

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「リリィベル。入っても良いか?」
「嫌! 入ってこないで!!」
 太陽が山間に沈みかけた夕方。
 デュクスの屋敷からはそんなふたりの声が響き渡っている。
 闇の魔女だったときに与えられた部屋に閉じこもっていたリリィベルは、魔力で枕やぬいぐるみを宙に浮かせると、それを勢いよくドアへと叩きつけた。
 リリィベルはご立腹だった。
 長い髪を複雑に結い上げスズラン模したティアラを付けてもらい、ドレスもローザの見立てで淡い水色のレースがふんだんに使われたものを用意してもらった。
 建国祭は華やかだというから、少しだけ楽しみにしていた。
 何の気兼ねなく祭りに参加できると。
「黙っていて悪かった。でも、仕方ないだろう?」
「知らない! あっち行って!」
 彼女は最近お気に入りのぬいぐるみを抱きかかえたまま、ソファに蹲っている。
 リリィベルが闇の魔女でなくなり、半月が経った。
 だからといってリリィベルの生活が劇的に変化したわけでもなく、ここに来た当時のままだ。
 身体の中の魔力はその量が著しく減ってしまったが、その力は健在だ。
「機嫌を直してくれ」
 ドアの向こう側にいるデュクスはどうしたものかと頭を抱えている。
「本当に悪かった。まさかキミがここまで怒るとは思わなかったんだ」
 彼には見えないのに、リリィベルはツンッとそっぽを向いて返事を拒否する。
「喜んでくれると思ったんだ。事前に言わなかったのは悪かった」
「………」
「なぁリリィベル。返事をしてくれ」
「…………」
「愛してる。キミを怒らせようとして黙っていたわけじゃない」
「…………」
「――リリィ……」
 心底困り果てているだろうデュクスを思うと、リリィベルもここまでへそを曲げることはなかったか、と罪悪感を覚えてしまいそうになる。
(でもでも! こんなの……)
 建国祭の前から、屋敷の中は慌ただしかった。リリィベルのために新しいドレスや宝石を持ってくる商人たちや、城下街で人気だという被服店の店主がドレスの採寸にやってきた。たかが建国祭に行くためにこんなに準備が必要なのか、と疑問に思うべきだったのだ。
「恥ずかしがることはない。そういう祭りだ、と思えば良いだけだ」
 その一言に、リリィベルはかかえていたお気に入りのクマのぬいぐるみをドアへ向かって投げ放つ。
 ドンッ! と音を立ててぬいぐるみはドアへと叩きつけられ、ポトッと寂しく床に落ちた。
 肩で息をしながら、やはりこんなのは酷いと思うのだ。
「あっちに行ってって言ってるでしょ!」
 彼がドアの前に張り付いて離れないというのなら、こちらから距離を置こう。
 そう思い立ち、リリィベルは魔力でその場から転移する。
 ムスッとしつつ、彼女は城下街が見渡せる丘の上に降り立っていた。
 街にはスズランの飾りが溢れ、いつも以上に人が行き来している。
 その中でも、その女性たちは異様だった。
「…………」
 この国の民は皆、色鮮やかな髪なのだが、今日はその髪が黒一色なのである。
 黒髪の鬘にスズランの髪飾りを付け、ドレスは人それぞれ色やデザインは違うが、淡い色の落ち着きのあるものを着ている。
『建国祭、楽しみですわね。お姉さまの生誕祭でもありますし、お姉さまが本物のリリィベル様だとみんなが知ったら大喜びですわ』
 昼間、リリィベルはローザにドレスを着せてもらっていた時、メアリーがやってきてプレゼントだと言ってスズランのティアラを頭に乗せてくれた。
 そのとき、彼女にそう言われたのだ。 
 だが正式には、デュクスの前世である第六王子が処刑された日、なのだという。
 第六王子の死と共に『闇の魔女』は彼から貰ったリリィベルという名を胸に彼との再会を待っている。というのが御伽噺の最後のようで、奇しくもそれはこの国の建国祭の日だった。
 よってクリストフェルは六百年前頃からリリィベルの物語を広めるべく、建国祭に彼女の誕生祭をくっつけたのだ。
 スズランの花を国花とする国であり、この国でリリィベルの御伽噺を知らない国民は少ない。
 知れ渡っている物語だからこそ、クリストフェルは祭りという形で、知らずもがな未来の姉の生誕祭を祝い続けていたのだ。
 だが、その祝い方が異常なのである。
 女性は皆、悲恋に終わったリリィベルの恋が実ることを信じ、その仮装をする。
 黒髪黒瞳である、と御伽噺にも描かれているため、髪は黒い鬘か黒染めをして、瞳は人それぞれだが、気合いが入った者は瞳の色がわからないよう黒いレースの目隠しをするのだ。
「こんなの、恥ずかしすぎる……」
 デュクスと初めて身体を重ねた日から、少女は羞恥、という感情を自然と覚えていった。
 あれから何度も彼に身体を求められ、それを特に何の疑問もなく受け止めていたのだが、徐々に大胆になっていく彼の行動についに羞恥心が生まれたのである。
 昨晩も、デュクスは激しかった。
 千年の時を取り戻すかのように、彼の寝室に連れ込まれ、立ったまま身体を開かされた。
 まるで子供のように両足を抱きかかえられ、満足に動けないまま彼の牡で身体の奥を何度も貫かれ、中に四回も精を受け止めさせられた。
 結局最後の方は失神してしまい覚えていないが、朝起きたときの体のだるさを思えば、気を失った後も何度か求められたのだろう。
 せっかくの建国祭なのに、と朝から少し機嫌が悪かったが、メアリーのその一言で怒りと恥ずかしさが沸点を超え、デュクスを無視し続けていた。
「――あっち行って、って言ったわよね?」
 フッ、と背後に気配を感じ、リリィベルはキッとそちらを睨みつける。
「こういう祝い方の生誕祭が気に入らないのか? それと、昨日無理をさせすぎたのも機嫌が悪い理由か?」
「そうよ!!」
 バチッ、と少女の拳に火花が散る。
「こんなところで魔力を使い過ぎると、魔力切れを起こして動けなくなるぞ」
「誰のせいよ!」
 ぷくぅ、と頬を膨らませ、離れろとばかりに白い炎をデュクスの方へと放つ。
 リリィベルという名を受け入れてから、彼女が放つ魔力の色は黒から白へと変化していた。
 それでも威力は強い。
 デュクスはそれを華麗に避けつつ、リリィベルを背後から抱き寄せた。
 あやすように頭を撫でられると、限界突破していた感情がするすると落ち着いてくる。
「全部私が悪い。だから、許してほしい」
「…………」
「今日のことを黙っていたのも、キミの魅力に抗えず抱き潰してしまったのも、全部謝る」
 言いながら、胸の前に回っていた腕が徐々にずれていき、手のひらが大きな乳房に添えられた。
 そこを優しく揉み込まれ、リリィベルは昨晩のことを思い出して頬を真っ赤に染めた。
「ちょっと! 何して……!」
 いやだ、と離れようとしたが、胸の粒を布の上からキュッと摘ままれると動きが止まってしまう。
 たった半月で、この身体は多くの快楽を知ってしまった。
 少し触れられただけで、身体の奥が疼いて、彼が欲しくなってしまう。
「朝から無視されて私も反省したんだ。機嫌を直してほしい」
 カリカリ、と布越しにぷっくりと立ち上がった胸の粒を引っかかれ、もどかしいその感覚に喉がのけ反る。
「や、ぁ!」
 甘く声を上げると、デュクスの手がデコルテの大きく開いたドレスの胸元に付けられたリボンを解きにかかってくる。
 スルっとそれが解かれると、胸元が大きく開き、ぷるんっ、と両方の胸が揺れる。
「あぁ!?」
 キュッ、と直に胸の粒を摘まみ上げられ、指先で押し潰される。
 こんな場所で、と非難しようとしたが、デュクスはそれよりも前に「ここは誰も来ない」と耳元で囁いてくる。
 たしかにこの小高い丘は深い森に覆われていて、滅多に人は来ない場所だ。
「今日は、激しくしないから」
「そ、な……!」
「ほら、ここ、吸われるの好きだろ」
 くるんっ、とデュクスに身体を半回転させられ、胸の粒を口に含まれる。
 チュッ、チュッ、とそこを吸われると、背筋がぞくぞくしてたまらない。
「ふぁ……! あぁっ」
 強弱をつけて吸われ、舌先で転がされる。
 もう片方の粒は指の腹で捏ねられ、押し潰されている。
「やぁ……!」
「両方吸おうか?」
 言いながら、両胸を中央に寄せられ、ふたつの胸の粒が彼の口の中へと閉じ込められた。
 ジュッ……! と一際強く吸われる。
「やぁぁ!!」
 そこからは何も出ないのに、何かを搾り出すような口遣いで吸い上げられる。
 ちゅぽんっ、と淫猥な水音を立てて解放されると、リリィベルは全身から力が抜けてしまってひとりでは立てなくなっていた。
「機嫌は直ったか?」
 デュクスに身体を預けるリリィベルの様子に、彼が小さく笑う。
 こんな機嫌の取り方があるか! と罵倒したかったが、とても気持ちがよかったのは否めない。
 そして怒りもなにも全部吹っ飛んでいるのだから、彼のやり方はあながち間違いではなかった。
「こんな、の……ずるい……」
 胸を刺激され、リリィベルはもじもじと太腿を擦り合わせる。
「私のことを許してくれるなら、最後までしてもいい」
「ッ……!」
「まだ許してくれないか?」
 本当にこの男は狡い。
 リリィベルの身体に火をつけたのは彼だ。
 その解消の仕方を一つしか知らないリリィベルに、その火を鎮めるから許せと言ってくる。
 とんでもない男に惚れてしまったかもしれない、と後悔しかける。
「ひゃっ!」
 デュクスの太腿が、リリィベルの足の間に割って入り、敏感な場所をドレスの上から擦られ、その身体に縋りついてしまう。
「さぁ、どうする?」
「いじ、わるぅ……!」
 涙目で罵倒するが、彼は微笑んだままだ。その綺麗な青い瞳の奥には小さな欲望の焔が灯っている。
「どうしてほしい?」
 フッと息で笑う彼も、少し辛そうだ。
 額に汗を掻いているし、腹に当たる彼の下肢に隠されているモノは大きく膨れあがり窮屈そうにしている。
「――れて……」
「うん?」
「挿れて……」
 男の強請り方は、もちろんデュクス仕込みだ。
 か細く、早く、とせがむと、彼はリリィベルのドレスをたくし上げ、紐で結ばれている下着を取り払った。そして、自分のモノを寛げると、リリィベルの足を片方抱え上げ、蜜を滴らせる場所に己の欲望を突き挿れてくる。
「あぁぁぁっ!」
 昨晩もたっぷり可愛がられた場所に、彼は難なく押し入ってくる。
 激しく抽挿を繰り返す腰遣いに、リリィベルは持ち上げられた足を彼の身体に巻き付かせ、その衝撃に耐えた。
「はっ……、リリィ……」
「んっ! ぁぁあっ!」
「愛してる。愛してる、リリィベル……」
「やぁ! 深、いぃぃ!」
 パチュパチュという淫猥な水音と、パンパンッと肌がぶつかり合う音が、ふたりを夢中にさせる。
 押し寄せてくる快楽と、身体を貫く熱く膨れ上がった塊に、リリィベルは成す術もない。
 激しい抽挿の中、デュクスはまた胸の粒を口に含んで吸い上げ、もう片方をキュッと摘まみ上げ、リリィベルを追い詰めた。
「あ、ぁぁあ! そんな、全部……ぅ!!」
 気持ちが良いところを全部弄られ、リリィベルはデュクスの髪をぐしゃぐしゃにかき乱す。
 カリッ、と胸の粒を噛まれ、彼の腰がひときわ強く最奥まで叩きつけられた瞬間、身体の奥で熱い迸りが放たれ、リリィベルは身体の奥に注がれながら絶頂を迎えた。
「は、ぁああ……」
 甘い余韻に浸っていると、ズルッと彼の牡が中から引きずり出された。
「すまない。中に出してしまった」
 そう言って、先ほどまで彼のモノで開かされていた場所に三本の指が入ってくる。
「ひっ! あぁ!?」
「中のモノを掻き出すだけだ」
「だめぇ! それ、やぁ……!」
 蜜壺の中を、三本の指が蠢き、内壁を擦るように中に出されたものをかき出していく。
 かき出された白濁は、びちゃびちゃっ、と芝生の上で小さな水たまりを作った。
「あ、ぁ……!」
 すべてかき出し終わったのか、指がズルッとまた引きずり出され、リリィベルはビクッと身体を痙攣させた。
「ほら、もう終わったから……」
「や、また……」
「――また?」
「……もう、一回……」
 もう自分が怒っていたのも忘れ、彼にもっととおねだりしてしまうリリィベルに、デュクスは「わかった」と一言告げてから愛おし気な眼差しと共にゆっくりと貫いていく。
 激しい抽挿はしばらく続き、周囲が薄暗くなるまでふたりはお互いを求めあった。
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