この想いは届かない

神崎 ルナ

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俺が状況を説明すると、


「うむ。話を聞こう」

我が主はそう鷹揚に答えると先に立って歩きだした。


「我が君」


後を追い、人形達へ指示を出す。


一体は先導を、一体は厨房(俺くらいしか使わないが)へ向かわせ茶器の用意を。


応接間へ着くと、我が主は何故か奥の席へ着かず、扉の辺りで立ち止まった。


(どうしたんだろう)


考える余裕があったのもそこまでだった。


「来い」


(えっ)


いきなり俺を抱き寄せると少年がいるにも関わらず、俺の首元に顔を埋めた。


(待っ……)


捕食されるのには慣れたが、人前ではしたくなかった。


だが、腕力で敵うはずもなく。


(ああ、もう)


やがて噛まれた箇所から甘い疼きのようなものが広がり、そのとき俺は何を思ったのか腕を上げて我が主の頭をそっと抱きかかえようとした。


寸でのところで思い止まったが、


(何してんだ、俺)


自分の感情が迷子になっているうちに甘みを含んだ熱が身体中に広がっていく。


とたん、ここには俺達だけじゃないことを思い出す。


「この辺りでいいか。下がっていろ」


一瞬、何を言われたのか分からなかった。


「明日の朝まで用はない」



(え……)







(やっぱりそういういことなんだよな)


俺は厨房にいた。


与えられた部屋は快適だったが、先ほどの件が気になってまんじりともできず、噛まれた後の例のアレは自分で何とかできたので、何かすることはないかと来てしまった。


(ってあるわけないよな。あるとしたら……)


あの少年に朝食を持って行くくらいか。


そこまで考え、更に気が沈んだ。


(きっと今頃……)


考えたくない光景が頭に浮かび思わず首を振った。


(考えるな)


だがこういうときに限って有り難くない想像が広がってしまう。


(やっぱり綺麗な方がいいのか)


男でも女でも当たり前の理屈。


そして一番考えたくないことが脳裏を過ぎる。


(もし、俺があの少年くらい美しかったら……)


ランタンの明かりが食器のほとんど使われた形跡のない厨房をぼんやりと照らす。



(忘れられずにすんだのかな……)




ぼやけた視界に映るランタンの明かりは何も変わらず厨房を照らしていた。


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