5 / 7
第一章 内閣総理大臣vs大統領(肉弾戦)
しおりを挟む
第一章 内閣総理大臣vs大統領(肉弾戦)
[総理が異世界の地に降りたってから一週間後]
国民は新総理の課した重税に苦しんでいた。
そして、総理の支持率は1%を下回るほどになっていた。
「総理! あんたいきなりこの村に来て、行政の指揮を取り始めたが、この有様を見ろ!」
「そうだ! こんなに重たい税金をかけて一体なんのつもりだ?」
「これじゃ総理なんていない方がマシだ!」
「総理! 総理が税金を着服したというのは本当ですか?」
総理は、
「記憶にございません」
「何が記憶にないだ!」
「ふざけるな! 国民全員を助けるとか言ってなかったか?」
「記憶にございません」
「あんたなんかやめちまえっ!」
そして、一人の農夫が総理に向かって石を投げつけた。
ガッ!
石は総理のこめかみにぶち当たり、血を滲ませる。
それを見て、サヨクが、
「ちょっと! あなたそれはやりすぎでござい――」
言い切る前に、総理はサヨクを遮る。
「言い返すな……支持率が下がる(小声)」
「でも……!」
それから総理は、罵詈雑言の中“記憶にございません”の一点張りだった。
騒動が収まると総理とサヨクは村の病院に向かった。
村にはあちこちにこじきがいてモノ乞いをしている。
「そーじそーり? 本当にこんな国立て直せるのですか? 国どころか小さい集落ですよ? それに隣国の言いなりだし……」
「ああ! 立て直せる!」
「なんでそんなに自信があるんでございますかっ?」
「それより早く病院に行くぞ!」
「怪我の治療ですね?」
「いや、逆だ! わしが怪我の治療を施す」
「はい?」
そして総理は病院に着いた。すぐに服を脱ぎ、鍛え上げられた大胸筋を露出させる。
彫刻のように硬く美しい筋肉は、まるで戦いを求めているようだ。
医者は、
「総理? 本当に上手くいくのですか?」
「ああ! わしに任せろ」
そして、総理は血液を輸血袋に移した。
その後、総理は村に対し無慈悲な圧政と重税を課した。
「異世界からきた疫病神だ!」
「やっとこの村が救われると思ったのに!」
「この村の行政をなんとかしてくれるんじゃなかったのか?」
総理は、
「記憶にございません」
と、だけ言いさらなる重税を課し続けた。圧政を指揮、ワンマンプレーを行い、重税に重税を重ねる。国民からの反発を無視し、強行を続けた。
そして、総理の支持率が上がった。
村には活気が戻り、打ち捨てられていた社会的弱者は社会復帰を果たした。
「こ、これはどういうことでございますか?」
サヨクは目を丸くしている。
その時だった――
「総理! 俺がこうしてまた働けるようになったのはあなたのおかげだ!」
一人の若者が駆け寄って来た。
「うむ。病気は治ったようだな」
「どういうことでございますか?」
「総理は、血液を怪我人に配ってくれたんだ。総理の血液を輸血した途端病気がなぜか良くなってね!」
「わしの血液には大量のナノマシンが含まれている。怪我を自動で修復し、ありとあらゆるウィルスを殺す作用がある。それにナノマシンはわしの体内で自己増殖する。それを使って、この村の病人を治療したんだ」
「税金もほとんど社会的弱者の手当てに使ってくださったんだ」
この国には悪循環があった。
まず、社会的弱者を切り捨てる。次に、健常者の税負担が増える。そして、余計働かなくてはならなくなり、体を壊し社会的弱者となってしまう。
この連鎖を断ち切るために必要なのは、気合でも根性でもなく――
「国民は国の宝。国民の健康こそが最優先で必要なモノなのだよ」
そして、ゴミの溜まり場のような国は、破竹の勢いで発展を遂げていった。
総理の血液により、怪我と病気がなくなり、障害者も働けるようになった。
働き手が増えたことにより、経済は好転の好循環に閉じ込められた。
さらに、総理は、その腕力にもモノを言わせた。
ある時は、“ドラゴンが守る塔”に閉じ込められた村娘を助けた。
「大丈夫か?」
「ええ。あなたは勇者様?」
「いや、わしは勇者じゃない……総理大臣だ。次の選挙では一票を頼むよ」
ある時は、ゴブリンに誘拐された子供たちを救った。
「ほらもう泣くな! わしが来たからにはもう安心だ!」
「おじさんは僕たちのヒーローなの?」
「いいや、ヒーローじゃない……総理大臣だ」
また、ある時は、盗賊団に奪われた金品を強奪し返した。
「金庫のものならなんでも持っていけ! だから命だけは助けてくれ!」
「なら遠慮なく全部奪っていく。元はと言えば、お前たちが真面目に働かないのが悪い」
「お前は……悪魔か何かか?」
「悪魔でもない……総理大臣だ」
そして、村は強固な経済基盤を手に入れた。
総理を恐れるため犯罪は一切起きない。
総理の血液により病気も一切起こらない。
総理の支持率はついに100%となった。
「総理! 前はひどいことを言ってすいませんでした。まさかこの村がここまで立て直せるとは……!」
「総理! あなたのことを疑って申し訳ないです」
「総理! 娘を助けてくださって本当にありがとうございます。この前は石を投げつけてすいませんでした。なんとお詫びしていいのか……!」
総理は、
「記憶にございません」
「「「えっっっ?」」」
「総理大臣は忘れっぽいんだ。そんな昔のこともう忘れちまったな」
柔らかな日差しのシャワーの中で、総理の行政は成功を収めた。
見知らぬ世界の、見知らぬ土地での、総理の無双快進撃はまだ始まったばかりだ。
[その日の夜 総理宅にて]
総理は村のいらない家をもらったのだ。
「ねえ。そーじそーり?」
「なんだ?」
「なんであの時嘘をついたんでございますか?」
「嘘?」
「ええ。『ナノマシンはわしの体内で自己増殖する』っていう嘘です。ナノマシンは有限。輸血で減らせば、その分総理の能力は落ちます」
「別にいいさ……国民が最優先だ」
「相変わらずですね! あ! そうだ。おばあちゃんから預かっていた手紙があるでございます」
「京香からの手紙?」
総理は、サヨクから手紙を受け取った。
「なんだ……これは?」
そこには身の毛もよだつようなことが書かれていた。
[総理が異世界の地に降りたってから一週間後]
国民は新総理の課した重税に苦しんでいた。
そして、総理の支持率は1%を下回るほどになっていた。
「総理! あんたいきなりこの村に来て、行政の指揮を取り始めたが、この有様を見ろ!」
「そうだ! こんなに重たい税金をかけて一体なんのつもりだ?」
「これじゃ総理なんていない方がマシだ!」
「総理! 総理が税金を着服したというのは本当ですか?」
総理は、
「記憶にございません」
「何が記憶にないだ!」
「ふざけるな! 国民全員を助けるとか言ってなかったか?」
「記憶にございません」
「あんたなんかやめちまえっ!」
そして、一人の農夫が総理に向かって石を投げつけた。
ガッ!
石は総理のこめかみにぶち当たり、血を滲ませる。
それを見て、サヨクが、
「ちょっと! あなたそれはやりすぎでござい――」
言い切る前に、総理はサヨクを遮る。
「言い返すな……支持率が下がる(小声)」
「でも……!」
それから総理は、罵詈雑言の中“記憶にございません”の一点張りだった。
騒動が収まると総理とサヨクは村の病院に向かった。
村にはあちこちにこじきがいてモノ乞いをしている。
「そーじそーり? 本当にこんな国立て直せるのですか? 国どころか小さい集落ですよ? それに隣国の言いなりだし……」
「ああ! 立て直せる!」
「なんでそんなに自信があるんでございますかっ?」
「それより早く病院に行くぞ!」
「怪我の治療ですね?」
「いや、逆だ! わしが怪我の治療を施す」
「はい?」
そして総理は病院に着いた。すぐに服を脱ぎ、鍛え上げられた大胸筋を露出させる。
彫刻のように硬く美しい筋肉は、まるで戦いを求めているようだ。
医者は、
「総理? 本当に上手くいくのですか?」
「ああ! わしに任せろ」
そして、総理は血液を輸血袋に移した。
その後、総理は村に対し無慈悲な圧政と重税を課した。
「異世界からきた疫病神だ!」
「やっとこの村が救われると思ったのに!」
「この村の行政をなんとかしてくれるんじゃなかったのか?」
総理は、
「記憶にございません」
と、だけ言いさらなる重税を課し続けた。圧政を指揮、ワンマンプレーを行い、重税に重税を重ねる。国民からの反発を無視し、強行を続けた。
そして、総理の支持率が上がった。
村には活気が戻り、打ち捨てられていた社会的弱者は社会復帰を果たした。
「こ、これはどういうことでございますか?」
サヨクは目を丸くしている。
その時だった――
「総理! 俺がこうしてまた働けるようになったのはあなたのおかげだ!」
一人の若者が駆け寄って来た。
「うむ。病気は治ったようだな」
「どういうことでございますか?」
「総理は、血液を怪我人に配ってくれたんだ。総理の血液を輸血した途端病気がなぜか良くなってね!」
「わしの血液には大量のナノマシンが含まれている。怪我を自動で修復し、ありとあらゆるウィルスを殺す作用がある。それにナノマシンはわしの体内で自己増殖する。それを使って、この村の病人を治療したんだ」
「税金もほとんど社会的弱者の手当てに使ってくださったんだ」
この国には悪循環があった。
まず、社会的弱者を切り捨てる。次に、健常者の税負担が増える。そして、余計働かなくてはならなくなり、体を壊し社会的弱者となってしまう。
この連鎖を断ち切るために必要なのは、気合でも根性でもなく――
「国民は国の宝。国民の健康こそが最優先で必要なモノなのだよ」
そして、ゴミの溜まり場のような国は、破竹の勢いで発展を遂げていった。
総理の血液により、怪我と病気がなくなり、障害者も働けるようになった。
働き手が増えたことにより、経済は好転の好循環に閉じ込められた。
さらに、総理は、その腕力にもモノを言わせた。
ある時は、“ドラゴンが守る塔”に閉じ込められた村娘を助けた。
「大丈夫か?」
「ええ。あなたは勇者様?」
「いや、わしは勇者じゃない……総理大臣だ。次の選挙では一票を頼むよ」
ある時は、ゴブリンに誘拐された子供たちを救った。
「ほらもう泣くな! わしが来たからにはもう安心だ!」
「おじさんは僕たちのヒーローなの?」
「いいや、ヒーローじゃない……総理大臣だ」
また、ある時は、盗賊団に奪われた金品を強奪し返した。
「金庫のものならなんでも持っていけ! だから命だけは助けてくれ!」
「なら遠慮なく全部奪っていく。元はと言えば、お前たちが真面目に働かないのが悪い」
「お前は……悪魔か何かか?」
「悪魔でもない……総理大臣だ」
そして、村は強固な経済基盤を手に入れた。
総理を恐れるため犯罪は一切起きない。
総理の血液により病気も一切起こらない。
総理の支持率はついに100%となった。
「総理! 前はひどいことを言ってすいませんでした。まさかこの村がここまで立て直せるとは……!」
「総理! あなたのことを疑って申し訳ないです」
「総理! 娘を助けてくださって本当にありがとうございます。この前は石を投げつけてすいませんでした。なんとお詫びしていいのか……!」
総理は、
「記憶にございません」
「「「えっっっ?」」」
「総理大臣は忘れっぽいんだ。そんな昔のこともう忘れちまったな」
柔らかな日差しのシャワーの中で、総理の行政は成功を収めた。
見知らぬ世界の、見知らぬ土地での、総理の無双快進撃はまだ始まったばかりだ。
[その日の夜 総理宅にて]
総理は村のいらない家をもらったのだ。
「ねえ。そーじそーり?」
「なんだ?」
「なんであの時嘘をついたんでございますか?」
「嘘?」
「ええ。『ナノマシンはわしの体内で自己増殖する』っていう嘘です。ナノマシンは有限。輸血で減らせば、その分総理の能力は落ちます」
「別にいいさ……国民が最優先だ」
「相変わらずですね! あ! そうだ。おばあちゃんから預かっていた手紙があるでございます」
「京香からの手紙?」
総理は、サヨクから手紙を受け取った。
「なんだ……これは?」
そこには身の毛もよだつようなことが書かれていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした
夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。
しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。
やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。
一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。
これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる