ビルドアップとマジックアップを使う前陣速攻型の内閣総理大臣を指示しますか?

大和田大和

文字の大きさ
6 / 7

戦争の始まり

しおりを挟む

第六話 

総理は、険しい表情で、
「アルゼン王国?」
「最強と言われる国です。その国が貧乏な我が国の足元を見るような取引ばかり求めてくるのです。なんとかしていただけませんか、総理?」
「要は、弱みにつけ込まれているということだな?」
「その通りです。ですが総理の戦闘能力ならあの国の戦力にも十分対抗できるはずです!」
「なるほど最強の軍隊を持つ国ということだな……!」

「いえ、アルゼン王国に軍はありません」
「どういうことだ?」
「そこにいる大統領が最強なのです。総理と同じように戦闘能力的な意味で」

「最強の大統領か……次の取引はいつだ? それまでに準備をする」
「次の取引は一ヶ月後のはずです」
「なら対策を練る時間はあるな。一ヶ月後までに――」
その時だった――
総理の家のドアが開く。
「アルゼン王国の大使が来ました。総理! お出迎えを」


[大使館にて]
総理は、二人の大使を迎え入れる。
「さあどうぞ。狭いところですがお座りください。遠路はるばるご足労おかけしました。ところでどう言ったご用件でしょうか?」
総理は丁寧に対応する。
「ったく相変わらず汚い国だな! 俺たちは客だ! 飲み物の一つも出ねーのかよ!」
「これは失礼した。サヨクお客人にお茶を」
するとサヨクはせかせかとお茶を沸かしに行った。

「それでご用件は?」
「お前たちの国で収穫できる地下資源マナライトを寄越せ」
「寄越せとは?」

ドンっ! テーブルを叩く音とともに、
「いいから黙って資源を渡せってことだよ!」

「大使殿、落ち着いてください」
「うるせー! このゴミ溜めのハエどもが!」
「落ち着いて」
「お前みたいなカスいつでも殺せるんだぞ!」
「どうか落ち着いて」
「ここは大使館! ということはこの中にいる限り俺たちの国の法律が適用される。どういうことかわかるか?」
「どういうことですか?」
「殺人も許されるってことだよ!」

「粗茶です」
サヨクがビクビクしながらお茶を持って来た。
それを見た大志は
「引っ込んでろっ!」
お茶を盛大にひっくり返した。
「きゃっ!」
サヨクは熱いお茶がかかり、床に倒れ込む。

それを見て、バターン。総理は勢いよく椅子から立ち上がった。
「うおっ! な、なんだ? やる気か?」

そして、サヨクの元に行くと、
「大丈夫か?」
「ええ。ナノマシンがあるからこれくらい大丈夫でございます」
「じゃあサヨクはもう下がっていてくれ。ここにいると見たくないものを見る羽目になる」
サヨクは慌てて部屋から出て行った。


「よくわかってんじゃねーか! 土下座したら今回だけは許してやるよ!」
総理は、黙って大使の方を見つめる。瞳から解き放たれる視線の刃が、大使の顔に突き刺さる。

「な、なんだ? やる気か? ここで俺たちに逆らったら外交問題だぞ?」
総理は黙り込み、圧を放つ。

「なんとか言いやがれ、この負け犬が!」
大使は総理に近寄り、顔面を殴った。
ゴスっ! 鈍い音が沈黙を揺らした。直撃したのに、総理は眉一つ動かさない。
「それで全力か?」
「な、何っ!」
大使は続けて総理に拳を振るう。だが総理は瞬きすらしない。
「どうした? わしみたいなカスいつでも殺せるんじゃなかったのか?」
「なんで攻撃が効かない? 体が機械でできているのか?」

攻撃を食らっている側の総理が、大使を壁際に追い詰めていく。

ビビり上がった大使は、
「ま、待て! 俺が悪かったよ! ちょっと落ち着いてくれ!」
「落ち着け? わしは落ち着いているが?」

「ひいいいいいっ!」
大使は完全に壁に背をつけた。

総理は大使の横の壁に手をつける。そして、耳元で、
「おい……ここは大使館だよな?」
「は、はい! おっしゃる通りです!」
「ということはこの中にいる限りアルゼン国の法律が適用される。そうだったな? これがどういうことかわかるか?」
「ど、どういうことですかっ?」
「殺人も許されるってことだよ」


[10分後]
総理は返り血まみれで大使館から出て来た。
サヨクが、
「こ、殺しちゃったのでございますか?」
「そんなわけないだろ。そんなことをしたらアルゼン王国と取引ができなくなる」
「取引ですと? まさかアルゼン王国と取引をするおつもりですか?」
と、国民。
「ああ」
「そんなことをしたらまた利用されます!」

「いいや、わしがアルゼン王国を利用するんだ」
総理はにこやかな顔で下卑たことを言った。


総理はシャワーを浴びて、汚い血を落とすと、騒ぎになっていた。
人だかりの中心で、先ほどの男が騒いでいる。両腕が折れているが騒ぐ元気はあるらしい。
「外交問題だぞ! わかっているな!」
大使のセリフに国民はざわついている。

総理は人混みをかき分け大使の元へ行く。
「先に突っかかって来たのはそちらだ。これは正当防衛だ」
「うるさい! もう遅い! 今から一ヶ月も立たないうちにこの国は滅びる! せいぜい首を洗って待っていろ!」
大使は負け犬の遠吠えをして、去っていった。

大使が去った後、国民は恐怖に震えていた。
「どうしよう」
「もう終わりだ」
「死ぬしかないのか」

その時だった。総理は手ぶらでサヨクと出かけようとしていた。
「ん? 総理どちらへ?」
「散歩みたいなものだ」
そして、総理はアルゼン国に戦争を仕掛けに行った。

アルゼン王国の大統領は心底驚く。まさか戦争を仕掛ける側の国が、逆に攻め入られるなんて。
おまけに、年老いた男性一人が手ぶらで突っ込んでくるのだ。

戦闘準備をする隙も、暇も与えられない。

白銀総司の戦闘スタイルは……後陣防衛でも後陣待機でもない。

前陣速攻だけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...